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Hizuki
2024-12-24 22:15:07
4932文字
Public
あんスタ[薫あん]
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訳ありデートプラン
【あんスタ】薫あん+アンデ。クリスマスとオフが重なったアンデの食事会に呼ばれたあんずの話。
以前ついったに上げたクリスマス話
の続き。これ単独でも多分読めます。晃牙からのホールハンズの内容あり。どこか様子がおかしい、その理由は。
どうにか今日の内に片付けたいと思っていた書類を終わらせて、ふぅと小さく息を吐く。同じ姿勢で固まっていた身体を伸ばしていると、デスクの上のスマートフォンがホールハンズの着信を知らせて震えていた。画面に表示されていた名前は晃牙くんだった。今日明日とUNDEADは揃ってオフのはずで、不思議に思いながらその着信を受ける。
「もしもし、晃牙くん?」
『もしもし? テメ〜今暇か? 『UNDEAD』でバーベキューやってんだけどよ』
今日はユニットのみんなでご飯に行くのだと薫さんから聞いていた。今月の頭に薫さんからオフの予定を聞かれた時に25日は空いていると伝えたから、多分ユニットの集まりが今日になったんじゃないかと思っている。そのまま晃牙くんの話を聞けば、そこに私も来ないかというお誘いだった。
「今日の分は終わったし、お邪魔してもいいんだったらちょっとだけ顔出そうかな」
『おっ、来れそうか? そんじゃ肉焼いて待っといてやるから、さっさと来いよな』
通話を切って少ししてから、お店の場所がメッセージで晃牙くんから送られてきた。調べてみればそんなに遠い場所ではないらしい。そういえば、何で薫さんからじゃなくて晃牙くんからの連絡だったんだろう。少し不思議に思いながらも準備をして、ESを出た。
外ではケーキやチキンを売っているお店の人の声が響いていたり、今日を楽しんでいる人達で溢れていたりと、クリスマス一色に染まっている。そんな景色を眺めて歩いているうちに目的地に辿り着いた。『店が入っているビルに着いたら一度連絡してほしい』と添えられていたから、その通りに短くメッセージを送る。ビルの屋上だと聞いていたから、エレベーターの近くで待つことにした。しばらくしてエレベーターの到着を知らせる音が鳴り、開いた扉の向こうによく知った姿が見えた。
「お疲れさま、あんず」
労いの言葉と一緒にアドニスくんが笑みを浮かべる。
「あ、アドニスくん。私からお疲れさま、って言うのはちょっと変だね。こんばんは」
「そうかもしれないな。こんばんは。さあ、行こう。大神が肉を焼いて待っている」
本当に晃牙くんが焼いてくれてるんだ、なんて思いながら、アドニスくんとエレベーターに乗る。屋上階のホールに出て、ガラス張りの扉が開かれると、一瞬で冷たい空気が肌に触れた。屋上なだけあって、あちこちに野外用のヒーターが置かれている。天幕で仕切って、個室のようにしてあるらしい。アドニスくんの背を追ってフロアを通り抜けていき、一番奥の入り口を彼が開けた。
「おう、やっと来たか」
「
…
あんずちゃん、いらっしゃい」
「クリスマスイヴまでお疲れさまじゃの」
順番にみんなの声が聞こえた。トングを手にバーベキューコンロの前に立っている晃牙くん。二人掛けのソファに座って手を振っている薫さん。スチール製のカップを持ってキャンプチェアに座っている零さん。鞄を荷物用のカゴに置かせてもらって、アドニスくんに促されるまま薫さんの隣に腰を下ろした。
「こんばんは、ありがとうございます。でも、呼んでもらってよかったんですか?」
挨拶をしつつ、疑問と確認を投げかける。呼んでもらったのはもちろん嬉しいけれど、ユニット水入らずのところに私がお邪魔していいのかと思ったのも本当のことだった。
「我輩が晃牙に頼んだんじゃよ。UNDEADからのクリスマスプレゼントとでも思っておくれ」
「
…
じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいますね。ありがとうございます」
零さんからの返事になるほどと頷きながら、今日という日に重ねられた厚意をありがたく受け取ることにする。みんなの頭に白いふわふわの付いた赤い帽子が見えるような気がした。少しかわいくて、彼らのユニットのイメージからはちょっぴり離れてしまうけれど。
「ほらよ、テメ~の分だ。まだあるからな」
「ありがとう、晃牙くん」
私の前に置かれたお皿には焼きたてのお肉が豪快に盛られている。お箸も一緒に受け取って、一度テーブルの上に置く。「野菜も焼いておやり」なんていう零さんの声も聞こえた。
「何飲む?頼んでくるよ」
「えっと、じゃあ
…
」
薫さんからはドリンクのメニューを差し出されて、私の希望を聞くと注文のために席を立った。冷めてしまう前に晃牙くんが焼いてくれたお肉を一口。あ、おいしい。今日のお昼はコンビニで買った簡単なもので済ませてしまったから、ちゃんとしたものを食べるのは初めてだった。こんなにおいしいお肉を食べるのも久し振りで、しみじみとしていると薫さんがカップを手に戻ってきた。
「はい、どうぞ」
「薫さん、ありがとうございます」
「おいしいでしょ。ここ、晃牙くんとアドニスくんが見つけてくれたんだ」
薫さんが嬉しそうに言った。晃牙くんとアドニスくんが見つけたお店、と言われれば、納得がいくメニューだった。みんなで笑いながら、おいしいご飯を食べていると、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
「
…
すみません、本当に全部ごちそうになってしまって」
お会計を済ませて後から出てきた零さんに深々と頭を下げる。
「くくく、言ったじゃろう?我輩達からのクリスマスプレゼントじゃと」
鞄からお財布を出そうとした手を薫さんに制され、「はい、あんずちゃんはこっち~」とそのまま手を引かれてエレベーターホールまで連れていかれてしまった。私からすると、ここに呼んでもらったこと自体が零さんの言うプレゼントだと思っていて、ちゃんと代金は支払うつもりでいたから、本当にびっくりしてしまって。
「ありがとうございます。ごちそうさまでした。すっごくおいしかったです」
「それは何よりだ」
「ま、俺様が焼いたんだから当然だろ!」
アドニスくんも晃牙くんも何も言わない辺り、最初から私に出させるつもりはなかったのだろう。今日は甘えさせてもらうことにして、この分のお礼は必ず仕事の方でしようと決めた。上がってきたエレベーターで揃って1階まで下り、ビルの正面玄関を出たところで二手に分かれることになった。零さんと晃牙くんとアドニスくん、薫さんと私。
「では薫くんや、嬢ちゃんを頼んだぞい」
「うん、任せて。ちゃんとお家まで送ってくから」
先に寮に帰る3人にもう一度お礼を言って、その後ろ姿を見送る。
「それじゃ俺達も帰ろうか」
「はい。よろしくお願いします」
まさか明日のデートの前に薫さんに会えるなんて思っていなかった。何度かESやスタジオで姿を見かけたけれど、忙しそうで声をかけられるような余裕はなくて、ただ遠くから眺めているだけだったから、偶然とはいえこうして会えたのはやっぱり嬉しい。
人通りの多い道を外れ、住宅街に入ると、少しだけ距離が近くなった。ふと隣を歩いている薫さんを見上げれば、何故か浮かない顔をしていて。何かあったのかと名前を呼ぶより先に薫さんが足を止める。
「ん~とさ
…
あんずちゃんごめん。先に謝っておかなきゃいけないことがあるんだ」
半歩前に出たところで私も立ち止まって、後ろを振り返る。そして、引っかかった言葉をそのまま繰り返す。
「謝っておかなきゃいけないこと?」
「
…
明日のデートなんだけど」
そう切り出されて、自分の身体がびくりと震えたのが分かった。薫さんの表情も相まって、その続きを聞くのが怖くなる。
「実はどこ行こうかとか何も決められてないんだ
…
ごめん」
続けられた言葉に、ふぅ、と安堵の息が漏れる。
「
…
よかった」
「え?」
「急なお仕事で会えなくなったとか、そういうのかと思いました
…
」
「明日だけは何も入れないでって、先に事務所にも零くんにも伝えておいたから、そこは問題ないんだけどさ
…
ほんとごめんね」
頭を下げて深刻そうな顔で告げられたのは、私にとっては何の問題もないことだった。けれど、薫さんからすれば、それほどまでのことだったのだろう。
「薫さんがいつも私を楽しませようと色々考えてくれてるの、知ってます。それに、今月頭からずっとUNDEADのお仕事が慌ただしかったのも知ってます。だから、大丈夫ですよ」
12月のこんな日に彼らが2日続けてオフだなんて相当なこと。他の人達との兼ね合いや仕事の予定が重なった結果、偶然こうなったのだとは思う。その分、今月の前半はスケジュールがびっしり詰まっていたことも知っている。お付き合いをしているとは言っても、仕事柄丸一日一緒に出かけるなんてことは頻繁にあるわけではない。けれど、そういう時にプランを決めてくれるのは、色んな流行にアンテナを張っている薫さんだった。
「
…
もしかして、今日の連絡が晃牙くんからだったのとか、ちょっと元気がなかったのってそれが理由だったりしました?」
今日会った時から感じていた微かな違和感の正体。明日のデートのことを気にしていたからだったのだとすれば、全部辻褄が合う。
「
…
ハイ」
「ふふ、やっぱり」
少し恥ずかしそうに視線を逸らして薫さんは頷いた。
「
…
ってことでさ、あんずちゃんどこか行きたいところある
…
?俺としてはこれを聞きたくはなかったんだけど
…
」
頬を指先でかきつつ、困ったように眉を下げながら薫さんが私に尋ねる。何かあったかな、と少し考えかけて、ぱっと思い浮かんだものがあった。鞄からスマートフォンを取り出すと、ニュースサイトで見かけて保存しておいたページを開いて薫さんに差し出した。
「だったら、ここ行きません?明日までのクリスマス限定パンケーキ、あるんですよね」
流し見をしていた時にたまたま見つけたものだった。行けるかどうかは分からないけれど、行けたらいいなと思って残しておいたもの。限定メニュー以外のものもおいしそうで、一度行ってみたいと思ったお店だった。
「へぇ~、こんなのが出てたんだ。いいね、おいしそう」
「じゃあ決まりですね。で、食べながら次にどこに行くか決めましょう?」
「
…
ありがとう。うん、そうしよっか」
反応を見るに、どうやら薫さんも知らなかったらしい。残しておいた自分に称賛を送りたい。薫さんも快く頷いてくれたことで、ひとまずの予定は決まった。
「毎回完璧なデートプランじゃなくたっていいんです」
薫さんとのデートはいつだって楽しい。ここいいなぁ、気になるなぁ、なんてぽろっと話したことを覚えていてくれて、さらっと予定に入れてくれる。でも、今回の話を聞いて、改めてそういうところに負担をかけていたんじゃないかなって心配にもなってしまった。きっと正直に聞こうものなら、『そんなことないよ』って笑うのだろうけど。
「薫さんと一緒なら行き当たりばったりのデートだって楽しいはずですもん」
「あんずちゃん
…
」
だから、たまには何も考えずに気分で出かける日があってもいいんじゃないかなって思ったりもした。カフェでお茶をしながら今日はどうしようかって相談して、それからふらっと出かける。
「それに、薫さんが行きたいところだっていい。もっともっと薫さんの好きなことも知りたいんです」
「
…
ほんと、ありがとう。さ、遅くなる前に帰らなきゃね」
薫さんの表情がさっきより明るく見える。差し出された手を取ると、顔を見合わせて笑い合う。外で話していたのだから当然と言えば当然なのだけれど、触れた手はひんやりとしていた。おしゃべりをしながら私の家に着く頃にはほんのりと温かくなっていて、今度は離すのが惜しくなる。
「送ってくださってありがとうございました。明日、楽しみにしてます」
「うん、俺も。また明日ね」
玄関の前で手を離して頭を下げた。後ろ姿を見送りたいけれど、私が中に入るまで薫さんはそこにいる。まだ薫さんはここから寮まで帰らなきゃいけないのだから、と早めに切り上げて家の中に入った。
せっかく久し振りのデートだからと新しい服も買った。もちろん、薫さんへのクリスマスプレゼントも。喜んでもらえるといいなと思いながら、明日の準備を済ませてベッドに潜り込んだ。
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