2024-12-20 16:19:46
5690文字
Public 楓応
 

架空の肖像の大混乱

・ぶいチューバーの事はふんわりしか知らないです
・現パロ
・いちゃいちゃ楓応
・短め



 ▇◇ー◈ー◇▇
おまけ

「一つ訊いておきたいのだが、もうあのモデルを使って配信する気は無いのか?」
 二人が同棲するマンションにて、食事をしながら丹楓が訊ねれば応星は『しない』と、断言した。
「そうか、では断っておこう」
「ごめんな、お前の会社にまで迷惑かけて……
 応星が本当に申し訳なさげにしながら眉を下げ、目を伏せる。
 誤配信をしてから、SNSにて異様に拡散されている事実を知った応星が直ぐにアカウントを消し、例のモデルの良さや話題性から、事務所へ入らないか。などと丹楓の会社へと問い合わせをしてくるような、行動力のありすぎる事務所が複数あり、また、モデルを作成してくれとの依頼まで来る始末である。
「構わん。ただし、やりたくなったら必ず言え。私が全面的にバックアップする。独断で可笑しな事務所に入ったりするのではないぞ」
「やらないって。あれ、試してるの見られて本気で恥ずかしかったしさ……
 あの日の衝撃と羞恥を思い出し、応星が首を撫で付けながら嘆息する。
 基本的に、丹楓は応星の何よりの味方になってくれるが、職務には厳しい人間であり、そこは贔屓をしたりはしない。だのに、全面的に。とは随分な惚れ込みように思えて思わず整いすぎている眉目秀麗な顔を凝視した。
「なんだ?」
「いやぁ、お前、もしかしてあのモデル気に入ってたりするのか?」
「うむ、応星にそっくりの美しいモデルだったからな、お蔵入りは正直惜しい」
 思い切って訊ねてみれば、はっきりと肯定した。
 応星は、思わず苦笑する。

 そっくり。とは、眼が曇っていると言わざるを得ないからだ。
 痘痕も靨。などの諺もあるように、情を感じる相手へは脳内で相当な美化をしてしまうものらしい。
 応星は、己が容貌を醜悪とは考えていないものの、例のモデルは女性型の上に、比べれば少々恥ずかしさを感じる程度には見目を整えている。睡眠不足が常の業務で目の下にくまは張り付いて、いつも眠そうな眼に、顔色だって宜しくない。最近の手入れ不足で髪も乾燥してしまっていた。

 調子の良い時は、それなりとは言え、美化し尽くしたモデルを『そっくり』などと過大評価も甚だしい。
「あれ女だし、大分、本人とはかけ離れとると思うんだが……
「そうか?現実の応星も十二分に美しい。西施も楊貴妃も、お前の前では霞もう」
「あー、社長さんは重傷だ。眼科の受診をお勧めするぜ。さっさとそのフィルターをとってもらいな」
 現実を見て欲しかったのに手放しに褒められてしまい、照れつつも応星は素直ではない科白を口にする。
「眼科など必要は無い。事実だ」
「はいはい、わかったから真顔で詰め寄るな。シャチョーサンはたかが一研究職な俺の何がそこまで気に入ったんだか……
 丹楓が食事を中断して席を立ち、己の才は誇りながらも、自身は貶める癖がある応星の頬へと手を伸ばす。
「全てだ。屈せぬ心、気高き精神、才に胡座を掻かず努力を惜しまない勤勉さ、負けず嫌いの性格、顔、声、体、共に過ごす時間も、言い出したら切りが無い程、私には全てが愛おしい」
 丹楓が眼を細め、ゆっくりと応星の肌に手を滑らせる。
 まるで壊れ物を扱うような手つきで、如何にも大事なのだと主張するように。
「逆に、お前は良く私を受け入れてくれたな?」
「それは……、偉そうにするだけのいけ好かない奴と思ってたらそうでもないし、案外不器用だし……、うん……
 応星が白い肌を真っ赤に染め、丹楓から眼を逸らしながら、もごもごと言えば、それだけでも嬉しいのか破顔する。
「応星、私と共に歩む人生を選んでくれてありがとう」
 丹楓が応星の手を取りながら片膝をつき、神へと慈悲を請う崇拝者の如く頬を寄せた。
「ぎょ、仰々しいな!朝っぱらから……、ほら、飯食うぞ!」
「あぁ、そうだな」
 丹楓が応星の目元に口付け、頭を撫でてから席に戻ると食事を再開したが、促した本人は照れすぎて、顔も碌に上げられなくなってしまっていた。