Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
j
2024-12-20 16:19:46
5690文字
Public
楓応
Clear cache
架空の肖像の大混乱
・ぶいチューバーの事はふんわりしか知らないです
・現パロ
・いちゃいちゃ楓応
・短め
1
2
出来た。
自作の3Dモデルを作成し終わり、応星は快哉の声を上げる。
3Dデザイナーをやっている知人がVTuberのモデルを作成している様子を見て面白く感じ、機械工学の研究を主にやっている応星は興味を引かれた。そうなると好奇心旺盛な彼の行動は早い。
必要な機材、3Dモデルを造るためのソフトウェアを購入してからと言うもの、仕事の合間を縫ってこつこつとモデルを造り、今日が休日と言うこともあって徹夜で完成させた物を前にして気分が高揚している。
「んふふ、お試しやってみるか」
応星が機嫌良く手を摺り合わせながら独り言とは思えない声量で呟く。
動画を視聴するためだけにとっていた動画サイトのアカウント。将来的にこんな活用をするとは想像もしなかったが、アカウント作成の手間が省けて良し。との前向きな思考で限定的な配信をする枠を取る。
特に誰かに見せたい訳ではなかった。
新しい技術への好奇心から独り遊びの範疇で造った物なのだ。故に他人と共有するつもりはないが、自身が作り上げたモデルが配信画面内でどう動くか見てみたい気持ちは当然ある。
珈琲を飲みながら待っていれば配信が開始され、応星がカメラに向かって手を振れば画面内の美女が手を振り返す。
モデルは応星自身を女性にしたような見目にした。
架空の人間を造るよりも身近な人間を参考にした方が造形はし易かろう。との考えだが、双子の弟には拒否され、同棲中の恋人を造るのは少々照れ臭い。ならば体を張るしかない訳で、普段はやらない自撮りなるものを頑張った。
何時間も己と睨めっこをしながら細かくモデリングし、テクスチャを貼り、どうせなら女性にしてみようと余計な事を考えて回り道をしながら作り上げた美女は応星の動きに合わせて優雅に微笑んでいる。
「んっふふ
……
、少し盛りすぎたかな」
スマートフォンの中にある己の顔と比べて苦笑する。
絹糸を思わせるような銀白色の長い髪、垂れ気味の眼を縁取る増量された睫、紫と藍が混ざった瞳、滑らかな曲線を描く透き通るような肌、柔らかそうな唇。細身に見えて豊かな胸、しなやかに動く体。己をモデルにしておきながら頑張りすぎた羞恥が少しばかり湧く。
「ま、いっか」
どうせ誰に見せるでもない。
自己満足の代物である。
どれだけ美化したところで誰に迷惑をかけるでもないのだから。
「カメラに写すだけでモデルが動くのも凄いなー」
応星は椅子から立ち上がり、万歳をしてみたり、飛び跳ねてみる。
ゲームの制作などでは全身に動きをキャプチャーするための器具を付ける必要があるようだが、こうしてモデルを自身のアバターとして活用するくらいならこれだけでも十分そうだった。
「遅延もあんまないな、モデルも剥がれないし、マジ俺天才じゃねぇ?」
軽く踊りながら自画自賛の嵐を呟き、調子に乗って両手を唇に当て、投げキッスなどをしては笑う。
「なー、丹楓、見てー」
収まらない盛り上がりに運良く家に居た恋人を捕まえてパソコンの前に引っ張ってくる。
「この間言っていたのはこれか」
同棲中の恋人である丹楓のモデルは作成していないため、動画内に顔がしっかり出ているが、気にした様子もなく応星が作り上げた物を感心した様子で見ていた。
「独学でこれだけのものが作れるなら仕事の幅も広がりそうだな」
「だろー、俺って天才過ぎて困るわ-」
応星が丹楓の肩を抱き、どのように造ったか、どこに苦労したかを良く回る口を以て伝える。こうなった応星は止まらず、肩もがっしりと捕まえられているため丹楓は逃げずに黙って頷きながら聞いていた。
「どのような動きにも対応できるのか?」
「どうかなー。一通り動いてはみたけど」
ふむ。と、丹楓は一つ呻り、応星の手を引くと抱き上げてみたり、自身の影になるように動かしても消えないモデルに感嘆の声を上げた。
「素晴らしいな。急な動きでも、物陰に入っても消えんとは」
「だっろー?俺の造るもんに抜かりはない」
ふふん。と、応星は胸を反らし、実に満足した様子で椅子に戻る。
「腹減ったし拉麺でも食いに行こう
……
、か
……
?」
「どうした?」
配信を切ろうとした応星の目に、本来有り得ない物が飛び込み、先程まで意気揚々であった声が淀む。
『ラーメン食いに行くの?いいねー』
『次の配信いつですか?』
『美男美女♂カップル推せる』
「え
……
?えぇ
……
?」
「全体公開で配信をしていたのか?」
「限定にしたつもりだった
……
」
丹楓が戸惑う応星の代わりに設定を覗き、限定配信のつもりが全体公開になっている事実を教える。
『配信、急上昇ランキングに入ってたよ^^』
『美女♂の困惑可愛い~』
『まぁ、失敗は誰にでもあるから気にすんなよ』
『かれぴ優しそうだし、格好いいしうらやま』
『次のカップル配信楽しみにしてる』
『貴方の名前は星ちゃんでいいの?彼ピはなんて名前?』
『呼びに行った時、たん?とか呼んでるのが聞こえた』
続々と投稿されるコメントに応星の顔色が赤くなったり青くなったりと忙しい。
『すげぇ美女だと思って来たら声が男のまんまでワロ』
『それがいいんだよ。判ってないな』
とんでもない失態である。
誰にも見せないはずが全世界に公開していた。
それでも、誰一人として配信を見つけなければ平和に終わるはずだった。が、応星の作り上げた美女は人目を引いてしまい、完全なる無防備状態で遊んだり、恋人とじゃれ合っている様子を大勢の人間に大公開。しかも、丹楓は現実そのままの姿で配信されてしまっている。
同接はざっと三百人程だが、その数字は異様な速度で増えている。大手の配信者程ではないが、まるで動物園の鑑賞会の様相を呈していた。
「これを消せばいいのか?」
「お
……
、あ
……
、うん」
比較的冷静な丹楓が配信を切り、パソコンの電源を落とす。
「ご、ごめん。俺の確認不足で
……
」
己だけで完結させればいいものを、何故、丹楓を呼びに行ってしまったのか。
動作確認だけをして終わらせていれば、仮令、全体公開でも『やっちゃったなー』だけで済んだだろう。出来がいいから丹楓にも見せたくなった。努力の成果を知って欲しかった。とは自己分析できても、自らの確認不足が生んだ最悪の事態である。
丹楓は只人ではない。
若いながらも不動産からIT関連のサービスを手広く扱う大企業の社長である。
見る者が見れば一見して正体に気付くだろう。
「流れてしまったものは仕方が無い。モデルの作成は個人的な趣味の範疇であって、コンプライアンスに抵触するような物言いをしていた訳でもあるまい。そう気にかけるな」
「でも
……
、お前の顔、ばっちり出てたし」
「顔出しなど今更だ」
「そりゃ企業雑誌とかなら出てるだろうけど
……
、家だしここ
……
」
「別に関係が公開されたとてなにがあろうか。私が気にするなと言っている。ほら、いつもの店に行くんだろう?」
丹楓が外の寒さを考慮してカジュアルなジャケットを羽織り、未だ動揺が治まらない応星にも着せ、手を引いて外に出かけていく。
いつもなら好きな店の拉麺を大喜びで頬張っている応星が、背中を丸めながらちまちまと啜る。
「気にするなと言っているだろう。何かあれば私が対処してやる」
「そう言うのが嫌なんだよ。結局お前の力便りみたいな
……
」
彼等の出会いこそ一研究者と、出資者の関係であったが、今は個人的な付き合いなのだから、応星は丹楓の助力を当てにしてはいない。自身の確認不足と油断が招いた事態に自己嫌悪し、巻き込んでしまった罪悪感に苛まれていた。
「どうとでもなる。どうせ何かあっても一次的なものだ」
飄々とした丹楓に慰められ、応星は一つ息を吐くと拉麺を啜り出す。
餃子を囓れば溢れる肉汁と野菜の旨味が口に広がり、幸せな美味しさに心が癒やされた。
「前に食べたいと言っていたパフェでも食べに行くか」
「うん」
先程までもぞもぞしていた応星も、次第に不器用ながらも慰めようとしている丹楓の気持ちを受け止め、壊滅的な失敗ではない。なるようにしかならないのだ、。と、諦観の心地もあって頷く。
二人は拉麺屋を出ると、どこか寂れた風でありながらもアンティーク調で味のある雰囲気を醸し出す喫茶店に入り、そこの名物である巨大苺パフェに応星は表情を綻ばせた。
応星は甘く滑らかな生クリームに包まれた甘酸っぱい苺に舌鼓を打ち、丹楓は珈琲を片手に幸せそうにパフェを食べる恋人を心穏やかに眺め、互いに幸福を噛み絞める。
そんな二人の時間を味わっている間、録画された配信の切り抜きが恐ろしい速度で拡散されていたなど知る由もなかった。
▇◇ー◈ー◇▇
「どうするおつもりですか」
「どうもこうも、プライベートな時間に恋人と過ごす事の何が悪い」
凄まじい勢いで拡散された動画は、直ぐ様、丹楓の会社役員の知ることとなり、朝から緊急重役会議が開かれた。しかし、丹楓は詰め寄られてものらりくらりと返し、意に介す様子はない。
「こんな、ぶいちゅーばー?の男ですか?こんな軽薄そうな相手と恋人などと、貴方様の印象も悪くなりますし、株価に影響でも出たらどう責任をとられるのですか⁉」
「犯罪でもあるまいし、こんなもので下がるような印象や株ならその程度。取引先がどうこう言うのであれば、そんなものは切れ」
丹楓は、自身の補佐を勤めながらも何かと噛みついてくる秘書の言い分を切り捨て、このような時間は無駄とばかりに立ち上がり、会議室を後にする。
騒動を知った応星が、また落ち込んでいるだろう予想しながら、なにか好きなコンビニスイーツでも買って帰ろうか悩み、あの3Dモデルは二度と日の目を見ないだろう。と、残念にも思っていた。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内