木蔦(キヅタ)
2021-02-22 18:09:37
3752文字
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いきなり夫婦になっちゃうけど、営みはなしなちょぎくにの話【ちょぎくに】


ちょぎくに

お題
「くにがなかなか手を出させてくれないちょぎくに」




長義が顕現した本丸にはまんばはいなかった。だから自分が山姥切としてみんなに認識されていた。

長義は有能だった。書類仕事もできるし、しっかりしてる。打刀の割に機動も高い。みんなから信頼を得ていた。

そんな中、まんばが顕現する。
「山姥切国広だ、何だその目は。うつ
「山姥切……?」

みんなが目を丸くしてまんばを大注目する。
「山姥切さんと同じ号だ」
「えー!なんでなんで!」
「あ、もしかして!」
「なになに!?」

「人間は夫婦になると同じ氏を名乗るって聞いた!もしかして、ふたりもそうなんじゃないかな!?」
「えー!じゃあこの刀、山姥切さんの奥さんなの!?」
「大変だ!早速祝言上げよ!」
「誰か〜!歌仙さんにご馳走の用意してってお願いしてー!」
「初期刀に俺報告してくる!」

大騒ぎになる。

「これは何の騒ぎだ?」
「あ、山姥切さん!さっき山姥切国広さんが顕現したの!」
「え?」
「山姥切さんはこっちこっち!」

引っ張られる。そして紋付袴を着せられる。

「これは一体?」
「早く早く!もうみんな待ってるよ!山姥切さん達が主役なんだから!」
広間に引っ張られて向かう。
襖を開けるとみんながずらずらと座って待っていた。夕食は高級料亭の御膳のような上品な品々。皿に少しずつしか乗ってないが、手の込んだものだとわかる。とても豪華そうだ。
上座に綿帽子を被った真っ白の着物を着た人物が座っている。顔が隠れているため誰なのかわからない。

「山姥切さん、座って!」

短刀に促され、その綿帽子の人物の隣に座る。なにやら審神者が挨拶をし始める。そして乾杯。
何の祝いの席だ?と思う。
(待て、綿帽子?)
綿帽子と言えば結婚式だ。結婚式というのは人間の夫婦か生涯の契りを交わすもの。

片割れがこの綿帽子だとすれば、もう片割れは?と考え自分の格好を見下ろす。

(俺か!!!)

何やら己の知らないうちに祝言を上げさせられてることに気づく。

相手は一体どこの女だ!と横を見るが、口元以外何も見えない。

「待ってくれ!これは一体!」
「俺たちからのサプライズだよ!いつも世話になってるしね!」
「そうそう、山姥切、憎いね〜!こーんな美人な奥さんがいたなんて!」
「ささ一杯
「奥さんって何のことだ!俺は別に!」
「照れない照れない」

立ち上がろうとするが押し戻される。何度も抵抗するが、結局みんなに押し切られてしまう。そのまま祝言が終わる。

綿帽子は綿帽子のまましずしずと長義の3歩後ろを歩く。その控えめさは妻として古めかしくはあったが、長義個人としてはなかなかに好感はあった。

そして長義の部屋に戻る。夫婦だから同室らしい。

既に他の刀が気を利かせたのか、床の準備はできていた。しかも長義の布団ではなく、ふたりが一緒に寝られるような大きめの物になっている。

はぁ、と頭を抱えた。見ず知らずの女を娶ることになろうとは。今夜の布団はどうしようか、そんなことを考え、その場にしゃがみ込む。

綿帽子は長義のそばに控えるように、ちょこんと横に正座した。

「いい加減それを取ったらどう」

イラつきを抑えながら、綿帽子にそう言う。綿帽子は動揺するようにびくりと肩を震わせた後、ブンブンと首を振った。

顔を明かさないところを見ると、他所の間者かもしれない。訝しげに見て、強引にそれを引っ掴む。

「取れって言ってるだろ!」
無理矢理それを奪い取る。そして中からは薄く化粧を施された写しが出てきた。

「あ……っ」

綿帽子を困ったように見つめる。その顔は儚さも含み、美しさに目が奪われる。

「か、返してくれ!」
女だと思い込んでいたが、低い声。
そういえば写しが顕現したと短刀が言っていた。

「なんでお前が?」
「わからない。何故か山姥切と夫婦だと思われてこんなことになってしまった……。すまない」
しおらしくまんばが申し訳なさそうに謝る。
「い、いや、お前の所為じゃないし
パッとまんばが顔を上げる。上目遣いで縋るような目で長義見つめてくる。長義の胸がぎゅっと掴まれたような苦しさがあった。
「本丸のみんなは誤解してる。今からでも弁明して
「あれだけおおごとにしたんだから、心苦しさがあるんだけど」
「でも
ちらりとまんばを見る。彼が自分のものというのは悪い気はしなかった。

「しばらく夫婦としてやってくしかないだろ」
それは名案だと思った。
まんばは少し困ったように目を泳がせた後、三つ指ついて言った。

「わかった、不束な写しだが、しばらく頼む」