木蔦(キヅタ)
2021-02-02 09:22:12
3189文字
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オメガバ⑥Ωになりたいまんばの話【ちょぎくに】


まんばは優秀な医師がいるというクリニックへ行った。第二性専門のクリニック。まんばには一生縁のないところ。

まんばはβだった。顕現してから今までずっとβとして過ごしていた。そしてこれからもずっとβとして生きるだろう。

「次の方」
診察に呼ばれ、まんばは中に入る。
「今日はどうしましたか?」
がしりとまんばは医師の手を握る。
「俺を、Ωにしてほしいんだ!!」







まんばには想いびとがいた。彼はαだった。何をしても優秀で、みんなからの人望も厚く、平々凡々なまんばの手の届かない存在だった。

Ωであれば彼の隣にいれたのに。そう何度も思った。
Ωは発情期にαを誘うフェロモンを出す。それで彼を誘惑して、番ってしまえば彼を自分の物にすることができるのだ。
そんなのずるい。Ωであるだけで、優位に立てる。βのまんばはその土俵にすら立てない。

Ωが羨ましい。Ωになりたい。まんばはそう思った。

「で?そんな理由でΩになりたいって??どうでもいいが、いい加減手を離せ」
「?なんだこの同位体」
すごく不機嫌そうな同位体が、医師の手を握ってたまんばの手をはたく。愛想が悪い。
「頼む!俺はどうしてもΩになりたいんだ!」
「そんなこと言われても……
医師は困ったようにしている。後ろで同位体が「無理だ無理。だから帰れ」と言っている。外野は引っ込んでろ。
「先生、お願いだ……!」
「でもね、βだってαと恋人同士になれるわけだし
「Ωが顕現したらそいつに奪われるんだろ!それにこの世には運命の番いってやつもいるはずだ、どう足掻いたって勝ち目はないじゃないか……!」
「ほら、やってみないことには
「やらなくてもわかる!俺なんて捨てられるに決まってる……!」
医師はうーんと首を捻る。
俺はΩになれないなら折れる」
「え!?」
「誰かと奴が番うところなんて見たら、生きてられない。そしてその日が来るのは遠くないはずだ」
本丸でまんばなんていてもいなくても同じだ。だからまんば一振りくらいいなくなっても困りはしない。
それならこの恋心を拗らせて折れた方が楽だ。

「わかった、そこまで言うなら
医師がそう言った。
「性を変えるなんてリスクが高く難しい。だからちゃんと俺の言う通りにして。何を言われてもだよ。約束できる?」
「わかった、約束する。」
「まず、Ωのホルモン剤を打つね」
注射器を取り出されびくびく。でもΩになるためだからと頑張る。少しだけチクッとして終わる。
「次に、その人に告白しにいく」
「は!?なんで!?」
全然医学的なことと関係ない!とまんばは怒る。
「違うよ、今注射したホルモン剤を活性化させるために、ドキドキする環境を作らなきゃいけないんだ。特に性的欲求を伴う状況が効果的で、その論文も発表されている。もちろん空想や妄想でも良いんだけど、αがそばにいた方がそのフェロモンに影響を受けてΩ化しやすいからさ」
「な、なるほど??で、でも告白は……
「Ωになるために俺の言うことは聞くって約束したよね?ダメならΩ化は諦めるんだ」
「わ、わかった!行ってくる……!」
まんばは会計を済ませ、本丸へ向かった。




診察室はしんっと静まり返る。
「本歌」
「なにかな」
「詐欺で捕まるぞ」
……








まんばは急いだ。ホルモン剤が溶けてなくなって、効果が薄れてしまうかもしれない。Ωになりたい、番いになりたい、その一心で走った。

「本歌!」
「?偽物くんか、何か用かな」
「え、あ、その……
呼び止めたは良いものの上手く言葉が出てこない。心臓はバクバク言っている。
このドキドキがΩになる大切な要素だ。

しかし告白する覚悟はできてなかった。

(本歌の前にいるだけでこんなにドキドキするんだから、これだけで十分じゃないか??)
心臓はこれ以上にないくらい速い。だいぶΩに近づいた気がする。

「な、何でもない!じゃ!」
「待て」
引き止められてまんばはギクリとする。
「何の話だったの?言いなよ」
半ブチギレ状態でまんばに言う。ひゃ、と悲鳴をあげたくなった。怒らせてしまった。
「いいいいや、別に大した話では……!」
「大した話かどうかは俺が決める、お前なんかじゃない」
「オオクリカラサン」
ずんずん迫ってこられびくびく。壁際まで追い込まれる。
「もう一度聞く。話は何?」
折られる!
「お、Ωになりたくて!!αに告白したら、なれるって言われたから、しようと思ってた!!」
きょとんと長義はしてる。
「Ωに?」
……
「なんでわざわざ?」
もうここまで言ってしまったら、告白したも当然だ。
これだけドキドキしたのだからΩになってるかもしれない。告白してしまおう。
「その、好き、だから……
「!」
やり遂げた。まんばはついにΩになった、やった、と思う。
「偽物く……
「ちょっと行ってくる」
「は?」
本丸を飛び出す。





向かった先は先程のクリニック。
「言う通りにした!Ωになってないか検査してくれ」
「えええ?」
医者は困り顔をしている。
「告白したの?」
「した!」
「それで反応は?付き合うことになった?」
「え?Ω以外はお断りじゃないのか?返事を聞かずに出てきてしまった」
はぁ、と医者がため息を吐いてる。それより検査検査!と急かすと注射針が出てきて、血を採られた。
「検査は時間がかかるから、また明日以降に来て」
「わかった!」

まんばは本丸へ帰る。




「どうしようもし振られてたら……検査結果なんてβのままに決まってるし、とりあえずドキドキが足らなかったことにして……
検査機に掛けて、頭を抱える。

ジジジ……と結果が印字されていくのを聞きながら、汗ダラダラ。訴えられたらどうしよう。

「本歌」
まんばが呼ぶ。
「検査結果がΩなんだが?」
「は?」




まんばはβに近いΩだった。Ω性がなかなか目覚めず初発情期もまだだった。そのため自分はβだと勘違いしていた。

検査だって今回初めてした。だから誰しもまんばの正しい性を知らなかった。Ωを感知できるα以外は。

そしてその後まんばは検査結果を知り大喜びする。そして初発情期を迎えた後、見事長義と番いになった。

しかしこの後が大変だった。

まんばは喜びの余り「このクリニックへ行ったらΩになった」と触れ回った。元々Ωだったため、第二性が変化したわけではない。だから医学的処置は何もしていない。

しかし表面上はβからΩになったように見える。しかも院長自身もβからαになっている事実もあった。これはすごいとSNSで拡散され、この功績が世界に広がることになった。

院長は誤解だと否定するが、その噂だけが一人歩きし、このクリニックは有名になってしまったのだった。

ちょぎくにハピエン!お疲れ様でした!ありがとうございました!






どうでもいい設定
・本丸長義くんはまんばと付かず離れずだったんだけど、まんばの告白により誤解してます。まんばに好きなαがいるのでは?とか、ΩになのにΩになりたいとは?もしかして抱いてくれって意味なのか?未通なのを気にして??とか思ってます。
・β先生は自業自得。
・打ったのは栄養剤です。
・β先生は「βだからダメなんだ」と思い込んでるまんばに、何かの枠組みに縛られるんじゃなくて、自分の気持ちで勝負して欲しかった。例えまんばが振られたとしても、それは好かれないから仕方ない。第二性で生涯の人を選ぶのは違うって。
でも途中から、医者としてまずいことしたなと慌ててる。


→番外編①
https://privatter.me/page/675e818f48942