ちょぎくに
オメガバ②
長義はため息をついた。
長義は医者である。第二性専門の医者だ。もう少し詳しく言うとΩ関連を多く取り扱ってる。患者にはαもいるが、長義の担当はほとんどがΩだ。抑制剤を出したり、検査したりする。急に目覚めた第二性に身体が不安定になることもあるので、体調管理のアドバイスをすることもある。
決してカウンセラーではない。
「せんせ、俺はばかだぁぁぁ
……」
先ほどからΩ患者が診察室から出て行ってくれない。ずっと愚痴っている。うるさい。聞いても聞いても終わる気配がない。
「運命の番いに出会えるのはほんの数%なんだろ
…!?それなのに!それなのに!」
ダンッダンッと机を叩いている。
「俺はどうしてあの時所属本丸を聞かなかったんだぁぁぁ
……!」
ここは居酒屋か。
先ほどから何度も何度も同じ話に付き合わされてる。
この写しは長義の担当の患者。普段からΩを辞めたい、運命の番いには会いたくない、発情期なんて来なければいい、などと言っている。
そんな彼が先日、運命の番いに会った。演練会場で見知らぬαに絡まれているところを助けてくれたらしい。ベッタベタのベタだが、それで恋に落ちてしまったとのことだ。
その時に相手は自分の運命の番いだ、と感じたようなのだが、その時は礼を言っただけで、所属本丸も、国も、政府担当でさえも聞かなかった。手がかりはゼロだ。
刀剣男士は五万といる。ある程度手がかりがあれば探す手段はあるが、さすがに絞らないまま虱潰しは何年も掛かるだろう。
だからまんばはこうして嘆いている。番いなんていらないと言ってたのが嘘のよう。
「ほら、患者くん、次の予約があるからそろそろ帰りなさい」
「でもせんせぇ
……」
「ここで話していても見つからないんじゃない?」
まんばは渋々出ていく。
(でも、まあ、運命の番いなら惹かれ合うだろうから、いずれ再会する可能性も、ある、な?)
当人達の問題だし、長義には関係ない。関係ないから放っておこう、そう思っていた。
のだが。
長義はその後も診察をこなしていた。
その日は予約外で初診のαがいた。同位体だ。
「実は最近ラットでもないのに、その、ムラムラすることが多くて
…」
「んー、血液検査でもする?」
「いや別に検査するほどでは
…原因はわかってるし
…」
「じゃあ抑制剤出しとくよ、
……原因?」
「最近運命の番いに会ったんだ」
(出会える確率はコンマ数%って聞くけど、結構ゴロゴロいるじゃないか)
今日はふたり目だ。
「この前演練で他のαに絡まれてる所を見つけて
…。下位のαだったし、すぐ追い払えたんだけど
…」
「ふーん」
よくある話だなと思う。
「助けたΩが運命の番いだったんだ。見た瞬間わかった」
「へー」
「それが俺の写しで、まるで天使が舞い降りたみたいに可愛くて
…。思わず見惚れてたんだけど」
「ん?写し
…??」
「連絡先を交換し忘れたんだ。せめてどこの本丸か聞いていればって
…」
「んんん??」
「その子と出会ってから、思い出すたび、ムラムラが止まらなくて、つい自慰を
…」
「待って」
その話聞いたことある。別視点で。
長義は思った。彼らが運命の番いだ、と。
彼らは互いを求めている。引き会わせるのが近道になるだろう。
「えーっと
……」
しかし個人情報を病院側が漏らすのはNGだ。例え個人を特定できない情報だとしても。「ここに通っている」でさえも言えない。
「でも薬出してくれればそれでいいから」
「待って、待って、やっぱり検査しよう」
「検査
…?」
「ほら運命の番いに会って体質変化するαも多いから、合わない薬とかあるしね!」
「でも」
「次も来て」
「仕事が」
「体のことは大事だよ。放っておいて無差別にΩを襲ったら、君が捕まることになる」
「
……先生がそこまで言うなら」
「じゃあxx日のxx時」
「え、そこしかダメなの?」
「すまないね、うちは結構患者が多いから一番早い予約だとその日しか空いてないんだ」
「後ろにズラすことは」
「いや検査の結果は早い方がいい!」
「そ、そう
…?」
まんばの定期検診の日に予約をねじ込む。
通常であればなるべくαとΩがかち合わないように予約を取る。緊急や予約外は仕方ないため、待ち合いを分けることにしている。
だけど今回は彼らを引き合わせたい。
だから彼らの予約を前後で取った。
まあ、これで何とかなるだろう、そう長義は思った。
あとはふたりに任せて。
ちょぎくにHappy End!!フゥゥゥゥゥ!!
お疲れ様でした!ありがとうございました!この後ふたりは再会します!おめでとうおめでとう!先生にできる精一杯だよ!お疲れ様お疲れ様!!
→③
https://privatter.me/page/675e818f3430b
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