木蔦(キヅタ)
2019-09-14 11:54:25
1016文字
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ヘタレ長義くんシリーズ【ちょぎくに】





南泉はぼんやりとそれを眺めていた。視線の先には山姥切長義。先程から、時間にすると5分ばかりだろうか、固まっている。

実は先程、彼は想い人と話していた。彼は想い人と犬猿の仲ということになっている。そもそも好いているくせに突っかかっていく彼が悪いのだが、その辺りの事情は審神者であれば誰しも知っているだろうから説明は割愛する。
とにかく想い人も含めた周囲に彼は気持ちを誤解されていた。そして引くに引けなくて、好意を隠して過ごしていた。
「ね、猫殺しくーん……
こっち見んな。
眉をハの字にしてこちらを見てくる。半泣きだ。普段のキャラはどうした。
先程、彼にしては勇気を出して想い人に好意を示した。具体的にはデートに誘った。聡い者なら気持ちに気付いただろう。しかし鈍くて有名な彼の想い人はこう言った。
「いや、山姥切の手を煩わせるまでもない。俺が一振りで行くから」
きっぱり断られていた。

「見てた!?今の国広!あの態度はなんなのかな!俺が勇気を出して、振り絞って、崖から飛び降りる思いで誘ったのに!」
どうでもいい補足情報だが、彼は想い人の事を『偽物くん』と呼んでいる。本人が嫌がっているのでやめればいいのだが、意地を張ってるのか、ただ意地悪して気を引きたいだけなのか、そう呼び続けている。しかし彼がいない所では親しみを込めて名前で呼んでいた。たまに『俺の国広』というはっちゃけた副詞が飛び出したりするものだから、ドン引きするしかない。

話を戻すが、こうなった彼は面倒くさい。どうしようもない愚痴を散々聞かされる。だからと言って話を聞かないとさらにうるさくなる。しつこい。斯くなる上は、奥の手だ。
「後藤、後藤」
「なんだよ?」
偶然通りかかった粟田口の短刀をこれ幸いと呼び止める。天は我に味方した。
「後藤が是非話聞きようだにゃ」
「え!?ま、待てよ!まさか俺にこの面倒なやつ押し付ける気じゃ!?」
「今度おやつ譲るから、このとーり!にゃ!」
「面倒ってどういう意味かな?」
「おやつで騙されるか!」
こういう時は逃げるが勝ちと決まっている。頼んだ、と言いながらそそくさと退散した。

しかしこの時明日までこの愚痴が続くとは思ってもなかった。