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森永
2021-04-26 19:58:01
6440文字
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べろがネコちゃんの风息
无风/内容要約:无限とはじめてキスしたら「猫の舌みたいだ」と微笑まれザラザラだと痛いかな…と思って変化の練習して人間の舌にしたのにいざそれでキスしたらちょっと残念がられて腑に落ちない风息/ちょっとギャグちっく
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舌を人間のそれに変えるという、言葉にすれば単純なことだが、そこの変化だけを変えるのは地味にむずかしい調整だった。そもそも人間の舌の感触をまだよく知らないので、风息が練習を重ねる間にも何度かざらざらの舌のまま、无限とキスをすることになった。
そのたびに风息は「无限は痛がってないだろうか」と内心びくびくして、キスのあとにはいつも申し訳ない気分になった。无限は毎回、风息とキスするのがうれしくてしょうがないという顔をしてくれるけれど、それもこの行為が目新しいあいだだけだろう。内心焦りながらも、风息は必死に无限の舌に舌で触れて、その感触を覚え込んだ。
そして、ついに。风息はやり遂げたのだった。
洗面所で、鏡に向かっていつかと同じようにべっと舌を出す。指の腹でそっと撫でると、そこはぬるりと引っかかりなく、なめらかな感触をしていた。
(や、やった
……
!)
何度さわっても、完璧な人間の舌だ。これならどう触ろうが擦ろうが、痛みは感じないに違いない!
とてつもない達成感に、风息はひとりガッツポーズをとって喜びを噛み締めた。研究のために、舌が回らなくなるまで无限とキスしまくった甲斐があったというものだ。何度も酸欠に襲われた苦労も報われる。いつ无限が嫌がりだすか脅える日々にもこれでおさらばだ。
滅多にないほど上機嫌になった风息は、足取りも軽やかに居間に戻った。ソファでのんびりと休日のひとときを過ごす恋びとに、飛びかかるくらいの勢いで风息は迫る。
「无限! キスしよう!」
常にない様子の风息に、无限は読みかけの本から顔を上げて目を丸くしている。ついこの間まで、手を繋ぐのにも一苦労していた风息が、きょうはやけに目を輝かせて触れ合いをねだってくる。たしかに、この間はじめてキスをしてからそれが気に入ったようで、自分から舌を絡ませて積極的に応えてくれている。これも、色恋に不慣れな风息を怖がらせないよう、細心の注意をはらいながら恋びととしての触れ合いを教えてきた成果かと思うと感慨深い。
そんなにキスが好きなのか。かわいい人だ。
恋びとからのおねだりに否やがあるはずもなく、无限は閉じた本を手放すと、「いいよ」とほほ笑んで腕を伸ばした。わくわくとした表情で风息が无限の頬を両手で包むので、同じように彼の頬にもそっと掌をあてる。互い違いに鼻先をそらして、すぐにやわい唇がぶつかった。
二人して交互にちゅ、ちゅ、と唇を吸い合うと、风息がそろりと口を開く。誘われるままに舌を差し入れると、待ちわびたかのように风息の舌が迎えてくれた。
ぬる。
「
……
?」
感触が、いつもと違う。
たしかめるように二度、三度とねろねろ舌を絡ませ合うと、感じた違和感は確信に変わる。风息の舌が、ざらざらしていない。
一度、接吻をほどいた。目を合わせると、风息はなにかを期待するような顔をして、頬を上気させている。
「风息?」
「どうだ、无限? 痛くなかったろ」
「痛
……
? なに?」
「舌だよ。ざらざらしてなかっただろう?」
そう言って风息は、んべ、と舌をおおきく出してみせた。
目の前に曝け出された粘膜の表面は、たしかにつるりとなめらかになっている。そこに猫の舌のような突起は一切ない。
そう、あのとげとげの、无限がいつも感触を楽しんでいた风息の舌が、ない。
「うまくできてるだろ。ここだけ変化を変えるの、難しかったけど練習してやっとできるようになった」
舌をしまった风息がにこにこしながら「どうだった?」と尋ねてくるのに、ショックを受けて茫然とする无限はすぐに応えることができなかった。
「舌
……
」
「ん?」
「风息の、ざらざらの舌
…………
」
「は? 无限?」
様子のおかしい无限に気づいて、风息は一転して眉根を寄せる。どうやら恋びとは喜んでいないようだ。なぜ。あんなに苦労して練習したのに。む、と口を尖らせた风息は、挟んでいた无限の頬をかるく抓ってやった。
「なんだよ、なにが不満なの」
「
…………
気に入ってたんだ、あの舌が」
「は? あれが?」
「だからなくなったのが寂しくて
……
でも私のために練習してくれたのはとてもうれしい
……
」
「はあ」
頬を抓られながら、しょんぼりと悄気てみせる无限に毒気を抜かれて、风息は眉間から力を抜いた。
あれが好きなのか、物好きなやつ。せっかく練習したのに。
これまでの苦労を思えば、思ったような反応が得られなかったのは無念だ。けれど、そもそも无限の舌のために始めたことであるので、元から気にしていなかったというか、気に入っていたのであれば結果オーライと言っていいだろうか。
「风息のざらざらの舌
……
」
「まだ言ってる
……
」
はあ、とひとつため息をついた。仕方ない。
「わかったよ、戻せばいいんだろ。戻せば」
「
…………
戻せるのか」
「当たり前だろ、変化だし
……
どっちのかたちにもできる」
そう言うと、ぱっと表情を明るくした无限はそうか、と天啓を得たかのように瞳に光を宿した。ずい、と鼻先が触れ合うほど顔が寄ってくる。
「じゃあ戻す前に、今の舌でもう一度キスしてもいい?」
「は?」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。今、元の舌がいいって言っていなかったか?
信じられない気持ちで見つめると、いやに力強いまなざしで无限が見返してくる。
「いつものざらざらの舌も好きだけど、もったいないから今の舌も味わっておきたい」
「お、お前
……
!」
あんなに残念がっておきながら、と风息が顔ごと引こうとするも、知らないあいだに无限の手ががっちりと肩を掴んでいる。逃げられなかった。いつも风息にテンポを合わせて、決して無理強いしない優しさはどこへ行ったのだろう。腹を括って重なる唇を受け入れながら、风息はまたひとつ、恋びとの妙な執着心という新たな一面を否応なしに知ることとなった。
そのあと、痺れるまで舌をこねくりまわされた後に、ねだられるまま元のざらついた舌に戻して、今度は唇が腫れるまで堪能された风息は、あまりこいつを甘やかして付け上がらせてはいけない、と息も絶え絶えに胸に刻んだ。
恋愛初心者が、意図せず中級にステップアップした瞬間である。
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