待ち合わせというのも近頃ではあまりしなくなった。呼んでもないのにそこにいるか、呼び合わなくても自然と一緒にいるようになったから──不思議な出来事として捉えていたが、なんのことはない、GPSが仕込まれていた──、必要があまりなくなった。
とはいえ、待ち合わせとはなんとよい響きだろう。いついつに、どこどこで、好きな人と待ち合わせ。予定の日までワクワクが抑えきれない気分になる。かくいう盧笙も、その喜びを感じている性分だった。
「ちょっとはよ着きすぎるかもな……」
大きな広場がある駅前は、簓とよい仲になってから集合する場所であった。お互いの家のちょうど間くらい。どちらの部屋に帰ることになってもいい位置だった。
「寒いな。喫茶店でも入って──おぉ……」
予定の時間の三十分も前に着いた盧笙の目の前に、見上げるほどのクリスマスツリーがそびえていた。そこを中心に半円状に店が出ている。
「クリスマスマーケットか」
こぢんまりした店先には、たくさんのオーナメントが揺れている。行列ができている店の看板には、ぐるぐる巻きのソーセージの写真。盧笙の喉が鳴る。小腹は空いたが、簓と夕飯を食べに行く約束で今ここにいる。盧笙はたくさん食べる自分の姿が、簓のお気に入りであることを知っていた。そのため、しばらく、ほんの少しだけ思案した。
「まあええか、なんか食お」
なにか摘んでいるうちに簓もやってくるかもしれない。そうなれば半分こして、罪の共有をすればよい。盧笙は身を寄せ合い暖を取るカップルの後ろに並んだ。
購入し、列を通り過ぎていく人たちの手の中にあるものに目移りする。ソーセージにポットパイ、ホットワインにチュロス。手はふたつしかないため、多くても二種しか買えない。どうしたものかとメニュー表を睨む。
「うーん……」
「えらいお悩みやんか」
ひょこりと顔を出した簓に飛び上がる。二十分も早い到着だ。お互い様すぎる二人である。
「簓来たんやったら店行こか」
「なんでぇ。今並んでたんやろ? なに食うん?」
「いや今から飯やん」
「どの口が言うてんねん」
可愛い奴め、と簓がカラカラ笑う。恥ずかしいやら悔しいやらで、盧笙はなにも言えない。
「どれ食いたいん?」
「ソーセージとホットワイン」
「それと?」
「ポットパイと、チュロス……」
簓は「よっしゃ」と頷き、盧笙の隣に立った。リュックから財布を出して、ポケットに突っ込む。
「飯は……」
「別に予約とかしてへんねんから、今日はここでたらふく食おや!」
クリスマスらしいことをするのはいつぶりだろう。盧笙は毎年気付けば過ぎていた冬のイベントを振り返る。簓とはどうしてもスケジュールが合わず、特別な日として扱うのもやめてしまっていた。
「ええの? お前が行きたがってた店やん」
「ええよそんなん! そこはいつでも行けるけど、ここは一年にいっぺんや」
「そうか、そうやな」
突然降ってきたクリスマスデート。盧笙は改めて、待ち合わせしてよかったとしみじみ感じた。そばで笑っている簓がキラキラに見える。少し寄りかかってみたりなどすると、ますます光るため、それがとても楽しくて、その夜は少しはしゃいだ。
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