銃弾なんてものは当たると思ったやつから当たっていくわけなのでこれは決してザップの反射神経が足りなかったとか護衛力が不足していたとか(というか大体護衛とかいうけったいな行為はもっとお上品なやつがすればいいと思っている。たとえば魚類とか)ではなく、ただ単に義眼を使って疲弊していたおっちょこちょいが油断して無様に狙撃されただけであって、本当に決してそれに対してもっと近くにいれば良かったとかは微塵たりとも思っていなかった。
ただ撃たれてあのぶかぶかの服の肩部分が瞬く間に色を濃くしそして小さな体躯が地面にくずおれたのを見た瞬間、あ、やばいと思った。あいつやばいところを撃たれやがった。
そう悟ったザップはだから誰よりも早く動けたし、眼前の敵を斬りざまに半魚人の後輩へ叫ぶことができていた。「近づけさせンな!」端的で横暴な命令は、レドナルドのもとへ疾駆していく姿と合わせて考えたのか、弟弟子に正しく伝わったらしい。
ザップがレオのそばに滑り込んだ途端、周囲に暴風が吹き荒れ強固な防壁となった。その台風の目の中のような場所で、倒れている後輩を無理やりに抱き起こして頬を打つ。「おい、起きてるか? 気絶するのは後にしろ」
閉じたまつ毛が震えて青光りを薄く漏らした。
「んなムチャクチャな……」
レオは小さく抗議すると呻いて身を捩ろうとした。触れ合う面積から血が白いジャケットを染めていく。極めて危険。頭の中で野生じみた警報が鳴り響く。布が邪魔だ。
ザップは右手指から血の刃を生み出すと無断で後輩の濡れた肩部分の服を切り裂いた。「俺の一張羅……」随分悲しそうな声でそんなことを宣える余裕はあるらしい。空元気かもしれなかったが。
現れた真っ赤な皮膚。肩口に銃創。弾は見えない。血が溢れている。貫通している。
ザップは立てた片膝にレオナルドをもたれかからせると血刃が突き出た両手を擦り合わせた。手のひらに傷がつき血にまみれる、まみれた右手でジッポを操り火をつける。ブローディ&ハマーではないが、血でコーティングするそれはザップの得意な処置の仕方だった。散々自分でやってきたことだからだ。
「ザップさん」
レオナルドがやけに深刻そうに名前を呼んできた。ザップはニヤリと笑う。察したレオは白い顔を更に悪くさせて言い募った。「ちょっと待って俺そういうのはマジで勘弁──」
そしてザップは血で覆った両手をジッポで燃やすと、赤々と煮える手を後輩の傷口に押し当てた。
レオが息を飲んで歯を食いしばる。肉の焦げたにおいが一瞬で充満し、その一瞬で両手を放しやる。
どっと脂汗を滲ませ震える後輩が「やだって言ったのに……」と甘ったれたことを抜かしやがるのでしゃーねえと返した。しゃーねえ、甘やかしてやるわ。「もう気絶していいぜ。次はあれだ、無事に病院行けるまで頑張ってその心臓動かしてろ」「ううう、うう、くそう、じゃあ有り難く……」
気絶する間際、焼灼止血したはいいものの火傷を負った皮膚を見てニヨリと笑うザップをしかと両眼におさめたレオは、次に病院で目覚めたときこのひと人非人です! と叫んだ。
火傷の痕はしばらく残るらしい。
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