さもゆ
2024-11-15 23:01:31
3055文字
Public APH
 

【APH】お日様コンビ

ロシアさんの心臓溶けさせたかっただけの、今年の夏も暑かったねっていう雰囲気話と、なんだかんだ日本人の黒髪黒目って綺麗だよねっていう雰囲気話。たぶん。

2019.10.5 たまごのお粥pixiv投稿作品


白と、赤と、




 どこもかしこも真っ白だともしやこの世界に色という概念はなく、自分の目に映る全てのものが身のうちの骨みたいにただ横たわっているだけなのではないかと不安になってくる。
 その色は紛れもなく自分の腹の中のものなのだけれど、けれどどうしていつもいつもそれに脅かされなければならないのだろうと思う。自分が自分に殺されかけている。国というものはいつの時代もそうなのかもしれなかったが、人の形をしているだけ余計に酷く感じた。
 どこもかしこも真っ白け。僕の色だった。
 氷に包まれた大地も空も、僕の胸の中の色だ。
 びゅうびゅう氷の粒が混じった風が吹き荒れ、耳のそばをひっきりなしに通っては戻ってくる。瞼を開けているのも辛かったが、一度閉じてしまうとくっついて離れなくなる気がして、ひたすらに骨が閉じているような世界を視界におさめていく。すると不意に、口の中が温かくなった。甘い味が広がる。
「あ」
 頬の内側を噛み締めていたらしい。口の中いっぱいに生温い血潮の熱が満ち、唾液をつくる機能が貪欲に反応し、そうしてごくんと喉が鳴った。胃はこれをボルシチか何かと勘違いしたかもしれない。喉を通り過ぎざま、美味いか不味いかの二択を迫られ美味いと判断した。ぽたりと一滴、口端から零れ落ちた。
 雪の上に一点、染みができる。小さな小さな点だ。証拠に、それはすぐに白色に覆われ見えなくなった。
 しかし一瞬だけ見えた赤色の染みにとんでもなく安堵する。
 なあんだ、良かった。
 僕の身のうちはちゃんと血が通っている。世界は白色だけじゃない。
 諫めるように風が一等強く吹いた。うるさいな、分かってるよ。だからって、雪のパラトノーに自分の血で色をつけようだなんて、思わないよ。痛いのは嫌いだし……
 脳裏に鮮明に焼きついた赤色を、容易く思い描く。白いパラトノーに、赤い丸……
 それだけじゃ駄目だ。赤色なんてものは、結局、すぐに掻き消えてしまう。溶け出て泥濘となり茶色く変色した雪にあれだけ赤色が染み込んでも、ひとたび吹雪けば全ては白に帰す。するとまた世界は骨で閉ざされ、何度も同じことを考えては血液の流れに安心し、そして永遠。考えないようにしていたし実際もう様々なことが悴んで麻痺してよく分からなくなっていたから気にしていないけど、これは何度目だったか。この考えが行き着く色はいつも同じだ。
 白と、赤と、あとは黒色。
 冷たく眩い白に、熱く染み渡る赤、それらの境目を明瞭にする黒。黒色の中には、ちかちかとほかの何色だか分からない色が瞬いていたりすることもある。昼間の青空じゃ見られない、夜空がそれだった。大体は分厚い灰色の雲で隠されているくせに、変わらずそこにあるわけだ。黒色だけは決してほかに染まらない気さえしていた。
 だから、欲しいと思う。
 いいな、と思う。
 暗闇も、あまり、好きではないけれど。でも白は自分を脅かしもするけれど、同時に絶対的な味方なのだ。きっと黒色だって。いつかは雪の下に。
 刃物のような風が頬を撫で擦ってくる。今のお友だちはきみだけだ。冬のひと。白い色。
 赤色か、黒色をしたお友だちが、欲しいな。……ぽたり、再び口から雫が落ちた。赤い丸が沈んで、消えた。消えなけりゃいいのに。
 思いに反して、辺りは一面真っ白だった。







 なるほど。
 きみの国旗を見た時、心底欲しいと思ったわけは、そういうことなんだね。
「日本くんのとこの人たちには、あまり髪を染めないでほしいなあ」 
 黒目がぱちりと瞬きし、不可解そうに窺ってくるので、にっこり笑って返してやる。瞳の中に、なんだか怯えのようなものが走った。
「な、なんの話です……?」
 これを言ったら、本格的に怯えさせるかもしれない。それはお友だちにするには可哀相なことだ。
「ううん。ただ、きみの言葉で言うと、モッタイナイってやつだよ」
……はあ」
 白と、赤と、黒。
 昔よりよほど色が増えたけれど、やっぱりこの三色だけは。
 白でぜんぶ包み込んで、身のうちに取り込めやしないかと、思うのだ。