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さもゆ
2024-11-14 23:22:51
5857文字
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BF
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【ショ英】キス・ミー!/全部の発言がアウト
話の繋がってない純度100%ショ英話、二編です。短いです。
2019.1.30 たまごのお粥pixiv投稿作品
1
2
全部の発言がアウト
「ショーターは僕のこと抱きたくないんだ」
「
……
あ?」
この時の僕は自分のことばかり考え下を向いていた。膝を抱え、唇を尖らし、見た目に合うお子様な態度だと笑われても徹底的にいじけたままでいようと思った。
だからショーターの眉根が寄り、声が不機嫌さを帯びていたことに気づけなかった。
致命的に馬鹿なことをしていると知らないまま、僕は拗ねまくっていたのだ。
「だってさ、全然、手とか出してこないし」
手は繋いだ。ハグはした。キスもした。でも、ショーターとつき合って約三か月、それ以上のことはまだだった。別に彼の浮気を疑ってるとか、性的嗜好が僕に向いてないとか、そういうことじゃないのはもちろん分かっているし、彼が僕のこと大事に大切に好いてくれていることを充分すぎるほどに感じている。
でもショーターはそういう雰囲気になっても、何かぐっと耐えるような顔をして、伸ばした手を握り締めて僕を抱き締めるだけに留める。
なんでだ。なぜだショーター。
僕はいつでもきみに抱かれる準備をしているし、抱かれたいと思っているのに。まさかこの気持ちが伝わっていないのか。それとも、やはり単純に、僕を抱きたくないのか。どっちかに決まってる。
「僕はさ、そりゃ痛いのはやだけど、ショーターになら何されてもいいし」
普通こういうのは恥じ入りながら言うものかもしれない、そうした方が恋人として可愛らしく見えるのかもしれない。でもどう足掻いたって言っている本人は僕なので、僕らしく、いじけながらも堂々と言う他なかった。
「抱いてほしいって思ってるのにさ、態度にも、出してるつもりなのに」
こういうのが面倒なのかも。
ふと思って、とてつもない自己嫌悪が襲った。僕のこういう、受け身のくせして文句を言う態度が嫌なのかも。面倒くさくて腹立たしいのかも。
「
…………
僕のこと、抱きたくないなら、言ってほしい」
ちょっと泣きそうになってしまった。
膝に額を擦りつける。隣に座って身動ぎもしないショーターに、ああやっぱりそうなんだなあと悟って、僕は勢いつけてベッドから下り立った。彼が抱きたくないというのなら、僕はそれでもいい。体の繋がりは全てじゃない。けれど少しだけ、ほんのちょこっと、ショックじゃないと言えば嘘になるから、でもそんな姿見られるのも情けないし悔しいから、一刻も早くこの部屋から出ようと思った。
「ごめんショーター、僕ちょっと走ってくる」
そうして一歩ベッドから離れた。
瞬間、右肩の関節が引っこ抜かれる勢いで体が反転し、ベッドが盛大に軋んだ。
ひえ。
何が起こったか分からない。
いや分かる。ベッドに引きずり込まれた。
誰に? ショーターに。
「え、な、あの、」
身を起こそうとしたら、顔の横を風が突っ切ってベッドを揺らし、スプリングが悲鳴を上げた。そろりと視線を顔横にやる。腕だ。ショーターの腕が僕の顔横につき、そして胸元を押されてベッドに背中をくっつけられた。
え、え。えっ。
目を白黒させていると、サングラスを取ったショーターの顔がぐっと近づいてきて、唇が触れ合わないぎりぎりの距離で言われる。
「大概にしろよ」
何をっ?
この時点で初めてショーターが何かとてつもない怒りを抱えているのを理解し、そしてそれは完全に僕が原因であると察したのだが、いかんせんどの発言が導火線に火を点けたのかまでは分からず、謝ろうにも口を動かせばキスしてしまいそうな距離だったため何もできなかった。
がぶり。
そして噛みつくようにキスされた。
おぶわっ。
なんていう妙な悲鳴が僕の口から実際に出た。
出たはいいけど、その妙な悲鳴を出させたショーターに聞こえたかというとたぶん聞こえていなくて、彼の口の中でくぐもって消えた。何故かというと、舌と舌が合わさるタイプのキスをされているので。僕の悲鳴や制止は全てショーターに飲み込まれるか僕の喉であらかた潰されるかのどっちかだった。
歯の裏側、頬の内側、舌の根本、口の中を余すことなく舐め、引っ込んでいる僕の舌を無理やりに引っ張り出してきたショーターは、見たことがないくらい怒っていた。
僕とショーターだって、そりゃちょっとは喧嘩する。
全然怖くないホラー映画だって言ったじゃないか! 嘘つきもう知らない! とか、お前他の男の中華料理は食べられて俺のは食えねえってのか! くっそー今に見てろよ! とか、一時間もすれば仲直りできる喧嘩が主だけど。
こんなのは初めてだった。
「う、
……
ンンッ」
性急に舌を吸われ、口端から唾液が零れる。いつもは飲み下す間を与えてくれるし、こうして彼の服を強く握ると一旦口を離してくれるのに、今回ばかりは更に舌を絡め取られた。
苦しい。ぎゅっと閉じた瞼から生理的な涙が滲んでくる。
どうしよう、どうしよう。
あの懐の深く優しいショーターを本気で怒らせてしまった!
これに僕は大いに動揺し、ショックを受け、いっそ正式な何かの機関に有罪判決を言い渡され罪を償う方法を教えて貰いたくなった。だって分からないのだ。怒っている理由が!
「ァ、
……
んぐ、っ、しょーたー!」
どうにかこうにか口と口の間に隙間を作り、さっと自分の唇を両手で覆う。依然近いままの彼の瞳は不機嫌そうで、眉は顰めていた。
「何」
声も低い。でも一応は僕の言うことを聞いてくれようとしていることに少し安堵し、だからこそ言葉選びを間違えてはいけないと必死に考えた。
何を怒ったの?
僕が気に障ること言ったんだよね。
ごめん、もう抱いてほしいなんて言わないから
……
。
その三文を口に出すべきだと考え至った僕は、はたと疑問を抱いた。
なんでだ。僕は本当は、彼にめちゃくちゃ抱いてほしいんだぞ。
そりゃショーターが抱きたくないなら僕はそれでもいいと思ってる。彼を尊重したいし、嫌なことはさせたくないし、するなら合意のもとしたい。そういうことをさっき伝え、そしてとても(初めてなことに)強引な手つきで引き倒され半ば無理やりキスされた。
つまり、つまり。
――
これはお情けということかっ?
僕は絶句した。自分がそこまで見限られていたことに言葉を失った。手を出してほしいという面倒くさい恋人に、彼は優しさと面倒見のよさから、僕にキスを? 大概にしろってそういうことか? これ以上我儘を言うなと、これでいいだろ、と。そういうことなんじゃないのか。何が、彼の僕に対する好意を充分に感じてる、だ。思い上がりだったんじゃないのか。
……
そんな。
ぐっと喉元まで感情がせり上がってきた。わなわなと唇が震えた。
「英二?」
変わらず機嫌が良くなさそうな呼びかけをしてきたショーターをキッと睨みつける。そして叫んだ。「残念だったなショーター、僕はきみの優しさにつけ入るくらいふてぶてしいんだ!」ぶちゅっと自分からキスをしかけた。ガッと歯が当たった。ぶえっとどっちかあるいは両方が痛みに声を発したが、お構いなしに僕は彼の唇を舐め、上唇を食むと、びたんっとベッドに倒れた。
「もうこれで悔いはないから! 抱いてなんて言わない、きみが嫌がることはしない、でもきみが別れたいって言うまで僕は別れるつもりはないしたまにはキスしたいって言うかもしれないごめんね!」
なんて欲望に忠実な謝罪なんだろう。ほとほと呆れる。
でもそれが僕の全てだった。たとえショーターが僕に仕方なくつき合ってくれていても、それを正直に言葉にされるまでは彼とともにいたかった。好きなんだもの。どうしようもなく。重たさが凄くないか。僕の愛情ってもしかしたら全く新しい重量記号を与えられるほど重たいのかも。申し訳ないショーター。でも好きだショーター。愛してるんだ。
だいぶ泣きそうになりながらもショーターの目を見つめる。いいんだ。僕を放って部屋を出て行っても。ここきみの部屋だけど。分かった僕が出て行くから上をどいてほしい。
「
……
あのさ、」
さっきまでぐつぐつ煮えた鍋のようだったショーターの雰囲気が、真反対に波風立たない湖面のようなものへと一変した。お、お怒りは解けたのかな。びくつきながらも返事する。
「な、なんだい」
「俺とお前の間に大いなる誤解が生じてんのは察した」
「えっ?」
「でもそれはとりあえず置いといてだ。一つ確認したいんだけど」
「な、なんでしょう」
「お前は俺が別れたいっつったら、はい分かったって了承すんの?」
「
………………
」僕は黙った。それから小さく頷いた。「ウン」
「へェ
……
」
部屋の温度が二、三度下がった気がした。ちらりと部屋の窓を見る。別に音もなく割れたとかそんなミステリーなことは起こっていないようだった。ということは。
「なァ英二、俺が今まで我慢して我慢してお前に手を出さなかったことで不安にさせたのは、悪かったと思ってるよ」
「え、あ、うん
……
、んっ?」
「ってことはだ、今からお前を遠慮なく抱きつぶせば、万事解決ってことだよな?」
「
……
ん?」
「お前が言ったんだぜ、俺になら何されてもいいって。痛くはしねえから安心しろ。そんで俺はお前が別れたいっつっても手放す気ないから、もっと安心していい。じゃ、いいな?」
がぶり。
本日二回目の噛みつきキスをされた。
そうして、お食事よろしく僕は彼に食べられたのち(宣言通り痛くはされなかった。が、いっそ痛かった方が色々心身的に優しかったかもしれない。恥ずか死にたい)、誤解を解いた状態で一連の流れを振り返って自分のどの発言がこうさせたのか、今後のためにもよく考えてみた。
駄目だ。全部だ。
改善のしようがないじゃないか! 頭を抱える僕の横で、ショーターはニヤニヤ満足そうに笑っていたのだった。
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