さもゆ
2024-11-14 23:22:51
5857文字
Public BF
 

【ショ英】キス・ミー!/全部の発言がアウト

話の繋がってない純度100%ショ英話、二編です。短いです。

2019.1.30 たまごのお粥pixiv投稿作品

「ショーター! 唐突で悪いけど僕にキスしてくれないか!?」

「おおいいぜ、任せろ!」

 部屋の扉をぶち開け入ってきた英二の腕を引っ張り、そのままの勢いでキスをする。勢いがありすぎて唇同士が強く潰れたが、歯がぶつかるようなへまはしなかった。ズキュウウウン、とありもしない効果音が聞こえた気がしたが、確実に気がしただけである。

 唇を離す。腕も離した。視線が交わる。

 鏡を見ているようにお互い凄い顔をしていると思った。

 これ以上ないくらい眉間に皺を寄せた英二が、「……いや、」首を振る。

「なんでキスしたの?」

 ショーターも首を振った。

「それこっちの台詞なんだけど」

 摩訶不思議な雰囲気が一瞬にして部屋を支配した。



   

キス・ミー!




 とりあえず落ち着こうと開きっぱなしになっていた扉を閉め、二人並んでベッドに座る。窓の外からは日曜工事の騒音が流れ込んできていたが、今はそれくらいのBGMが有り難かった。

 膝に肘をつき、手を組んだ英二が切り出す。

「いくら僕だからって、いきなりキスを頼んだ相手にするのはどうかと思う」

 ショーターも膝に肘をつき、頬杖して言い返した。

「いくら俺相手でも、いきなり部屋入って来てキス頼むのはどうかと思うぜ」

 ちなみに、この間の二人は視線を前に固定し、なんの面白みもない壁を見ていた。

 ドンガンゴン、工事の音が響く。

「確かに僕もどうかしてるかもしれないけど」と英二。「普通はさ、理由とか訊かない?」

「確かにな。俺もどうかはしてる」とショーター。「でも事前に理由言っとくのも普通じゃねえか?」

 お互い一歩も譲る気配がなかった。それもそうなのである。何しろ、お互い自分が正しいと信じ込んでいるので。

「ということはさ」 

 組んだ手の上に顎を乗せ、壁を親の敵の如く睨みつけながら、英二にしては僅かに刺々しい声で言った。

「キスしてほしいって言われたら、誰にでもしちゃうわけ?」

 ついた頬杖の上で唇をへの字に曲げながら、ショーターはサングラスの奥の目を不機嫌に歪めた。

「んなわけねえだろ。そういうお前はどうなんだよ、誰にでも突撃してくのか?」

「そんなわけない」

 即答だった。

 工事音の中黙り込む。壁を睨みつけていた二人は、合わせたように首を振り向けた。眉間に皺を寄せた大きな黒目と、同じく眉根を寄せサングラスに隠れた目が、かち合う。

「相談があるんだ」  

「なんだ?」

「僕はこれからも唐突にきみにキスを頼むかもしれない」

「ああ」

「そこで質問なんだけど、返答次第によっては僕はきみから離れるべきだと思う」

「分かった。質問は?」

「僕はきみに、ショーターにキスされたい、したいという意味できみのこと好きなんだけど、それについてどう思う?」

「馬鹿野郎」

 ショーターは手で顔を覆った。数回咳き込み、発声の練習をしてから大真面目に再度英二に顔を向ける。

「全然構わねえよ。俺もお前のこと好きだからな」

……僕たぶんこれからも本当に唐突にキスしてくれって言うと思うんだけど」

「全部応えてやる。英二なら。お前だけだ」

「マジか」

「マジだ」

 ドゴッ。一際大きく外から音が響いた。奇しくも二人の心臓が急激に跳ね、高鳴ったタイミングと同じだった。

 そこまで真剣に話し合っていた二人は、そろりと視線を外し、真反対に首を向けた。それから思い思いに溜め息を吐き出す。

 じわじわ顔に熱が上ってきていた。英二もショーターもお互いが同じ意味の好意を持っていると日々確信していたが、確信しているだけで何か行動を起こすつもりはなかった。いつか爆発するとは思っていたが。

 つまるところ、ついさっきそれが爆発し、そして二人して余熱にやられていた。

 自分たちは、怒涛の勢いでキスしてしまったのだ。

 ぜひゆっくりやり直したいところだったが、とりあえず、凄まじい脈拍を刻んでいる心臓を案じる方が身のためだろう。二人はしばらく、うるさい工事に感謝しながら、先程までの勢いが嘘のように安静にしていたのだった。