有明
2022-12-07 17:11:39
2982文字
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笛を吹けばまだらの あれこれ

笛を吹けばまだらの げんみ×  専用のお部屋素材あれこれ~。


●ビアス原作からラヴクラフト神話への変遷

※ 有明は「笛を吹けばまだらのが面白かったから、ちまちまと原作を読んでシナリオ理解を深めようとしている」程度のにわかなので、以下の解釈は盛大に間違っている可能性があります ※

・アンブローズ・ビアス
「ハスター」というかみさまの名称は、この『羊飼いハイタ』が初出だそうです。
シナリオにも記載があったように、作者はアンブローズ・ビアス。この時点では、ハスターは「温厚な羊飼いの神」です。

日本ではあまり翻訳されてなくて、『羊飼いハイタ』も、書籍では古くて分厚い全集にしか収録されてないらしいのですが、青空文庫にもありましたし、現代の文章っぽくして読みやすく翻訳されたものがpixivにもアップされています。読み比べると、微妙に流れというか解釈が違っていて面白いです。
10分程度で読み終わるごくごく短い短編なので、お時間あるときに是非~! 童話というか寓話みたいな話でした。


・ロバート・W・チェイムバース
ビアスの『羊飼いハイタ』と『カルコサの住民』という短編ふたつを読んだロバート・W・チェイムバースという作家によって、『黄衣の王』という小説シリーズにて「カルコサ神話」として発展しました。そこでハスターは「星」「恐怖」といった新しい味付けをされます。
翻訳だと、読みやすいのは大瀧啓裕さん翻訳の創元社推理文庫の『黄衣の王』だと思う。黄衣の王をメインモチーフに据えた4編を抜き出した短編集で、解説も豊か。

この作品群の中でキーワードとなるのは、ふしぎな戯曲『黄衣の王』。読んだものを狂気に陥れる戯曲です。なんでか一般流通されてる設定ですが、「まともなカトリックの者なら決して読まないだろう」と主人公たちも言ってるほど。
そんな戯曲に、何故かハスター様が登場します。ほんとになんで???
(正確に言うと、作中、戯曲台本がそのまま描写されることはほとんどないので、ハスターという言葉が直接出てるのかは不明。ただ、戯曲を読んで狂ってゆく人間が「黄色の衣を来た黄衣の王、ハスター」を幻視したりしてるので、たぶん戯曲の中にそうして名前が出てるんだと思う? このへん、読み解きが合ってるのかもわからない。黄衣の王とハスターを同一視していいのかも微妙。「明言されてないけど示唆してる」ような気はするのだけど、翻訳によるかも)
元々、自作を関連付けるのが好きな作家(ある作品の主人公が作った彫像が別作品でさらっと描写されてたり~が多い)なので、関連作を網羅して俯瞰的に解釈するのがちょっと大変で、このへんふわふわです。
ただ、ハスターさまにホラーの文脈を付与したのも、そうして「ハスター」という名前を一躍有名にしたのも間違いなくこの男なので、功罪が大きすぎて有明は歯噛みしています。謎めいたかみさまとして魅力的に描いてくれたのは確かだけれど、信仰が明らかに歪んでいるんだよなあ! ひつじどこいったよ!!


・クトゥルフ神話
ビアス、チェイムバースという偉大な先達たちの設定を使用し、独自解釈を加えて、ラヴクラフトが『闇にささやくもの』にて、ハスターを「邪悪な人間たちに崇拝される謎めいた存在」として描きました。
それを更に、ラヴクラフトの友人であるダーレスが味付けして「名状しがたき風の神」※ としてキャラクターを確立させ、リン・カーターがビアスの原作になぞらえて「クトゥルフ世界のハスターも羊飼いの神」という設定を加えたのだとか。

 ※「神々に風や土といった属性がある」設定は、クトゥルフ神話TRPGでは採択されていません。(7版基P,24) ただ、ダーレスを愛するシナリオライターであれば、その設定を付与して神々を描いたシナリオもあるかもしれません。

……そう考えると、「笛を吹けばまだらの」は、いろんな作家たちに愛された神「ハスター」の原点に触れたと言えるのだと思います。
あと、「その者の解釈によって姿を変え続けたハスター」という題材を、そのままシナリオに落とし込んだのすごい。


・クトゥルフ神話TRPGとして

・6版 基P.224、マレモンP.235
神格としてのハスターは基本ルルブに掲載されています。なんかよくわかんないけどよく信仰されてるよ!というあいまいな記述をされている。そうだね。
クリーチャーとしての黄衣の王は、サプリの『マレウス・モンストロルム』P.238に、ハスターの化身のひとりとして記載されています。
戯曲(を描いた、読むと発狂する書物)としての黄衣の王は、基P.107に記載があります。

・7版
神格としてのハスターは、7版だと基本ルルブには掲載されていません。『マレウス・モンストロルムvol.2 神格編』にはいるらしい。
ハスターの化身としての黄衣の王のほうは何故かP.318に載ってて、イラストも細身で素敵です。
魔術書としての「黄衣の王」はP.224に記載がある。


わたしはチェイムバースもクトゥルフ神話原作も読み切れてないので、「クトゥルフ神話TRPGは原作群のどこをどう解釈して、ハスターや黄衣の王をクトゥルフ神話TRPGのクリーチャーとして落とし込んだの?」は掴み切れていません。読むたび「このかみさまのことなんにもわかんねえ~!!」と投げ出している。
そして、「黄衣の王そのものがかなり曖昧に描かれてるので解釈むずかしいよね」という設定面を逆手に取ったり、そのへんの面倒さを排して、「ハスター = 黄衣の王」として描いてるシナリオライターも多いと思う!笑

わたしはもともと、(たぶん小説かなにかで?)「羊飼いの守護神としてのハスターさま」がインプットされていたこともあり、この「ハスターさまは怖いだけのかみさまじゃないよ」を主張できるこのシナリオが大好きです。もっと会いたい、ひつじに囲まれてるハスターさま。