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seika_ashe
2024-11-11 12:36:36
4456文字
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巻き込まれる可哀想な双鶴
続きなのかこれは………?
1
2
・
・
『アーッハッハッハッハッ!!!それでまんまととっ捕まったってわけですか、お気の毒に〜〜〜〜〜!!』
『ウエッヘッヘッヘッwww腹痛ぇwww』
『ヨッ!!双鶴の便利屋!!!』
「
……………………………
」
端的に言おう、最悪である。
急な予定変更となると、必然的にこうして職場に連絡せざるを得ない。一日で片がつく案件なら良いが、あの四宮椿が態々此方を(罠で釣ってまで)呼び出したとなると良くて夜、下手すれば翌日までかかってもおかしくない。そうなったら迷惑がかかるのは職場なので、その旨を電話で伝えたのだが
………
案の定、同僚の不幸と失敗で飯が美味い職員室の面々がここぞとばかりに通話越しで騒ぎ立てる。
『大体貴方態々いとしま特区まで行っちゃうからそうなるんですよ馬鹿ですね〜〜!!』
「うるせぇそれはもう何回も思ったよ!!」
日頃浅葱と共に厄介事に巻き込まれるはずなのに、こういう時ばかり高みの見物なのだから腹が立って仕方がない。俺と一緒に巻き込まれるのがお前の役目だろ、などと理不尽極まりない文句を通話越しに叩きつけてやる。人間ドックの結果に『貧血』の文字を踊らせておきながら、改善するつもりもない奴に言われたく無いのであった。
『まあ腹を括ったら如何です?巻き込まれるのはいつもの事でしょうに』
「それはそうなんだが
…………
!!」
『何です?歯切れ悪いですね。さては俺がいなくて不安とか!仕方ないですね〜〜通話越しで俺がサポートして差し上げますよ、と、く、べ、つ、に!』
「要らん!じゃあな!!」
勝手に己の自尊心に都合の良いように会話を繋げ始めた(超不本意ではあるが)バディに対してピシャリと否定の言葉を放ち、浅葱は通話を終了してついでに同僚たちの電話を片端から着拒し始めた。こうしておかないと好奇心の塊たる彼らはひっきりなしに電話をかけてくる。調査中にまでやられたら集中出来ず、早く片付くものも片付かないのだ。
数分後、一先ず無駄な電話を寄越しそうな同僚は全員着拒し終えた浅葱は深く長い溜息を吐き出した。
歯切れが悪い、と言われたことに関しては浅葱も自覚がある。何せ、椿に言われて向かった心臓血管外科、彼女の居室に居た『御守艘夜』という男が只者では無かったのだから。
***
「
……………………
」
「
…………
あの、何か
……
」
椿の居室にて待ち構えていた彼は、一見すれば普通の男性に見えた。色味が若干日本人離れしてはいたものの、浅葱自身大概日本人離れの見た目をしているため「そんなものか」で片がつく。ただ、どうにも引っかかった。椿が態々『怪異調査』と銘打って集めたからには、幻想やらに多少なりとも知見があることはわかっている。感じ取れる雰囲気が、常人のそれと違うこと、それ自体に違和感は無い。幻想に触れる奴らは、己含めて頭のネジが一本以上どこかに飛んでいる。
だがそれにしたって、何かがおかしい。
浅葱は幻想種にも、魔術師にもそれなりに関わって来た嬉しくない自負がある。陰陽師にもだ。ただ目の前にいる『御守艘夜』という男は、そのどれでも無い雰囲気を纏っている。椿が知見のないものを態々巻き込むとも思えず、かといって何が目の前にいるのかわからなくなった浅葱はソファに腰掛けて艘夜を見つめたままこうして動かなくなってしまったのだ。
「
……………
失礼。疑り深い性分で。
……
双鶴浅葱と言います。貴方と同じように四宮椿に呼び出されて、ここにいる、一介の教師です。どうぞよろしく」
つらつらと自己紹介をしつつ、浅葱は艘夜を穴が開くのでは無いかと思う程見つめる。正体を看破するのが得意な浅葱ではあるが、狐の窓などの術を使わないとなると時間がかかるのだ。目に意識を集中させて、目の前の男をただひたすらに見つめる。
「教師、ですか
……
私は御守艘夜、物書きと、あと探偵の真似事のような事を
……
」
なるほど探偵か、と口に出さず思うに留めて浅葱はさらに目を細める。
この国に居る探偵には、『あちら側のもの』を探る専門のものも中にはいる。数はかなり限られるが、そうであるなら呼び出されても違和感は無い。
……
ただ雰囲気が、?
「っ、はぁ!?」
「!?あの、大丈夫でしょうか
……
」
思わず大声を上げて、浅葱はもうそれは綺麗に、字義通り、椅子から転げ落ちた。
チカチカする視界の向こうには、心配そうな、そして怪訝な顔をした艘夜。だがもう浅葱は、彼の『正体』を見てしまった。見えた正体が、とんでもないものだということも。
四宮椿あの野郎、とんでもないものを寄越しやがって、と呻くように呟いた後、立ち上がりながら叫んだのだった
「なんっっっっっで原生神秘がこんな所に居るんだよ!?!?」
「!?!?」
今度は艘夜の方が驚いて後ずさった。出会って数分の男に叫ばれて後ずさらない方がおかしいのだが、それでも浅葱は叫ばずに居られなかったのである。
幻想とも魔術師とも雰囲気が違ったのは当たり前だ。何せ『原生神秘』はそれらと一線を画す存在なのだから。
……
そして、こんな所にホイホイ居ていい存在でも無いのである。浅葱だって、一生お目にかかる機会は無いと思っていたのに。
「
………
特殊な事情で。今回の事件も解決に、尽力するつもりはあるから
……
」
「
……………
はあーー
……
いや、良い。いきなり大声を出して済まない。其方の事情がどうであれ、貴方が協力する意思があるから構わない。
………
四宮椿には、後で文句を付けておく
……
」
ゔぅ
……
と胃が痛そうな呻き声を発しながら、音がした方、開いた扉の向こうから顔を覗かせる馬子へ視線を寄越したのであった。
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