seika_ashe
2024-11-11 12:36:36
4456文字
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巻き込まれる可哀想な双鶴

続きなのかこれは………?

登場人物

双鶴浅葱
妖狐の血を祖先から引く人間。高校で国語(主に現代文)を教えている。実は母が英国クォーターなので英系の血も持ってたりする。
大層な苦労人で、今回東医には人間ドックの再検査に来た………はずだった


四宮椿
東医で働く『医学における万能の天才』と称される才媛。
浅葱とは面識があり、浅葱からの女性嫌悪は少ないものの、それ以外の諸々でかなり辟易されている。浅葱を人間ドックの再検査に呼び出した……のだが?


御守艘夜
小説家、ライターの傍ら探偵の真似事もしている男性。
四宮椿に呼び出され、東医を訪れている。
何か秘密があるようで……






__東都医科大学病院 消化器内科待合


「はあ……………

胃が痛そうな顔をして、その男__双鶴浅葱は何度目になるかわからない溜息を吐き出した。
だが何度溜息を吐いたところで、今持っている紙……人間ドックの結果、消化器系の欄に踊る『再検査』の文字が消える訳では無い。悲しい事に、浅葱自身再検査になる要因に心当たりしかないためこうして大人しく、普段の勤務地から離れた東都医科大学病院に足を運んでいるのであった。

受付はしたはいいものの、再検査は手間もかかるし何よりシンプルに人が多い。大学病院のような規模のある病院だとこれがあるから嫌なんだよ、と心の中で悪態をつきつつ持ってきた本を開く。今日はどうせ一日フリーであるし、時間は幾ら押そうが構わない点に関してだけは懸念が無いのが幸いだ。さっさと検査を終わらせて、英国街あたりで美味しいスコーンでも食べて帰りたいところ。

………だがしかし、大抵の場合において浅葱の願望は叶わないどころか、厄介な方面に転がりがちなのである。

「やあ双鶴浅葱。矢張り此方に居たな」

頭上から降ってきた声に、浅葱は辟易した表情をして本から顔を上げる。何でお前が、と言いたい所だがそもそもここは彼女の職場だ。いやしかし彼女の所属は総合診療科だか心臓外科あたりだったはず。ならば消化器内科の待合に現れた理由は検討つかず、感想は矢張り何でお前がに帰結するのであった。

…………何の用だ四宮椿。生憎、俺は胃カメラの再検査待ちだ。雑談に付き合ってる暇は無い。暇潰しがしたいのであれば、咲良さんや大河さんあたりに構いに行け」
「ああその再検査の件だが、元から必要無いぞ」
「は?」
「随分荒れてはいたが、ストレス性で片付けられる範疇だった。再検査はお前を呼び出す為に私がでっち上げた」
「は????」

おまえは何を言っているんだ、と言いたげな顔で浅葱は目の前の椿を見上げている。ここが公共の場で無ければ、一も二もなく椿に掴みかかっているところだ。怒りのやり場無く、ただ抑えきれなかった怒気が表情に表れる。
貴重な有給休暇を消費して足を運ぶ事も、再検査だと思えば『仕方が無い』で片付くがそうでないとなれば話は別だ。わざわざ自分を探しに来た点を考えるに、予想出来る事柄は想像がつく。

「喜べ、お前の好きな怪異調査だ」
「断る!あと好きでもない!!大体俺を呼び出さなくたってお前も咲良さんも大河さんもいるだろ!!」
「残念な事に私は今日の夕方にはシアトルに飛ぶ。無論、咲良もカレンも同行だ」
「何で俺なんだよ!他にいなかったのか!?」
「お前が一番呼び出すのが簡単そうだったからな。案の定、再検査と言えばこうして来たじゃないか」
「再検査だからだよ!!!!」

限りなく抑えた声でありながら叫ぶという器用な芸当を披露しつつ、浅葱は頭を抱えた。こんな事になるなら再検査は近場の病院にするべきだった、と今更すぎる後悔に襲われるが恐らくそうした所で今度は別方向からアプローチされるに決まっている。何にしろ、浅葱に残された道は四宮椿の頼みを大人しく受け入れる以外に無いのであった。

…………はあ……いや待て、お前も居ない、咲良さんも大河さんも居ないとなるとまさか俺一人で解決しろなんて宣うんじゃ無いだろうな」
「流石の私もそこまでの無茶は言わない。協力者は用意してある。最も、力だけで言えばそちらの方がお前より上で、ついでに言うなら主に解決に動くのも其方だが」
「じゃあ何で俺を呼んだんだよ…………帰らせてくれよ………
「それはお前が怪異に造詣が深いからだ。わざわざ言わせるな」

浅葱はあぁクソ、と胃が痛そうな顔をして手で顔を覆う。これでは再検査の必要が無かったのに、今この瞬間胃に穴が2つ3つあいてもおかしくない。嬉しくない確信である。

…………協力者は何処だ、名前は」
「漸く働く気になったか」
「教えてやろう四宮椿。これはお前の話が通じないから諦めた、と言うんだ」
「失礼な物言いだな、それでも国語科の教員か?……協力者なら私の部屋にいる。心臓血管外科だ。御守艘夜と言う」

あぁそうかよ、と投げやりに返事をして浅葱は消化器内科の待合椅子から立ち上がり、心臓血管外科の方を目指して歩き出した。……道すがら、椿の監督者たる市ノ瀬咲良に『おたくの問題児が厄介事を押し付けてきた』という小言を送り付けて。