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ミズト
2024-08-11 14:32:49
2804文字
Public
二次元版権二次創作
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最強勇者は恋愛初心者
主クク(未満)短文。言われなきゃわからん程度のCP成分。
その日も勇者一行は新しく押し入った家の中を物色していた。
よどみのない動きで壺を叩き割り、壁に掛けられた袋を探り、本棚を調べる。
エイトがちいさなメダルを見つけて顔を綻ばせ、ヤンガスが不味そうな表情でうしのふんを袋に入れ、ゼシカがまほうのせいすいをガブ飲みしている傍ら、本棚の前で本を開いていたククールが不意に口を開いた。
「あなたの目の前においしそうなリンゴがひとつあります」
天は何物を与えるのか、容姿のみならず声まで格好が良いククールの、その声にそぐわない突拍子もない文章に三者は振り向いた。
「あなたはそのリンゴを食べたいと思っていますが、他にもそのリンゴを食べたがっている人がいます。あなたはどうしますか?」
「問答無用で奪うでがす」
「突然何なの?」
「
……
」
「ヤンガス、これ選択肢あるからとりあえず先まで読ませろ。なんか心理テストの本っぽい」
「何をテストするのよ」
「まぁまぁそれは答えてからのお楽しみってことで。いち、自分一人で食べる。に、他の人と分け合って食べる。さん、他の人に譲る。さぁどれ」
「問答無用で独り占めでがす。あっでももちろん兄貴が欲しがったら全部譲るでがす」
「私は分け合って食べるかなぁ」
「
……
三」
「アンタも選びなさいよ」
「いや、俺は先に答え見てるから。だからこの心理テスト出してるわけだから」
「はぁ〜?
……
んで何がわかるの?」
「このテストでは、好きな人に対するあなたの態度がわかります」
「くだんな」
「どうでもいいでがすね」
「
……
」
「なぁお前ら、せっかく若い男女が、あーヤンガスは若いかどうかわかんねぇけど、こうして一緒に世界を旅してんだぜ!? もっとこうさぁ! ドキドキとか! 遊び心的なものがあってもいいんじゃないのか!?」
「そんな明るい動機の旅じゃないでしょ」
「兄貴の故郷を救わないとでがすしね。あとアッシはピチピチのヤングマンでがす」
「
……
」
「卑怯だろ! このタイミングでシリアスな話を持ち出すのは!」
にべもなく会話を断たれ苦し紛れに喚く姿に、三人は同時に小さく吹き出した。ククールをおちょくり倒して満足したのだろう。ゼシカが続きを促す。
「はいはい。で? 結果は?」
「まず自分一人で食べる、ヤンガスだな。好きな人に対して素直に愛情を表現するタイプ。ちょっと独占欲が強いかも。ほんとかこれ?」
「まどろっこしいのは嫌いでがすからね! 我慢は性に合わないでがす。でも、相手を独占するなんて器の小さいことはしないでがすよ」
ふん、と鼻を鳴らして堂々主張する。しかし好きな人にやきもちを焼くヤンガスはけっこう可愛いのでは、とエイトとゼシカは想像して、なんとも言えない柔らかい気持ちになった。そんな光景は想像したくもないククールはさっさと続きを読む。
「次は分け合って食べる、ゼシカだな。恋人に対しても家族や友人のような態度で接する、公平で隠し事をしないタイプ、だって」
「ふーん。そう言われればそう思うけど、誰にでも当てはまるんじゃないの?」
「それを言っちゃおしまいなんだよなぁこういう遊びに。最後は他の人に譲るエイト
……
。好きな人に対して素直になれないタイプ。愛情の裏返しでついついそっけない態度を取ってしまい、相手に誤解されることが多い。
……
そんなイメージないけどなぁ」
「確かにねぇ。エイトにそんなひねくれたところあるかしら?」
「兄貴の男らしさを言い当ててるのかもしれないでがす。言葉で多くを語らず、背中で愛を語る。そのクールな態度が冷たく思えてしまう
…
的な」
「お前はいつでもエイト全肯定だな」
「他にはどんな心理テストがあるの?」
エイトが一言も喋らずとも、他の三人は軽快に会話を進めていく。慣れ親しんだ仲間同士の在り方だ。話したいことや必要なことがあればエイトはきちんと伝えるし、三人のかしましさはエイトにとって心地良い波音のようであり、三人もそれを承知している。だから無理に会話に加えようとするわけでも、気を遣って放っておくでもない。敢えて言葉にすることはないが、皆この旅の同行者達が好きだった。
それからしばらく心理テストの本で遊んだ後。
「この家はあらかた探り終わったかな」
エイトの言葉に、一行は家の玄関に向かって歩き始める。
「兄貴はアイテム探しの鬼でがすからね、やくそうひとつ残ってないでがしょう」
「メダルで何か交換できるといいわね」
「家でも街でも森でも海でも、隅から隅まで探索しないと気が済まないとは。キングオブ寄り道の名は伊達じゃねぇな」
ククールが軽口を叩くと、すかさずエイトがすれ違いざまに剣の柄でククールの頭を小突いた。
「ってーな! 何すんだよ!」
「いやなんか
……
悪口言われた気がして
……
」
「ヤンガスだって似たようなこと言ってただろ! 鬼とかなんとか!」
「ヤンガスのは悪口じゃないだろ」
「もちろんでがす。素直な称賛でがすよ」
「ほら」
「ほらじゃねーよ! 今更だけど、お前絶対俺にだけ当たりつえーよな!?」
「日頃の行いのせいじゃないか?」
「日頃の行いのせいでがすね」
「日頃の行いのせいね」
「なぁオレいじる時だけ見せるその連携なんなの?」
わいわい騒ぎながら村の入り口へ戻る。エイトはすぐさま、一行を待っていた王と姫の側に侍り、待たせた非礼を詫びる。
「王、姫、お待たせしてすみません」
「気にするでない。今日は天気が良いからな、ワシも姫もちょっとお昼寝しておった」
「それはようございました。新しい錬金レシピを入手したんです、後で試してみましょう」
「おお! 何が出来るか楽しみじゃな」
「姫、村の市場で美味しい果物が売っていましたので、お土産に買ってまいりました。トロデーン地方では見たことのない珍しい果物ですよ。試食したので味は保証します」
甲斐甲斐しく二人に声を掛けるエイトを眺めながら、ククールはやれやれ、と肩をすくめる。いっそ清々しいほどの態度の違いだ。恩人でもあり忠誠を誓う対象である王と姫、かたやただの旅の同行者である自分とでは、扱いに差があるのは当然のこと。エイトもそれを隠してはいないし、こそこそと嫌がらせや贔屓をするような、悪意による陰湿な類のものではないから、不快に感じたことはない。むしろ、目標を同じくする旅の仲間に、馬鹿丁寧に扱われる方が不気味だ。だからククールはただ、村の家で読んだ心理テストの本を思い出していた。
(好きな人に対して素直になれない、なんて、どこがだよ。ゼシカの言う通り、誰にでも当てはまるようなそれっぽいこと書いて濁してんだな、ああいうのは)
まぁ暇潰しにはなったしいいか、と考えていたら、何ぼーっとしてるんだ行くぞ、とエイトから雑な声が飛んできて、ククールは長い脚を軽く駆けて馬車に追いついた。
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