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普賢のまわりの人たち
泉の女神
あとしまつ後の伏羲S(太公望&王天君)珍道中極短編です。仲良く喧嘩しながらうまくやっていってほしい。
「困ってないなら、それでよかったんじゃねえの?」
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「どうです、いい話でしょう」
老人は自信満々に胸を張り、男はしばし考え込んでから「それがこの泉」と指した。
「そうです、どんな日照りでも涸れぬ泉です。いまではわが村の一番の観光資源です」
なるほど、と男は唸った。たいていの人はありがたい、あやかりたいと手を合わせるのに、男はなにやら神妙な面持ちで泉を見つめている。
「泉が涸れて困っているだろう」というので、てっきり奇跡の逸話を聞きたがっていると思ったのだけれど、どうやらそうではなかったらしい。
「他になにかご用でも。そうそう、この水のおかげでよい酒もできるようになったので一杯どうです?」
いや、けっこう、と男は首を横に振った。
「困っていないのであればよかった。みなのしあわせを願っておる」
(ほらみろ。行っても遅かったじゃねえか)
村を去りながら、胸の内で嘲笑が聞こえた。男は口をへの字にしたまま「うるさい」と呟く。もうすっかり春なのに、冬を引きずって戻ってきたみたいな漆黒の衣で、それだけでも目立つのに、なにやらぶつぶつ口にしているので、すれ違う人たちはみなそっと目を逸らした。
「泉が涸れて困っている村がある」と耳にしたのはすこし前のことだ。ならばなにか役に立てるだろうと、そちらに足を向けたのだが、自分の中の「もう一人」が「いまさら行っても遅い」と口を挟んだ。
何年も人々を悩ませたものが、そんなに簡単に解決するはずがないと信用しなかったのだけれど、はたしてこうして簡単に解決していたのだった。地球と同化した妲己はそんなことはとっくの昔にお見通しで、こうして気まぐれに出没してはあちこちでちやほやされていることを、王天君は知っていたらしいのだけれど、それならそうとはっきり教えてくれればよかったのに。
「わしの出番を奪うとは
……
おのれ妲己」
「いや、だから言っただろうが」
ま、それでも。
「困ってないなら、それでよかったんじゃねえの?」
「あーよかったよかった。わしもちょうどこのあたりに行ってみたかったのだ。なにせここは桃の産地であるというし」
喉の奥で笑うと、聞こえないふりをして、彼は青く澄んだ空へ大きく伸びをした。
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