ちこと
2016-08-21 23:34:11
969文字
Public poke小説・SS
 

無題

2016年に開催したゲコサト絵チャにて、チャット欄でぽつぽつと打ち込んだ短文2本のログです。

【1】

……っくし」
 外の吹雪が徐々に穏やかになってきたころ、サトシがひとつ、くしゃみをした。
「こうが?」
「ん、平気。ちょっと寒くなっちゃって」
 へへ、と鼻の下をこすり、肩をすくませる。上着を着てきたのだからだいじょうぶだと思っていたが、吹雪の中を立ち回って、さすがに体が冷えてきたようだった。
 両の手を二の腕にやり、無意識にさする。すこし震えるサトシの肩に、やわらかいものがそっと触れた。
「あ、」ゲッコウガ、と言う間もなく、長い舌がサトシの肩を引き寄せる。勢いのまま、サトシの頭は、ゲッコウガの胸にぽす、と落ちた。
「ゲッコウガ?」
「こうが」
 そのまま、サトシの背にゲッコウガの腕がまわる。「こうが」あやすように、ゲッコウガの手が、サトシの肩や背をさすった。
 ゲッコウガの体温が、常よりも温かく感じられる。ゲッコウガの意図を察して、自然とサトシの笑みがこぼれた。
「だいじょうぶだって」
 言って、体勢を戻そうとするも、ゲッコウガの腕に力がこもる。ぐ、と抱きよせられ、さっきよりもいっそう、サトシはゲッコウガに包まれた。
「ゲッコウガ」
……こう、こうが」
 そのまましばし、ゲッコウガは動かなかった。不自然に落ちてきた沈黙が、むしろ、ゲッコウガの気持ちを雄弁に語っているようで、それきりサトシは、なにも言えなかった。