しちろ
2023-07-17 11:30:10
3874文字
Public LOM・連載主人公の短編
 

ふせったーまとめ

ふせったーの小ネタ集。ほぼW主。3900字。

アレクサンドルと男主人公。宝石泥棒編後にもし再会したら。


無題

 月夜の町での、思わぬ再会だった。
 赤い帽子の珠魅の英雄と、商人の姿を偽った元宝石泥棒。ほぼ同時に互いに気付き、互いに見なかったことにしたかったがそういうわけにもいかず、なぜかこうして酒席を共にする羽目になっている。
「あんたには一度聞いてみたかった」『悪魔のぼったくり亭』の隅の席で、赤い帽子の少年は、そっぽを向き頬杖をついたまま聞いてきた。「『仕事の前』には、なぜ『あれ(予告状)』を?」
「『プロ(警察)』みたいなことを聞くんですね」
 行儀の悪い同席者に対し、こちらもどこやらわからない場所に視線をやりながら、商人風の青年は肩を小さくすくめてみせる。「ああ、まあ、なんというか……貴男が他人のそういうことに興味があるとは、意外で」
 青年はうそぶきながら、杯をちろりとなめた。酒場のマスターが勧める今年のシュタインベルガーは例年以上に出来がよく、極上の味わいである。
「昔の習慣でしょうか。夜になるとつい出したくなるもので。それに、決まったターゲット集中的に狙われているとなれば、より情報が集まりやすくなるので好都合でした。ラピスの彼のように、仲間が釣れることもありますしね……信じてませんね、その顔は」
 そうでもないけど、とつまらなそうに言いながら、少年はつまみのドライフルーツを口に放り込んだ。お好きならこちらもどうぞ、と青年が自分の分を差し出すが、断られる。
「貴男もしかして、私がどこかで『誰かに止めてほしい』と思ってるんじゃないかとか、考えていなかったですか?」
……まさか」
 そうですか、とこちらも信じていないような顔で言い、青年は少年の前のグラスを指さした。杯は口をつけられることもなく、なみなみと満たされたままだ。
「ところで貴男、一向にすすんでいないようですが。せっかくの新物なのに」
 一応、再会を祝し……(まったく祝してもめでたくもないが)青年がおごったものなのだが。
 やっぱりもらうと、少年は、青年の前の小皿を引き寄せて干しナツメをつまみ上げた。
「飲んで帰ると弟子がうるさい」
 意外過ぎる理由に、青年が軽く噴き出した。
「なにか?」
「いえ。貴男、見た目の印象よりけっこう甘ちゃんだなと思っただけです」