Hizuki
2018-08-22 12:44:00
5321文字
Public
 

愛しき人を迎えに

【グラブル】ジクグラ。2人の結婚式の話。ドイツの結婚式の余興より。フェードラッヘ城内の捏造あります。元の国の慣習に倣って指輪を右手にしています。攫われた大切な人を探しに。



俺達が結婚式を挙げるのに選んだ場所は、フェードラッヘだった。
その場所を提案してきたのはグランの方で。
理由を聞けば、俺の馴染みのあるところにしたいという何とも簡単な理由で。
フェードラッヘにすれば先にカール王にも報告できるよね、と後日報告に行くつもりでいた俺の心を読んだように告げた。
更に『自分の故郷は特に何もないから』と付け加えたのは照れ隠しだったのだろう。
式とは言っても盛大なものではなく、小さな教会で誓いの言葉を交わすことができればいいと、そう思っていたのだが。
カール王の元に報告に上がったことでその思惑はあっさりと崩れてしまった。
我が国の英雄の慶事なら城の礼拝堂を使って欲しいと言われ、ならばそれに見合う服をと仕立屋に連れ出され、あれよあれよという間に準備が整えられていった。

大事になってしまったな」
うん」

2人で顔を見合わせて噴き出す。
仲間が駆け回っている間に手持ち無沙汰になった俺達は街中の広場の長椅子に並んで座っていた。
自分達の式だというのに、予想以上のことになってしまい、その様子をどこか遠くから見ているようになってしまった。

「グラーン、どこですかー?」

ルリアがグランを呼ぶ声がする。

「いた!ジークフリートさんも一緒だったんですね!」
「どうしたの、ルリア?」
「確認したいことがあるから来てほしいんです!」
「うん、わかった。行ってくるね」

俺の隣から立ち上がると、ルリアに手を引かれて離れていく。
2人に手を振って去っていく背中を眺めていると、今度は俺の方に用事があるらしい人物が姿を見せた。

「パーシヴァルか」
「主役がどこにいるのかと思えばお前の式なんだぞ」
「ああ、分かっているが」

はぁ、と深い息が吐かれる。

行くぞ。お前がいないせいで話が進まん」
「それはすまないな」

そうは言っていてもパーシヴァルの顔は普段よりも穏やかで、小言もやや柔らかく聞こえる。
そしてグラン達とは逆方向に歩き出す、かつての副官の背を追った。





式は厳かな空気の中で滞りなく終わり、場所を城の中庭に移していた。
お披露目の立食形式のパーティとして、式に参列できなかった者を含め団員のほとんどがそこに集っていた。
とはいえど、皆の装いが違う程度で、それはほとんど艇の上で催される宴会と変わらない。
酒を空けて騒ぎ、普段よりも豪勢な食事に舌鼓を打ち、挨拶に回れば祝福の言葉を受け。
そして料理の皿が半分ほど平らげられた頃、それは起こった。

「じゃ、そういうことで!行くぜランちゃん!」
「ああ!ジークフリートさん、すいません!」
「え?」
「ん?」

姿を見せたヴェインがグランの身体を担ぎ上げ、ランスロットが俺に向けた謝罪を口にした。
あまりに突然の出来事に何が起きたのか理解が追い付かない。
ただ一つ確かなのは、隣にいたはずのグランの姿がないということだけ。
ランスロットとヴェインも姿を消している。
俺以外の状況を知っているらしい者達は笑いに包まれていて。

「あの2人、一体何を
「フェードラッヘの結婚式における伝統的な余興だそうだ」
「ふむ?」

俺の疑問に対しパーシヴァルが口を開いた。
口ぶりから察するに2人がこうすることを知っていたようだ。

「新郎側の旧友が花嫁をどこかに隠すというもので、さしずめ今のお前は花嫁を攫われた哀れな花婿、と言ったところか」

珍しくパーシヴァルの口元が緩む。
そう言われれば騎士団長だった頃、部下の結婚式の場で同じような光景を見た記憶がある。
部下の友人が花嫁を攫って式場から出ていく光景を。
更に言うなら街に飲みに出た時に白いドレス姿の女性と数名の男が店に入ってきて、楽しそうに酒を開け始めたのも。
しばらくして店に飛び込んできた正装の男が店内の客全員に一杯ずつ振る舞ったことも。
その男はドレス姿の女性の夫になる者で、振る舞われた酒は花嫁解放のための身代金代わりだと聞いた覚えがある。

「大抵はどこかの酒場に逃げ込むのだそうだが、今回に限って街中はない」
「となれば城内のどこかということか」
「流石にあの2人がどこに連れて行ったかまでは知らんぞ」

グラン達がこのフェードラッヘという国に足を運んだ時は何かしら問題が起きた時と重なっていた。
ゆっくり中を見る余裕はなかっただろうから、それこそ色々見て回っているかもしれない。
現騎士団の団長と副団長たる2人が一緒である以上、城を離れて長い俺が知らない場所もあることだろう。
となると尚のことどこにいるのか見当もつかない。

「ならばしらみつぶしに探しに行くだけだな」
「俺も付いていこう。ちゃんと大切な者を見つけられるかどうか、な」

2人が走り去った城内へ続く扉へ向かう。
応援とも野次とも取れる声を背に受けながら。