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mishiadd
2024-10-21 19:11:08
1352文字
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宮本伊織は生きにくい:スクランブル・エッグ
【「ない話」Lv.100】「オーバーイージー」続き。来るところまで来てしまった剣鬼さんとセイバーの可惜夜。
オーバーイージー:
https://privatter.me/page/67151a66e4dfe
「ほら、やっぱりだめだっただろう」と伊織は言った。
「やっぱり俺ではだめだった。どんなに模そうとしても、俺はあいつにはなれなかった。
――
俺は、ここに至ってしまった」
◆
誰も彼もを斬り伏せる、と伊織は言った。
その為だけに生きている
と。
セイバーは何も言わなかった。やがて、一度だけ軽く肩を竦めた。うっすらと優しい笑みを浮かべて、言った。
「以前から思っていたが、きみは随分露悪的だな」
「そしておまえはそうやって俺の話を聞かずに適当にあしらうな。真面目に取り合わず、
なかったこと
にする。
――
残念だったな? おまえの好きだった方の俺じゃなくて」
「私がそんなことを言ったか?」
「ああ、言ったとも。俺は
優しくない
。おまえが好きだった『日向の如く穏やかで人の道を尊ぶ』俺ではない。そいつはもういない。奇遇だな、俺もあいつが好きだったよ。俺自身のことよりも、いくらか」
セイバーが目を伏せる。それから、目線をあげて改めて伊織を見た。
「私が、もうひとりのきみを最初に好きになったのは事実だと思う。彼は
綺麗
だったから。きっと、きみが綺麗にしてあげていたんだと思う。あまりに眩くて、正しくて
――
私は、彼に憧れもした」
日向のように穏やかで、あたたかくて、優しくて
――
。
「でもそれは、
そうではない
きみが、そうあろうとして見せてくれた姿だったから。きっと、私ときみは似ていた。
そうではない
ものに憧れて、そうあろうとしてもがいた。
――
そのあがきを、私は貴びたい。
憐れみたくない
。人と違って生まれてきたきみが、精一杯泰平の世に溶け込んで
善く
あろうとしたことを、憐れみで片付けたくない。今ここにいる剥き出しのきみの本性を、私には
理解のできない
怪物
あく
だと斬り捨てたくない」
「だが実際おまえには理解ができないだろう、俺のことなど。
――
おまえは、善を為すものだから。清くて正しい英雄だから」
伊織が二刀を抜く。セイバーも、蛇行剣を顕した。
――
構える。
「セイバー、」と伊織が言った。
「やっぱり俺は、
救えない
よ。
――
結局、おまえと斬り合えることが、こんなにも嬉しいのだ。かつて感じたことのない、この胸の高鳴りは
――
」
ぐ、と伊織のつま先に力がかかる。
「
忌むべき
ものだ。
――
やっぱり、おまえに俺は理解できない。理解すべきではない。理解、しなくていい」
伊織が一歩踏み込むと同時に、セイバーも駆け出す。剣先が交わり、間合いを取り、再び鍔迫り合いになる。
激しく打ち合いながら、境内の石畳の上を走り回り、火の粉が飛び、やがて
――
。
伊織の左胸を、翡翠色の美しい剣が、貫いた。
毒気の抜かれた
――
いっそ少女のように無垢な表情をした伊織が、真っ赤な血を吐く。その呼気に掻き消されて、もしかしたらセイバーの言葉は、伊織には届いていないかもしれなかった。それでも、彼は言った。
「
理解
わか
っているよ。私はきみを理解っている。私が好きになったイオリは最初からきみだった。ずっと、
イオリはきみだった
」
石畳に倒れ込む瞬間、血で汚れた伊織の口許が、一瞬強張ったあと
――
うっすらと笑みを浮かべるのを、セイバーは見た。
『スクランブル・エッグ』・了
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