蘇芳
2020-08-31 23:34:59
7838文字
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診断メーカーと短文のまとめ

閃のクロリン。診断メーカーと1000文字以下の短文をまとめたものです



 夜明けまで(閃Ⅳ前日譚)

 帝国の動乱は明日で決着する。今日はミシュラムという地で、それぞれが思い思いの時間を過ごしているんだろう。
 引く手数多であろう悪友であり相棒あるリィンは何を考えているのか、俺の隣に座り酒を飲んでいる。
 リィンとマキアスに俺の三人で馬鹿話をしながら結構な量の酒を空けた。顔が真っ赤になってきたマキアスは明日を考え部屋に先に戻ると言い出し、しっかりとした足取りで部屋に戻って行った。それほど酔っていなくても酒が顔に出るタイプなんだろう。これ幸いと俺とリィンを二人にしようと画策したんだろうが分かりやすすぎて減点対象だぞ。
 俺とリィンの二人だけになった部屋に沈黙が降りる。嫌じゃない。最後の夜をリィンと一緒に過ごせる僥倖。ボーナスステージは随分と大盤振る舞いをしてくれる。
 リィンを横目に見てみれば酒精で赤く色づく頬と、潤みが増した瞳が視界に入る。長く見続けるのはよくない。これは毒になる。強い毒だ。雁字搦めに縛りつけた手足の鎖を、いとも簡単に溶かす毒。
 態と、だったんだろう。力が抜けた様に見えたリィンの手から酒が入ったグラスが滑り落ちそうになっていた。
「っと! 危ねぇな。もうお開きにして部屋に戻っ……!」
 カチリ、とリィンの目が俺の目を捕らえた。
 強い目だ。迷いのない逃げるなと質す、愛しさに溢れた、目。
 この目に勝てた試しがない。勝機が無いどころか、始めから捕まっていた俺に逃げ道なんて無かった。
 隠しきれない激情がリィンの目に写った俺から見て取れる。リィンを俺だけのものにしたい。
 言葉にはしない狡さは、俺もリィンも同罪だな。
 先に仕掛けてきたのはリィン。口付けは、甘すぎるほど甘く。深く、長く繋げたのは俺。
 夜の帳は下りたばかりだ。


※※※


 甘い甘い(ポッキーの日の小話)

「今や説明は不要だよな!!」
「へっ?……クロウ? 突然なん……むぐっ」
 リィンの自室の扉を勢いよく開けたクロウは突然の事に、ぽかんとした様子のリィンに素早く近よりチョコでコーティングされた、ぺっきーと呼ばれる細長いお菓子をその口に手早くも慎重に突っ込む。
 いきなりお菓子を口に入れられたにも関わらず吐き出す事なく、咄嗟に落とさないよう唇を閉じたリィンに満足げな雰囲気を醸し出すクロウはリィンに食べさせたお菓子の反対側からサクサクと食べ始めた。
「!」
 お菓子で繋がるリィンとクロウの唇の距離がどんどん短くなっていく。ふざけたような行動をしているクロウだがリィンの目と真正面から合うクロウの目は、リィンを見るクロウの目は何時だって強く真剣で愛しさに溢れている。
 動きが止まっていたリィンが動き出す。サク、サクとクロウに比べれば、ゆっくりとお菓子を食べ進める。
 普段、まじまじと見ない唇から目が離せない。相手の小さな動きの細部まで目に入り、視線が注がれているのが分かる。触れ合えば簡単に意識を塗りつぶし翻弄されて味わい尽くしても次の瞬間には、もっと欲しくなるもの。
 お菓子は有限で食べていれば当然なくなり、リィンとクロウを繋いでいた物の距離がゼロになった。
 熱い吐息が溢れ互いの唇を擽る。
「まだまだ、菓子があんだけどよ。食うか?」
……食べる」
 お菓子の甘さ以上の、甘い食べ方で。


※※※


 とある日(閃Ⅳ後)

「リィ~ン。めちゃくちゃ疲れたから癒してくれ~」
「ん?……うん。疲れてるようだな、何があったんだ?」
 ソファに座っていたリィンの隣に些か乱暴な動作で、どかりと腰を下ろしたクロウは甘えるようにピッタリとリィンに引っ付き、ソファとリィン背中の間に無理やり腕を潜り込ませてリィンの腰を引き寄せる。
 くすぐったそうに身を捩ったリィンはリィンの肩に頭を擦り付け疲れた疲れたと、ぐずぐず言う珍しい状態のクロウの好きにさせていた。くっついてくるクロウは嫌などころかリィンは嬉しく思う。
 そのままの体勢で穏やかな時間が流れる。ここまでクロウが態度に出すのは希少だ、蜂蜜を少し入れた紅茶でも用意してクロウの話を聞こうと思った矢先、耳元で微かな笑い声が聞こえたと思った瞬間、耳の裏にちくりと甘い疼きが走った。
「っ……!」
 それを皮切りに首筋に羽毛が触れたような柔らかさで羽毛ではありえない熱さのものが、何度も何度も細波のように触れては引く。
 明確な言葉はなくとも跡は残さないから、というクロウの意思表示。
……つ、疲れたんじゃないのか……っ!」
「あぁ、大いに疲れた。……疲れたら甘いもんが欲しくなんだろ? だから俺にとって一番うまくて甘いもんが食いたいんだよ。なぁ、いいだろ」
 耳元で囁く低く掠れた声こそ甘い蜜のようだ。リィンは、この甘い声がもっと甘くなるのを知っている。そしてその、もっとがリィンも食べたくなってしまった。
 クロウの目を見れば嬉しそうに貪欲な光が一層の輝きを放つのが見てとれる。多分きっとリィンだって同じ目をしているのだろう。
「ククっ、んじゃまぁ。頂きます」
「残すなよ」
「残るもんなんて欠片だってねぇな」
 全て全て腹のなか。