楓花
2024-09-15 21:48:36
Public GD/その他
 

せめて、夢の中でも

城が、亡くなった父と夢の中で会う話。
原作59巻の話から、城にもお父さんに会わせてあげて欲しいなあと思って書いたものです。ちょっと城が別人っぽくなってしまった気がしますが、完全自己満足話ということで。
後半少しだけ城篠要素がありますが、カプ要素は薄いです。

城教官の命日は20周年記念画集記載のものですが、詳しい日時は不明の為あえてXX日としています。
今回はこんな話になりましたが、内藤さんとお酒飲み交わしながら息子自慢する城教官とかも書いてみたかった。




気づけばポツンと一人、佇んでいた。

ここは国会の敷地内だ。だけど、何故だろう。どことなく妙な違和感を覚えて、僅かに首を傾げた。見慣れた景色のはずなのに、まるでどこか知らない場所にも感じられる。

辺りを見回すと、人影もまばらな中チラチラとこちらを伺うような視線と目があった。
インカムに手をあてて何かを話しているその人物は、隊員のようではあったが全く見覚えがない。不思議に思ってジッと見ていると、ふと先程まで感じていた違和感の正体に漸く気づいた。

”制服が違う”
あれは昔の制服だろうか。そう思えば他にも知らない顔がちらほらと見える。

(これは・・・夢、かな)

どこか現実的ではない感覚に、瞬時にそう結論づけた。
そういえば今朝方、隊長達が不思議な夢の話で盛り上がっていた。それを横目で見ながら、自分も昔のアレクさん達に会ってみたいかもと考えたことを思い出す。影響されたのだろうか?
そう感じた時、不意に誰何の声がかけられた。

「誰だ、どこから入った?」

その、懐かしい声。
少し厳しい表情で、足早に此方へ近づいてくるその姿。

一瞬息を呑み、そのまま固まる。

「ん?──もしかして、皇親か?」

記憶の中の姿そのままの父は、自分に気づくと驚いたように名前を呼んだ。
その名を呼ばれるのは随分と久しくて、反応出来ずにただじっと見つめる。
懐かしさと、嬉しさと。色んなものが混ざったような説明しがたい複雑な感情が胸に込み上げて、言葉が出ない。

「城教官?」
「すまん、息子だ」
「えっ、息子さん?」

父の後ろから驚いたように此方を伺うのは、石川さんだった。
目が合うと綺麗なお辞儀をされたので、慌ててこちらも頭を下げる。若い。雰囲気のせいか今とはかなり印象が違って見える。
父が一言告げると、再びペコリと頭を下げてすぐに距離をとった。

「いつ帰国したんだ?」
「・・・え?」
「帰ってくるのは来月だっただろう」

帰国? 来月?
言われて、そういえばあの事件の頃、自分はイギリス留学中だったと思い出す。
そして父が亡くなったのは──。

「・・・もしかして今って、11月・・・?」
「XX日だ。連絡ぐらいしろ」

呆れたような声と共に、ポンッと頭に手が置かれた。

「少し背が伸びたか」

そのままぐしゃぐしゃと髪を乱されるけど、それどころじゃない。
今、父が口にしたその日付。その日、は。

”あの日”──だ。


ドクン、と鼓動がひとつ跳ねる。
同時に脳裏に浮かぶのは、ある可能性。

もし、もしも。もしも今のこの状況が、ただの夢じゃないとしたら?
何かの不思議な力が作用して、本当は実際に過去へ戻っているのだとしたら?

それはとんでもなく非現実的な事。
だけど、もしも本当にそうなら──。


『未来を、変えられないだろうか』



「・・・メインコンピューター室の前に、爆弾が仕掛けられてる」
「皇親?」
「中も何か仕掛けられてるかもしれない。ドアにも」
「・・・お前、どこでそんな情報を?」
「信じて貰えないかもしれないけど、とにかくすぐに調べて!」

急に大声をあげた俺に、父は随分と驚いたようだった。
無理もない。不意に現れた息子が、突然突拍子もない事を言いだしたのだから。それも物騒な内容の話とあっては、その状況の不自然さも相まって仕掛けたのが自分ではないかと疑われてもおかしくない。

だけど、それでもいい。
それが僅かな可能性であっても、俺は。


真剣な表情で見つめ合う。
数秒のうち、やがて父は静かにインカムへと手を当てた。

「城だ。爆班、手の空いてるのいるか? 爆弾が仕掛けられている可能性がある。
──ああ、メインコンピューター室の前だ」

指示を出しながら振り返る父の向こうで、石川さんが小さく頷くのが見える。
そのまま走り去るその後ろ姿を見送って、再び此方を向いた父の顔は『教官』の顔つきに戻っていた。

「すまん、時間がとれないが」
「わかってる。無事で」
「・・・お前、少し雰囲気が変わったな」
「俺も成長してるから」
「・・・そうか。また、ゆっくり話をしよう」

──そう出来たら、どんなにか。

父は強張ったままの俺の肩をポンとひとつだけ叩くと、すぐに踵を返した。
その後ろ姿を見送りながら、自然と言葉が口をついて出る。

「父さん。俺、父さんみたいに強くて誰からも尊敬されるような立派なDGになるから。今はまだまだだけど──必ず。大切な人を守れるように」

父は一瞬驚いたように振り返り、そして静かに笑みをのぞかせた。

そうして一言。
最後に残した言葉が、いつまでも耳に残る。



「お前は今でも、十分立派な俺の自慢の息子だよ」