山茶花
2024-09-10 21:50:04
28996文字
Public [シルデュ]シリアス・ダーク系
 

推理風娯楽小説「ミステリに憧れて」【036SR005】

シルバーとデュースが推理ゲームに挑戦する話。注意書きをよくお読みください。
※図、面倒だったので入れてません。


◇情報のまとめ・推理編

◆情報のまとめ
「これで、一応全部の部屋を見たことにはなりますね。シルバー先輩、何か分かりましたか?」
「ああ……
 今までに集めた情報のメモと、見取り図を見返す。
(※見取り図)
[#mi=3#]
「ここに、足りていない情報はあると思うか?」
「えーっと……。そういやヴァンルージュ先輩の部屋に行ったとき、窓もドアも開いてましたよね。普通なら閉めてくと思うんですけど……。これ、なんか、手がかりになりますかね? それと、ヴァンルージュ先輩の部屋の窓のフチに泥がついてたから、犯人はそこから出入りした可能性が高いと思います。あ、あと、僕とシルバー先輩の部屋にも鍵かかってませんでした……。ゲームの中とはいえ、不用心ですね、僕ら」
 デュースから聞いた情報を、一応メモに書き足しておいた。

◆情報メモ一覧
・親父殿の部屋:イデア先輩との会話
【情報1・イデア先輩はずっと娯楽室にいた。ずっと鍵をかけて、部屋に閉じこもっていたらしい。プレイログでアリバイが証明できる。】
・親父殿の部屋:デュースとの調査
【情報2・部屋一面、壁中すべて刀傷だらけだ。恐らく、俺の剣を使ってつけられたものだろう。……争いでもあったのだろうか?】
【情報3・廊下から玄関へ向けて、何かを引きずったような血と泥の跡がある。恐らく、ここから親父殿の遺体を桜の木の根元まで運んだのだろう。】
【情報4・本棚の本の中身の順番が整列されておらずバラバラだ、とデュースから指摘があったが……。親父殿が使っていた本棚なのであれば、そういうこともあるだろうな……。】
【情報5・今はここにないが、レオナ先輩が俺の剣は親父殿の部屋で拾ったと言っていた。恐らく、この部屋の中にあの剣はあったのだろうな。】
・遺体発見現場:ジェイドとの会話
【情報6・親父殿は1000万マドルの本を持っていた。食堂で皆にそのことを伝えている。本は少し古い装丁だが、普通のものだ。】
【情報7・ジャミルとレオナ先輩の二人は、古本の価値が分かる目利きだ。】
・遺体発見現場:ジャミルとの会話
【情報8・ジャミルとジェイドは、遺体発見後からずっと遺体の傍にいた。二人が見張っている間、誰も細工はしていないはずだ。】
・遺体発見現場:遺体の情報
【情報9・死因は多数の切り傷による、出血多量。恐らく、刃物によるものだと思われる。が、どれもナイフのように小さな刀で斬ったような傷跡で、大きな刀傷はない、らしい。】
【情報10・死亡推定時刻は、午前1時ごろ……少なくとも、皆が寝静まった夜中の犯行だと思われる。遺体発見は、午前7時だ。】
【情報11・遺体は桜の木の根元の土に埋められていた。どこからか身体を引きずられたらしい跡がある。】
・俺の部屋
【情報12・俺の部屋には剣の鞘だけが転がっていた。どうやら、犯人は剣を抜き身で持って行ったらしい。】
・キッチン、バスルーム、ダイニングなど
【情報13・キッチンの包丁は揃っている。バスルームやダイニングには、特に変わった様子はない。】
・談話室:ケイト先輩とヴィル先輩の話
【情報14・俺とデュースが、親父殿の死亡推定時刻である1時頃に眠っていたのをケイト先輩が目撃。証拠の写真も撮っている。】
【情報15・深夜1時ごろ、2Fでは娯楽室からイデア先輩のゲームプレイの音がしていた。また、雷雨で物音は聞こえなかった。】
【情報16・ヴィル先輩とケイト先輩は、午前1時前まで映画を見ていた。3時間のものだったらしいから、午後10時から見ていることになる。】
・書斎:レオナ先輩の話
【情報17・親父殿の持っていた希少な本に書いてあったのは、蘇りの秘術、のようなことかもしれない……?】
・娯楽室:イデア先輩の話
【情報18・イデア先輩のプレイログは、電波が圏外になったという午後22:30から午前7:00ごろまでのものが残っている。】
【情報19・娯楽室にはカーテンがないようだ。イデア先輩によれば、最初からずっとこうだったらしい。】
・追加情報
【情報20・親父殿の部屋は、ドアも窓も鍵が開いていた。窓のフチには泥がついていたらしい。】
【情報21・俺とデュースの部屋には鍵がかかっていなかった。】

◆情報のまとめ・再考

 調査をひととおり終え、落ち着いて話せる場所へ行こうとダイニングへといったん移動する。まだ昼前というには早い時間だからなのか、俺たちの他には誰もいなかった。
「人がいないのなら、ちょうどいい。まず、犯人候補から外していい人たちのことから考えよう」
「はいっ! 僕、頭使うのはあまり得意じゃないですけど……ここが大詰めですもんね! 頑張りますっ!」
 デュースと共に、メモと見取り図を見比べながら推理していく。
「まず、俺とお前が犯人ではないという前提で話をしていく。俺とお前は、昨日のゲーム内の描写を見る限りでも、ケイト先輩の話を聞いても、談話室で眠っていた……ことになっている。ただ、最初に少し確認しておきたい」
「なんですか?」
「お前は、2日目の朝、俺より先に行動できていたみたいだが、あのとき何をしていたんだ?」
「えーっと、僕は6時半に起きたことになってて……。自由に屋敷内をうろうろできたんです。それで、とりあえず自分の部屋に戻ろうとしたら、ヴァンルージュ先輩の部屋から続く血痕を見つけて、慌ててシルバー先輩を起こしにきた、っていう感じです」
「なるほど。そのとき、部屋の中などは見なかったのか?」
「すいません、見ませんでした……
「そうか、分かった。これはただの確認だし、お前のことは疑っていないから、そう気にすることはない」
「ありがとうございますっ!」
「それで、まずは俺とお前、それから被害者である親父殿を犯人の候補から外す。これで残りは6人だ」
「一気に3人減りましたね! うう、でもあと6人か……
「ケイト先輩は、俺たちの写真という確かな証拠を持っているから、この人も外していいだろう。ケイト先輩を外せるのなら、午前1時まで一緒に映画を見ていたというヴィル先輩も外すことができる。これで、残りは4人だ」
「となると、夜1時まで食事の用意をしてたっていうバイパー先輩とリーチ先輩も外せる、んですかね?」
「その二人が口にしたように、彼らが共犯でないのなら、だが……、実際、キッチンに仕込んだ食材も置いてある。一応、候補から外すことはできるだろう」
「そうしたら、あと残ってるのは、シュラウド先輩と、キングスカラー先輩……
……イデア先輩はゲームのプレイログも残っているから、これがアリバイとなる。なので、彼も外せる。すると、レオナ先輩にだけ夜のアリバイがないことになるが……
「じゃあ、簡単ですね! アリバイのないキングスカラー先輩が犯人なんですよ! 鍵をかけてなかったシルバー先輩の部屋から剣を盗んで、ヴァンルージュ先輩と争いになって、シルバー先輩がやったって風に小細工をして、ヴァンルージュ先輩を埋めたんです!」

 デュースの言葉に、息が詰まる。……レオナ先輩が犯人? それで、本当にいいのだろうか? もし、この推理が間違っていたら……罪のない人を、無実の罪で責めてしまうことになってしまうのではないだろうか? まだ、俺は何か、この事件の中に――見落としをしていないだろうか? 調査は、ちゃんとすべてをしつくすことができたのだろうか……

……最後の推理をする前に、もう一度……。メモと見取り図を見返してみる。何か、見落としがあるかもしれない、から」
「はい! 何度でも付き合いますっ!」
 傍にデュースがいてくれて、良かったかもしれない。親父殿の言うように、俺は人を疑うことが得意ではないようだから、ひとりでは心が折れてしまっていたかもしれないと思うと……。そんなことを思いながら、もう一度メモをめくっていく。
 デュースも、これでキングスカラー先輩が犯人、は簡単すぎるかなあ、と言いながら、俺と一緒にメモと睨めっこをした。
……うーん、難しい……。これ本当に監督生が僕でも解けるように考えてくれたのか……? 難しいこと考えてたら、なんだかだんだん、眠くなって、きて……
「デュース、寝てはいけない。これは眠らずに頭を使う訓練でもある」
 起こそうと手を伸ばした瞬間、デュースはガバリと顔を上げた。
……先輩。僕、分かったかもしれないです。犯人かどうかは分かんないんですけど……。嘘を吐いてる人がいる、かもしれない」
「嘘?」
「はいっ! 実は……
 デュースが気付いたらしい事実を、聞かせてもらう。……なるほど。それは俺としても経験のある、納得の行く話だ。だとしたら、犯行が可能なのは……
「では、もう一度その人に話を聞きに行ってみようか、デュース」
「はいっ!」

 俺はデュースと共に、ダイニングを後にした。

:→次ページ【解決編・結末】
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◇解決編・結末

 俺たちが向かったのは、娯楽室。イデア先輩が引きこもっている部屋だ。ドンドン、と荒めにドアをノックする。
「ヒッ……! な、な、何? 調査はもう終わったんじゃないの? それとも、犯人見つかったの……?」
「ああ。犯人を見つけた」
 デュースと顔を見合わせ、イデア先輩に指先を突きつける。
「犯人はあなただ、イデア先輩」
「なっ、なんのこと……っ!? 僕は、ずっと娯楽室で引きこもってたって言ったじゃん! ゲームのプレイログだってあるんだ、アリバイ完璧なのに、どうしてそういう結論になったわけ!?」
 これくらいの反論が来ることは、当然想定の上だ。だが、デュースが気付いてしまった事実がある。ゲームは、プレイしていなくても、プレイしているフリがいくらでもでき、画面上では何もしていなくても、プレイ時間には記録されるんだ。……俺自身にも、親父殿のネットゲームに付き合って、寝落ちしてしまったとき、見知らぬムービーが流れていたり、プレイ時間に睡眠時間を記録されてしまった経験が何度もある。デュース自身も、スマートフォンでできるパズルゲームを遅くまでプレイしていて寝落ちし、その時間も記録されてしまったことがある経験を思い出したことで気づけたらしい。
「ゲームのプレイログ、だったな。……オフラインの、レトロなシューティングゲーム、だったか? そうした古いタイトルのゲームは、起動したらずっと、タイトル画面の時点からプレイ時間が記録されているはずだ。そう、何のボタンを押していない、何の操作をしていなくても、だ。なんなら、デモムービーと呼ばれるプレイ画面が流れることもあるから、プレイしているフリはいくらでもできる……
「だ、だから……? 僕がそうやって、記録を捏造したはずだ、って言うの? それだけで僕が犯人だって決めつけたいの? それはおかしくない? 他に怪しい人はいなかったの……?」
「アリバイのない人なら、レオナ先輩がいたが……。あの人は、違うと俺の勘が言っていた。あの人を犯人だとするには、不可解な行動が多すぎる。わざわざリリア先輩の部屋から俺の剣を持ち出してみせたり、俺に剣を返したり、調査に協力してくれたり……
「そんなの、自分に都合のいいように調査を誘導したいからやったのかもしれないじゃん! 勘と誘導で犯人にされちゃたまんないっての、僕が犯人だって言いたいなら、動かぬ証拠でも出してみなよ!」
……そうか……。分かった。では、部屋に入らせてもらうぞ」
「は?」
「すうー…………はああっ!!!」
 バキリと音がして、娯楽室のドアが外れる。これでイデア先輩が引きこもろうとしても、出入りは自由だな。
「もう逃げられませんよ、シュラウド先輩っ!」
「意味わかんなすぎない!? なんでドア壊したん!?」
「デュース、邪魔しないようにイデア先輩を捕まえておいてくれ」
「はいっ!」
「ちょ、何、なんなの君らほんとに!?」
「大人しくしててくださいっ!」
 デュースがイデア先輩を羽交い締めにする。その間に、娯楽室の中にあるゲーム筐体を、レオナ先輩から返してもらった俺の剣で片っ端から叩き斬る。俺の考えが確かなら、どこかにそれがあるはずだ。
「ちょちょちょちょ、何してくれてんの!? 貴重なゲーム筐体が、アーーーー!!」
……あった!!」
 3つ並んだゲーム筐体の真ん中のものを斬ったとき、中からそれは出てきた。破りとられたカーテン、中身が洗濯機に改造されたゲーム筐体、そして、実際の凶器と思わしきナイフ。親父殿の持っていたのであろう、希少な古本。
「これらの物品すべてがあなたが犯行に関わった証拠だろう、イデア先輩。なぜ、娯楽室のゲーム機が洗濯機になっていて、中からこんなものが出てくるんだ?」
「し、知らないし……
「まだ、しらを切るつもりか。ならば、俺が説明しよう。あなたが何をしたのか……。今までは輪郭がぼやけていたが、証拠を見れば、ハッキリと分かることだ」
 それから、俺は自分なりの推理を話し始めた。
「あなたはゲーム機を起動したあと、娯楽室にあったカーテンをロープのように使い、窓からリリア先輩の部屋へと降りたのだろう。そして、リリア先輩を殺害し、隣にあった俺の部屋から盗んだ剣で、部屋中に刀傷をつけ、リリア先輩の血で俺の名前を本棚に描き、そして、リリア先輩を玄関まで引きずり、嵐の中、リリア先輩を埋めたんだ。そのときある程度服が汚れてしまったから、部屋に戻ったあと仕方なくゲーム機を洗濯機に改造し、そこで洗ったのだろう。ケイト先輩がゲームのプレイ音を聞いたと言ったのも、その音を隠すためのデモムービーが、大音量で流れていたからだ」
……なるほど、君はそう考えたんだ……。でもさ、その推理には穴があるよ」
「穴?」
「確かに、僕はそれをしようとしたときさ、飛行術も得意じゃないから、カーテンをロープ代わりにするかもしれないよ。でも、それってさ……。それができたところで、リリア氏が、窓を開けて自分から僕を招き入れてくれないと成立しない犯罪じゃない?」
「なっ……!?」
「リリア氏って、ナイフを持った僕が窓から入れて~って嵐の夜に言ってきて、素直に部屋に入れるような性格? ……いや、そうだったかもしれないけどさ、でも、そうだとしたら死んでるのは僕の方だって思わない?」
 確かに、そうだ。親父殿が犯行に及ぶ気満々のイデア先輩を招き入れたのだとしたら、被害者になるのはどちらかといえばイデア先輩の方……。だったら、どういうことだ? 確かな証拠まで見つかっているのに、俺の推理は、ここまで来て、間違っていたのか?
「はい、ゲームオーバー、ってとこかな? それじゃ、リテイク頑張……
 イデア先輩の言葉を遮り、デュースが言う。
「あの、シルバー先輩。僕たち、間違ってないけど、間違ってる、んじゃないですか……?」
「間違っていないけど、間違っている、とは、どういうことだ、デュース?」
……その、イデア先輩が犯行に関わってる、ってのは間違いないと思うんですけど。でも、それだけじゃなくって……。僕たちには、この人は絶対に犯人じゃない、って、無意識に頭から外してしまった人が、いると思うんです」
……まさか、それは……、いくら、なんでも……
……でも、そうじゃなきゃ、この推理は、あり得ない。本当の真犯人は……ヴァンルージュ先輩だ」
 デュースの言葉に、目の前が真っ暗になりそうになる。親父殿が……
「そんなこと、あり得るわけがない! 親父殿が、なぜ、俺に罪を被せて、ご自分を……っ!? 親父殿は俺に罪を持たせるような、そんなことをしないと言ったのは、他でもないお前じゃないか、デュース!!」
……シルバー先輩。もう一度、ヴァンルージュ先輩の部屋へ行ってみませんか。確かめたい、ことがあるんです」
 デュースに言われるまま、親父殿の部屋へと赴く。イデア先輩もそのままにしておくわけにはいかないので、ひとまず気を失わせ、問答無用で連れてきた。

 親父殿の部屋に着くなり、デュースは本棚の本を並べ替え始める。……そんなことをして、何になると言うんだ……
「えーっと、これがこうで、こっちがああで……。だから……。あ、これって元はアルファベット順なのか! なら、簡単だな。……よし、できたぞ!」
 デュースが並べ替え終わった本棚に浮かんだのは……『lilia』の文字。刀傷が、ちょうど、親父殿の名前を指すようにつけられている。
「何故……っ!?」
「僕、ずっと気になってたんです。本棚の本が、本棚の傷の場所と一致してないことが。なんていうか、こういう元の位置にちゃんと並んでないのって、ローズハート寮長にはすごく怒られるから……。だから、元の位置に綺麗に並べ直してみたら、何か分かるんじゃないかって思ったんです。……まさか名前が書いてあるとは思いませんでしたけど……
「では、親父殿が、本当にイデア先輩を招き入れて……?」
……そうだよ」
 いつの間にか意識を取り戻したらしいイデア先輩が、すべてを白状する。
「リリア氏は昨日、大人しくゲームプレイしていた僕の部屋に来て、協力するよう言って……いや、半ば脅してきたんだ。『この本にはお前にとって喉から手が出るほど欲しい知識が書いてあるぞ、欲しければ協力しろ』って……。君の推理は半分アタリで、半分ハズレ。ナイフが凶器なのは本当、僕がカーテンをロープにして、リリア氏の部屋に行って、嵐の中苦労して彼を埋めたのも、魔法障壁張っても泥だらけになったから、洗濯機作って服洗ったのも本当。でも、犯行自体はリリア氏がやったんだ。君の部屋から剣を盗んで、部屋を刀傷だらけにしたのも、ダイイングメッセージ残したのも、ナイフで自分の身体に傷つけまくったのも、ぜーんぶリリア氏。僕はただ、事が済んだあとの証拠隠滅を任されただけの、巻き込まれた……いわば共犯でもあり、被害者だよ」
「そんな、どうして……っ、親父殿が……っ!!」
「さあ、ね。リリア氏が何考えてたのか、君とリリア氏がどんな関係なのかも知らないけど…………今ここにいるこの僕には、さっぱりリリア氏の考えてることは分からないよ」
 そう言ったきり、イデア先輩は黙ってしまう。……結末、真相までは辿り着いたはずだが……。まだ、クリアじゃない、ということか?
……ヴァンルージュ先輩の自殺じゃ、動機が分かんないですね。いったいなんでそんなことを……
……動機。……どうして、親父殿がそんなことを……
 ふと、そのとき。最初に言われた、ゲームの外にいる本物の親父殿からの言葉を思い出した。

『シルバーよ。お前は人を疑うのがあまり得意ではない性格じゃ。じゃから、ちょいとでも感情移入ができるように、今回はわしを殺させてもらったぞ!』

『今回はわしを殺させてもらったぞ』という、あの言葉。あれは、この結末を指していたのではないだろうか。だとしたら……。俺は、ゲームの中も、外も、その枠組み、垣根を越えて、最後の推理をしなくてはならない。

「動機は……ここには、ない。あえて言うのならば、俺たちを鍛えるため、ですね。親父殿。あなたはこのゲームが始まる前、既に……最初からすべて、結末を宣言していたんだ! 犯人はあなただ、親父殿!!」
「くふふ……、よくぞ見破った! その通り、わしが今回の犯人じゃ!」

 仮想空間の背景が霧のように晴れ、元気な姿の親父殿がそこに立つ。長時間元気な姿を見ていなかったせいか、なんだかそれだけで、胸のすく想いがした。VR装置を外し、本物の親父殿の元へと向かう。

「ああ、親父殿……!」
「推理モノの結末としては陳腐だったかのう? まあ、イデアまで当てられれば上出来と思っとったが、二人ともなかなかやるわい!」

 親父殿に駆け寄り、抱きしめる。すると、親父殿は手を伸ばし、ぽんぽんと俺の頭を撫でてくれた。一度身体を離すと、デュースから声をかけられた。
「良かったですね、シルバー先輩」
「ああ、デュース。お前も、今回の協力をありがとう。恐らく俺ひとりでは、この結末には辿りつくことができなかっただろう。今回は人を疑わなければいけない状況の中で、それでも人を信じ、協力することを学べたと思う」
「そんな、僕の方こそ、全然推理はダメダメで……。でも、先輩の役に立てたなら良かったです! 自分の頭ではしっかり考えつくことができなくても、そういうのが得意で、できる人の手伝いをして、頼るって方法もあるんだって学べた気がします!」
 デュースが握った拳を差し出してくる。清々しい気持ちで、その手に拳を合わせた。ゲームクリア、だな。
「うむ、二人ともに良い学びがあったようで何よりじゃ! ……して、眠気の方はどうじゃった?」
「途中難しくてちょっと眠くなったけど、確かにこうやって実践っぽいことした方が頭使える気はします!」
「確かに、眠気はほとんどありませんでしたが……。それは精神的なショックによるものが大きかった気もします……
「はっはっは、良い良い! では、次の機会も楽しみにしておれよ?」
「え、次もあるんですかっ……!? 今回だけでも相当大変だったのに……!?」
「うむ、シナリオやらシステムやらを頼んだイデアと監督生が相当ヘソを曲げてしまったから、まだ暫くはかかるがの。まあ、でもそのうちまたおぬしらを招いてしんぜよう!」
「次はもう少し、精神に負担の少ないものでお願いします……

 そうして、頭を使って疲れただろうから菓子でも食って休憩するが良いと言う親父殿の言葉を区切りに談話室へと向かっていく。そこには、マレウス様とセベクがいつも通りの姿で待っていて。
 この日常を守るため、ゲームのようなシナリオを本当にしないため、次の試練も、きっと頑張ろう。デュースを招いた5人でコーヒーや紅茶を飲みながら、今はただそう思うばかりだった。

*おしまい