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やや
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気まぐれは愛の証
ビマヨダ小話。ある日、毎日レイシフトに行く!とヨダナが言い出して……。マスターから見たビマとヨダナの話です。2ページ目は裏話的な設定になります。
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「喜べっ。これからわし様が、毎!日!素材集めを手伝ってやろう!」
マスターである藤丸立香の部屋を訪ねてきたドゥリーヨダナは、開口一番そう言い放った。金の鎧を纏った姿はやる気にあふれている。しかし、これには驚くしかない。だって、ドゥリーヨダナと言えば、周回なんてイヤだ〜と駄々をこねがちなのである。最終的に必ず引き受けてくれる点は信頼しているが、あーだこーだとぶつくさ言うのをなだめすかすこともそこそこある。それなのに突然自ら素材集めに付き合うことを申し出てくるとは。
「どうして?何かあった?」
思わず理由を尋ねたくなるというものだ。マスターの疑問にドゥリーヨダナは顎をしゃくり、次いで、ふんっとふんぞり返った。
「わし様の気まぐれだ!!」
「ええ〜?」
ドゥリーヨダナの気まぐれが勤労の方に向くとは、なかなか思えない。信じられないという気持ちがつい口から漏れる。
「マスター思いのわし様に感謝しろ!」
わーはっは!と高らかに笑ったドゥリーヨダナは、結局追加で何を聞いてもロクな答えは返してくれなかった。
ドゥリーヨダナの真意はまったくわからないが、悪いことを企んでいる気配はない。であれば、やる気になってくれたのはありがたいことである。新しいサーヴァントが次々来るここでは、育成素材はいくらあってもいい。
「それなら、よろしくね」
藤丸は素直に申し出を受けることにした。それにニッとドゥリーヨダナが笑う。その快活な笑みをどこかで見たような気がして、おや?と思うも、次の瞬間にはいつもどおり、余裕ありげに口角を上げたドゥリーヨダナに戻ってしまう。
「毎日、呼ぶのだぞ?」
少し引っかかりを覚えたものの、「毎日」と念押しされて、藤丸はとりあえず大人しく頷いたのであった。
それから、本当にドゥリーヨダナは素材集めのレイシフトに毎日付き合ってくれた。ぶちぶち愚痴を言うこともあったが、それは疲れたとかなかなか素材が落ちないとかそういう類のものであって、もう働きたくないとは決して言わなかった。共に周るキャスターのアルトリアも目を見張るほどであった。
そうして一週間が経った頃。藤丸は日中の素材集めレイシフトの成果をスタッフに報告し、その足で食堂に向かっていた。夕食に向けて混み合う前、ギリギリといった時間帯だ。食堂に足を踏み入れると、席にはまだ余裕があって一安心する。さて、今日のメニューは何があるのだろうか。久しぶりにオムライスがあったら嬉しい。そんなことを考えながら調理場のカウンターの方に目を向け、そこで藤丸は驚くべき光景を目撃する。
「なんだ、今日はビィィーーマがおるではないか!」
「ドゥリーヨダナ
……
。おまえは相変わらずやかましいな。これでも食ってろ」
「なっ!勝手にわし様の食事を決めるな!」
「腹減ってんだろ?」
「だとしてもだな
……
」
調理担当で白い霊衣姿のビーマと、先ほどまでレイシフトを共にしていた金の鎧姿のドゥリーヨダナが、カウンターを挟んで喧嘩腰で喋っている。二人がこんな口調で会話してるのは何度も見てきた。これに限れば、なんら驚くようなものではない。
でも、藤丸が目を離せなくなったのは二人の表情だ。とても、とても明るかった。嬉しい気持ちを抑えきれないというような笑顔で、眩しく見えるほどだ。藤丸はこんな顔で二人が相対するのを見たことがなかった。
呆然とそんな二人を見ていると、時たまドゥリーヨダナの目線がチラリと後ろに向くのに気づく。少しずつ混み合ってくる食堂で、注文のためにカウンター前を譲らないといけないのはわかっているのだろう。自分の後ろに並んでいる人がいないか確認しているようだった。ビーマは他の作業もあるだろうに、カウンターを布巾で何回も拭いたりして、ドゥリーヨダナの前から離れない。二人して名残惜しそうに口喧嘩もどきをしている。いつの間にこんなに仲良くなったのだろうだなんて考えを巡らせて、そうして。
「ああ、そういうことかあ」
藤丸は気づいた。ただただ最近の全てが腑に落ちた。
ストーム・ボーダーは居住区画が限られているし、電力も節約せねばならない。そのため、サーヴァントたちには定期的に霊体化してもらっている。それはビーマとドゥリーヨダナも例外ではない。二人は顕現タイミングが同時だったから、霊体化と実体化の周期も同じであった。きっとその間に、藤丸が預かり知らぬところで二人は交流を重ねていたのだろう。でも、レイシフトや突発的な特異点修復などで少しずつ二人の実体化周期がずれていってしまって、ついに重ならなくなって、ここ最近は会えなくなっていたに違いない。
あのドゥリーヨダナが毎日レイシフトに付き合ってビーマと会える日を待っていたということ。今日会えて、あんなにも嬉しそうにしていること。ビーマがドゥリーヨダナに渡した食事のトレイには、朝にしか出されないたっぷりのいちごジャムをかけたヨーグルトが特別に添えられていること。ドゥリーヨダナが手を触れ合わせるようにビーマの手に代金を渡していること。席についたドゥリーヨダナがビーマ特製の料理を大事そうに口いっぱいに頬張っていること。ビーマが調理場からそれを眺めて笑みを浮かべていること。
全部ぜんぶ、わかってしまった気がした。そうすると一気に二人のやりとりが微笑ましく見えてくる。自然と顔がほころんだ。
「よし!」
藤丸は決意する。こういう時こそマスターの出番である。
「ビーマ!」
「おう、マスター!レイシフトお疲れ様」
こちらを見てニッと笑ったその表情に、一週間ほど前に見た誰かの笑顔が重なる。
「まかせてよね」
いきなりやる気をみなぎらせているマスターを、ビーマは不思議そうに見ていた。
翌日。藤丸は自室にビーマとドゥリーヨダナを呼んだ。昨日の夜に考えた、とっておきのアイデアを伝えるために。
「集めたい素材があって、そこの敵の構成を考えると単体宝具と全体宝具のどちらも必要なんだ。それで、しばらく2人に周回をお願いしたいんだけど」
並ぶ二人の目が同じように丸くなるのを、笑みを堪えながら見守る。
「どうかな?」
問いかければ、目の前で固まっていた二人がハッとして、示し合わせたようにくるっと顔を向き合わせた。その上、わかりやすくぱあっと顔を輝かせて、うん、と頷き合っている。すごい英霊たちだと知っているのだけど、動きがシンクロしているのが可愛くて、つい和んでしまう。微笑ましく眺めていたら、藤丸にまた二人の視線が戻ってきた。表情を見れば返事の内容はわかったけれど、本人たちから聞きたくて、藤丸も居住まいを正す。
我先にと口を開いたのはビーマだ。
「まかせとけ!素材集めきるまで俺がドゥリーヨダナの尻を叩いてやるからよ」
「何を言う!」
「おまえ、すぐサボるだろ?」
「わし様の周回での活躍を知らんのか貴様っ」
「輝かしい活躍でも見せてくれんのか?」
「当然だ!仕方がない
……
最優サーヴァントのわし様を見せるためだ。ビーマと一緒でも許してやろうではないか。わし様、寛容であるからな!」
「どこが」
目の前で繰り広げられる喧嘩。二人ともニコニコしているのに、マスターの前だからと妙な体裁を整えて、一応の憎まれ口を叩いている。一緒にレイシフトに行けて嬉しいのを隠す気があるのか、ないのか。
「レイシフトはいつからだ、マスター」
「すぐでもかまわんぞ。パーフェクト素材集め王子なわし様の姿を見せるのは早い方がいい」
「俺がおまえの活躍奪っちまうかもしれねえけどな」
「マスター!ビーマをギャフンと言わせるために、とっととレイシフトすべきではないか!?」
ぽんぽん飛び出る言葉たちと、レイシフトが楽しみで仕方ないといった様子の二人に、散歩に行く前にはしゃぐ犬を思い起こす。こんなに嬉しそうにしてるのに、変わらず自分たちは仲良くないですというテイを保とうとしている二人が面白くて、藤丸はついに笑いを堪えきれなくなった。吹き出すマスターにきょとんとする二人に、はっきり告げてあげる。
「いーっぱい、周回してもらうんだからね!何日もかかるかもよ。覚悟して!」
今度は二人の後ろにブンブンと振られる尻尾まで見えた気がした。
後々、二人は仲良くなっただけではなく、「お付き合い」をしているのだと判明して、またびっくりすることになるのを藤丸はまだ知らない。
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