楠木武一等陸佐が登場する物語をTwitter上に99話投稿した
芹沢亀吉、どの物語も一貫して悪逆非道な楠木が己の悪行を反省することなく自業自得な末路を辿る。そして現在芹沢がいる世界の楠木はあろうことか完全武装した陸自隊員共を率いて芹沢の自宅を襲撃し彼を拉致する暴挙に出た。
「さあ芹沢亀吉、詫びろ!この楠木に詫びろ!楠木正成公の末裔でこの国を反日左翼から守るため汗をかき続けてきた俺様を下らん物語で侮辱し続けた己の行いを詫びるんだ!早くしろ!」
楠木は苛立ちを加速させ、詫びる素振りを毛ほどにも見せない芹沢の右脇腹に精神注入棒による一撃を叩き込んだ。この腐れ外道自衛官が毎日のように部下達に暴力を振るうのは今まで芹沢が投稿してきた物語に登場する楠木と全く同じ。
「よく聞け芹沢!貴様が詫びる気になるまで何度でも軍人精神を注入してやるからな!この楠木が直々に軍人精神を注入してやっているのは貴様のような出来損ないの腐れ外道でも改心の余地があると信じているからだ!」
改心の余地があるなどと心にも無いことを宣い民間人への一方的な暴行を正当化、楠木は何処まで性根が腐っているのだろうか。そして信太山駐屯地の一室に幽閉され手足を鎖で縛られた上楠木から暴行されたにも拘らず、芹沢は顔色一つ変えない。
「くっ、楠木一佐、あっ、あの芹沢なんかヤバいですよ。まっ、毎日身体鍛えてる俺達でさえ痛い精神注入棒の一撃を食らっても涼しい顔したままとか普通じゃないです。おっ、俺何だか怖くなってきました。」
湊川護二等陸曹が声を震わせながらそう言うと、楠木は眉間に皺を寄せ精神注入棒の一撃を湊川の腹部に叩き込んだ上以下の通り言い放つ。
「あんな反日非国民に怯えてどうする!?この楠木が毎日のように軍人精神を注入してやってるのに全くなっとらん!この楠木は毎日汗をかけとは言ったが恥をかけとは言っとらんぞ!よし今から自転車こぎを1000回やれ!湊川貴様はたるみ過ぎだ!」
楠木に言われるがまま机の端並びに椅子の背もたれをそれぞれの手により掴みながら身体を浮かせ、湊川は懸命に両脚を回転させている。そんな湊川を内心侮蔑している
乃木大一等陸曹は20式5.56mm小銃を手にした。
「あんな反日非国民には楠木一佐自ら手を下すまでもありません。俺がこの銃の台尻で芹沢の頭叩きのめして楠木一佐への無礼を詫びさせて見せますよ。」
いきなり楠木が乃木の左頬に拳骨を叩き込んだ。
「愚か者が!この小銃はこの国を邪悪な者共から守るため我々自衛隊に下賜されたものだ!その小銃の台尻で汚らわしい反日非国民を殴るなど不届き千万!さあ乃木!この20式小銃に詫びろ!20式小銃殿申し訳ございませんでした、と言え!」
楠木曰く20式5.56mm小銃の台尻により芹沢を殴るのは銃を汚す行為らしい。となれば先程精神注入棒の一撃を芹沢にお見舞いした楠木の行いは精神注入棒を汚す行為なのではないだろうか。無論楠木に言われるがまま20式5.56mm小銃に詫び続ける乃木にそのような欺瞞を理解するのは余りにも荷が重い。
「どうだ乃木?20式小銃に許してもらえたか?」
「は、はい、20式小銃殿がこの俺を許すと仰いました。」
「嘘をつくな!銃が喋る筈無いだろ!」
再び乃木の左頬をぶん殴る楠木が部下や民間人に暴力を振るいたいだけなのは最早自明か。この外道は私生活においても配偶者楠木
久代に暴力を振るい続け、現在信太山駐屯地近くの山林には彼女の遺体が埋められている。
突然芹沢が両手両足の鎖を軽々と引きちぎり、憤怒三面大黒天へと姿を変えた。三面六臂、即ち3つの顔と6本の腕を持ち顔それぞれが頭髪を逆立てた憤怒相、胸元及び腕には蛇が巻き付くその姿は実に禍々しい。
「き、貴様芹沢亀吉では無かったのか!」
「吾は大黒天。破壊神である吾を貴様呼ばわりとは随分不躾だな、楠木武よ。さて、先程殴られた分を倍にしてお返ししよう。」
楠木の右脇腹、即ち先程芹沢とばかり思って精神注入棒により殴打したのと同じ個所を激痛が襲う。
「痛い!痛い!痛い!はっ、破壊神だと!?大黒天は打ち出の小槌を持っていて袋を背負う姿の福の神だった筈!そっ、そんな禍々しい姿の大黒天がいてたまるか!さては貴様大黒天を騙る魔物だな!」
部下や配偶者への執拗な暴行を楽しむ癖に自分はすぐ痛がる楠木に対し、大黒天は呆れ顔でこう言った。
「貴様が言う大黒天は大国主命と習合した姿だ。大黒天の名はサンスクリット語のマハーカーラ、即ち大いなる暗黒に由来する。吾の肌の色が真っ黒なのはそのためだ。つまり吾こそ本来の大黒天、破壊神マハーカーラそのもの。この国では大国主命と習合した方を大黒天として崇める者が多いのに対し、芹沢亀吉は小さな吾の像を肌身離さず持ち共に数々の寺院を巡った仲。その芹沢を襲う貴様ら自衛官共は許し難い。そこで芹沢の姿を借りわざとこの駐屯地まで連行されたのだ。貴様らに神罰を下すためにな。」
「撃て!あの大黒天を騙る魔物を撃て!湊川!自転車こぎなどしている場合か!今すぐ貴様もあの魔物を撃つんだ!」
楠木が右脇腹を押さえながら檄を飛ばしたのに伴い、湊川、乃木らは20式5.56mm小銃を構え一斉に大黒天を撃つ。
「貴様ら先程芹沢の自宅に襲来した時はニヤニヤ笑っていた癖にその怯えた表情は何だ?破壊神である吾を撃った以上その報いを受けてもらう。貴様らが撃った銃弾でな。」
途端に銃弾が向きを変え湊川や乃木をはじめ陸自隊員共の全身を撃ち抜き、芹沢即ち一民間人の自宅をニヤニヤ笑いながら襲撃した腐れ自衛官共が冥界へと旅立つ。部下全員が全身蜂の巣になった途端に楠木は腰を抜かし、口髭を生やした腐れ一等陸佐の股間に巨大な水たまりが広がり独特の悪臭が漂う。
「楠木武、今ので仕留めることも出来たが敢えて貴様には銃弾を浴びせなかった。全身蜂の巣ぐらいでは貴様への神罰は余りにも生温いからだ。」
そう言って大黒天は剣を振るい部下や民間人への暴行を楽しむ腐れ外道の四肢を切断した。両手両足を失った楠木が号泣しながら大黒天に命乞い、この構図は奇しくも丁度1週間前
軽部孝士一等陸士が号泣しながら楠木に命乞いした時とよく似ている。
「楠木武に問う。1週間前部下の軽部孝士が今の貴様のように号泣しながら命乞いした時貴様は暴力を振るうのを止めたのか?それとも軽部を腰抜け呼ばわりしより一層暴力を振るったのか?」
楠木が命乞いする軽部を腰抜け呼ばわりし精神注入棒による折檻に拍車をかけたのも、その折檻により軽部が亡くなった件を訓練中の事故として処理したのも大黒天はお見通し。
「あ、あの時はすぐに軍人精神を注入するのを止め軽部を手当てした!ほ、本当だ!信じてくれ!軽部が亡くなったのはあいつが無謀な訓練をしたせいだ!だ、だから俺に罪は無い!俺は無実だ!」
「手足をもがれた状態で破壊神である吾に嘘をつく貴様は本当にバチ当たりだな。百歩譲って貴様の言う通りだったとしても部下の無謀な訓練を止めさせなかった貴様には上官としての管理者責任がある。そんなこともわからず自分に罪は無い、無実だなどと抜かす貴様は上官失格だ。命乞いする軽部孝士に更なる暴行を加え亡き者にした上事故で片付けた件を懺悔する機会を与えてやったのに、貴様はそれを足蹴にした。ここで懺悔していたなら貴様の四肢を元に戻し帰るつもりだったがその必要は全く無いな。」
そう言った大黒天は剣を一閃させ楠木の首を刎ねた。今まで芹沢が作成した物語なら火車が出現し死亡したばかりの楠木の魂を捕食する場面ではあるものの、何故か大黒天は火車を制止している。一体どういうことだろうか。
楠木がふと両目を開くと先程大黒天に切断された筈の四肢が元通りかつ切断された際胴体を襲った激痛がきれいさっぱり消え去り、悪臭漂う股間の水たまりも見当たらない。驚く楠木の眼前に自衛官共がズラリと並ぶ。
「楠木一佐!いよいよ決起の秋です!国賊ゴジラを討伐するため、そしてこの国に大和魂を取り戻すため我々「楯の会」は身命を賭します!」
何のことかわからない楠木が周囲の自衛官共に事情を尋ねたところ、亡き三島由紀夫を崇拝する自衛官共が密かに再興した政治結社「楯の会」は既に全自衛官の過半数が入会し、現在その政治結社を率いているのが楠木だという。一瞬困惑した楠木ではあるものの自分にとっては夢のような展開のため早速調子に乗り始めたのは言うまでもない。
「諸君!各地の駐屯地に伝えよ!大楠公の末裔であるこの楠木武がついに立ち上がったと!そして大阪の地に集えと!」
楠木の扇動により「楯の会」に入会している自衛官共が一斉蜂起し大阪市内を占拠。「楯の会」には右翼団体員や警察官等自衛官以外の入会者も数多く、彼らもまた楠木の呼びかけに応じ大阪市内に集う。更に在日コリアン排撃を訴える排外主義者等も合流し皇国義勇軍と称する頃には総勢20万人以上に。
「皇国義勇軍、素晴らしい響きです。亡き三島由紀夫先生も草葉の陰でさぞかしお悦びのことでしょう。ところで楠木一佐、我々に合流した民間人右翼ばかりか警官や自衛官の中にも略奪や放火を楽しむものがおりまして、軍紀が乱れきっております。軍紀粛正のため略奪や放火を行う者達を厳罰に処す必要がございますかと。」
「愚か者!念願の決起を実現し皆喜んでいるのがわからんか!喜んでいる者達に水を差してはいかんだろ!むしろ我らに対し抗議する不届き者にこそ厳罰を加えねばならん!直ちに捕らえろ!」
皇国義勇軍による乱暴狼藉を容認し、あまつさえ乱暴狼藉に抗議する地元住民を捕らえろと怒鳴る楠木こそ愚か者かつ無法者なのは火を見るよりも明らか。皇国義勇軍に加わり自衛官共から小銃の撃ち方を教わった民間人右翼共が早速民家や銀行を襲い金品を強奪している上、自衛官や警察官までニヤニヤ笑いながら老夫婦の全身を蜂の巣にしたり民家に火を放ったりと始末に負えない。
「楠木一佐、
蓑田官房長官からお電話が入っております。」
楠木は1年足らずで政権を投げ出した蓑田
喜徳が官房長官と呼ばれていることにふと疑問を感じたものの、社会的地位がある人物に対しては卑屈な性質故直ぐ電話に出ている。
「み、蓑田前総理、いえ蓑田官房長官、一自衛官に過ぎないこの楠木にわざわざお電話とは恐れ入ります。」
すると受話器の向こうの蓑田はこう言った。
「おや楠木君、今日初めて私と会話したかのような口ぶりだね。つい最近ホテル椿山荘で今回の決起の件を打ち合わせしたばかりじゃないか。」
蓑田曰く楠木と自分は以前から懇意にしていて今回の決起は
門長内閣も承諾済みとのこと。昨年元自衛官に銃撃され死亡した門長
四郎元総理が総理をやっていることに驚いた楠木が近くに置いてあるデジタル時計を見ると、2017年12月17日と表示されている。そして先程楠木が芹沢の自宅を襲撃したのは2023年6月10日。
今回自分が5年以上過去に遡ったのは大国主命と習合した方の大黒天がやり直す機会を与えてくれたから、そう信じる楠木にとってありがたいことに門長内閣が皇国義勇軍に全権を委ねる特措法案を国会に提出し、現役自衛官のやりたい放題を後押しする悪法に反対する野党議員達を警官隊の突入により排除し強引に可決したという。
「そういうわけだ、楠木君。あのタネン大統領も皇国義勇軍支持を表明し在日米軍基地からの軍事物資の援助もある。まさしく鬼に金棒だよ。そして先程防衛省からゴジラが和歌山沖を移動中との連絡が入った。存分にやり給え。」
2020年度の大統領選に落選したビル・タネンも2017年時点ではまだアメリカ合衆国大統領の肩書を持つ。勘の鋭い方ならホワイトハウスが皇国義勇軍をゴジラへの当て馬、そして捨て駒と見なしていることに気付いた頃か。
「蓑田官房長官、ご厚情痛み入ります!それではこの楠木がゴジラに引導を渡してみせましょう!グハハハハ!」
途端に蓑田が通話を終了したのは楠木の下品な笑い声により鼓膜が破れそうになったからだ。調子の乗った時の楠木の笑い声がひたすら下品なのは今まで芹沢が作成した物語の設定と寸分違わない。
「蓑田よ、楠木武は本当にゴジラを倒せるのか?」
右耳を押さえながら顔をしかめている蓑田に即位を2年後に控える皇太子の
清仁が声をかけた。現在門長共々皇居に参内中の蓑田はゴジラが自分の即位を脅かすのではないかと怯える清仁の機嫌を取るのに忙しい。ちなみに皇室は政府与党同様ゴジラを打倒さえしてくれれば皇国義勇軍がどれだけ乱暴狼藉を働こうと不問に処す所存である。
「ご安心下さい殿下、あの男は、楠木武は目的のためなら手段を選びません。だからこそ全権を委ねたのです。」
「それなら安心だ。とはいえあのようなやかましく粗暴な男は好かぬ。出来ることならゴジラと共倒れが望ましい。」
清仁はそう言ってニヤリと笑い、蓑田もほくそ笑む。
「殿下がそのように仰せられるのは重々承知しておりまして、皇国義勇軍に加わっている幹部自衛官達に楠木武を何時でも始末出来るよう準備しておけと命じてあります。」
清仁並びに蓑田がほくそ笑むのと時を同じくして和歌山沖を泳ぐゴジラに夥しいミサイル及び砲弾が撃ち込まれ、皇国義勇軍によるゴジラ打倒作戦が始まった。
「ゴジラが進路を変えました!現在関西国際空港に上陸し破壊活動を行っております!」
いきなり攻撃され怒りに燃えるゴジラは瞬く間に関西国際空港を蹂躙し、そのまま皇国義勇軍の一隊が展開しているりんくうタウンを目指す。よく見るとりんくうタウン一帯に陣取っているのはその殆どが警察官や民間人右翼といった自衛官ではない人達だ。
「さあ来い!自衛官の皆さんの手を煩わせるまでもない!ゴジラなんて俺達がぶっ殺してやる!」
などと威勢のいい民間人右翼共ではあるものの、いざりんくうタウンに上陸したゴジラを目の当たりにした途端に恐怖の余り意識を失う者、先程の楠木同様股間に悪臭漂う巨大な水たまりを作る者、支給された89式5.56mm小銃を投げ捨てて逃げ出す者が続出。
「腰抜け共を直ちに撃ち殺せ!」
楠木が無線に向かってそのように命じると、現場の陸自隊員共が逃亡する者達並びに戦意を失いへたり込んだ者達の背中を撃ち抜いた。腐れ自衛官共は意識を失った者達も容赦無く撃つ。
「ひ、酷いですよ!背中から撃つなんて!」
「口答えするな!これは楠木一佐直々のご命令だ!射殺されたくなければゴジラに立ち向かえ!貴様も日本男児なら大和魂を持つ日本男児の意地を見せてみろ!」
と言いながら自衛官共は自分達だけ高機動車に搭乗し逃げる準備を始めている。何のことはない、わざとゴジラを攻撃して挑発し大阪市内に誘導する腹積もりの楠木はその誘導の際に膨大な犠牲者が出るのを見越し、大勢の民間人並びに警官共を皇国義勇軍に合流させたのは捨て石にして自衛官の犠牲を少しでも減らすためだったのだ。
「結局自分達だけ逃げるんですか!あんた達自衛隊は卑怯者だ!」
自分達だけゴジラから逃げようとする卑劣な自衛官共を公然と非難する民間人右翼もいたものの、逆上した自衛官共から袋叩きにされた。
「貴様は誰のお陰で今銃を撃てると思っているんだ!?先程ニヤニヤ笑いながら幼稚園児を撃っていた貴様が殺人罪に問われずにいられるのは誰のお陰だと思っているんだ!?そうだ!全部楠木一佐のお陰だ!貴様は楠木一佐への感謝が足りん!楠木一佐への感謝の思いを示したいならゴジラ相手に一歩も退くな!戦え!」
袋叩きにされ地べたに横たわり呻いている民間人右翼にそう吐き捨て、腐れ自衛官共は高機動車に搭乗し現場を去る。ゴジラ上陸前に幼稚園児を撃つのを楽しんでいたこの民間人右翼が救いようのない人間のクズなのは明白とはいえ、その民間人右翼にゴジラへの突撃を強要し自分達だけ安全圏へと逃げる卑劣な自衛官共に比べれば幾分かマシに見えてしまう。
皇国義勇軍から執拗に銃撃そして砲撃され続け怒りに燃えるゴジラは大和川を越え大阪市住之江区内を進行中。ゴジラがりんくうタウンに上陸し大阪市内に到達するまでに皇国義勇軍に合流した民間人並びに警察官は勿論、地元住民にも大勢犠牲者が出たにも拘らず、今現在楠木が猛烈に不機嫌なのは予想以上に犠牲者が出たからではない。
「おのれゴジラ!
大阪護國神社を破壊しおって!あそこには10万5千余の殉国の英霊を祀っているのだぞ!」
自ら強行したゴジラ打倒作戦により夥しい犠牲者が出ても平気な癖に大阪護國神社を破壊したゴジラに対し怒り心頭、この歪んだ認知も民間人の命を軽んじる軍国主義者ならでは。ところで皇国義勇軍を率いて元々大阪市内に上陸する気など全く無いゴジラに砲撃を浴びせて挑発し、大阪護國神社がある大阪市住之江区内に呼び寄せたのはどこの誰だっただろうか。
「く、楠木一佐、大阪護國神社が破壊され、自分も無念であります!大阪護國神社に祀られていた英霊達の無念を晴らすためにも何としてでもゴジラを撃ち果たしましょう!」
取り巻きの自衛官共にそう言われ、単純な楠木は機嫌を取り戻した。
「それもそうだな。ゴジラが天王寺に到達するまであとどれぐらいだ?」
「ゴジラの歩行速度を踏まえますとあと15分程でしょう。楠木一佐、大阪護國神社全壊を除けば作戦は順調に進んでおります。」
「確かに順調だな。ゴジラへの砲撃を絶やすなと現場に念を押しておけ。」
「かしこまりました!」
それから15分が経過し大阪市天王寺区にたどり着いたゴジラ、楠木らの作戦通りである。
「楠木一佐、ご指示の通りあべのハルカスに反逆者共を連行し例のものを設置してあります!」
「わかった。それでは最後の仕上げに入るぞ!あのデカブツを生き埋めにしてやれ!」
JR天王寺駅付近のビル街に足を踏み入れたゴジラはいきなり発生した地盤沈下に飲み込まれた。悲鳴を上げるゴジラに追い打ちをかけるかのようにあべのハルカスをはじめ周辺のビルもゴジラめがけて倒れこむ。楠木がゴジラを天王寺区内に呼び寄せたのは足元のガス管を爆破して地盤沈下を生じさせ、周辺のビル街も爆破により倒壊させ生き埋めにするためだったのだ。
先程楠木が皇国義勇軍の乱暴狼藉に抗議する地元住民達を捕らえるよう厳命したのを覚えているだろうか。捕らえられた地元住民達は全員あべのハルカスに幽閉され、たった今そのあべのハルカスが爆破されたため1人残らず死亡した。皇国義勇軍の規則において臆病者並びに反逆者は皆殺しと定め、ゴジラに恐怖を感じる民間人右翼並びに皇国義勇軍の乱暴狼藉に抗議する地元住民達を同じ人間と見なしていないが故に楠木そして自衛官共はどこまでも非道になれる。
「楠木一佐、おめでとうございます!作戦通りゴジラは生き埋めになりました!皇国義勇軍の大勝利です!」
「そうか、俺は見事にゴジラを討伐したのだな。やはり楠木正成公の末裔である俺様は天才軍略家だったのだな!グハハハハ!」
元々調子に乗りやすく単純な性格だけあって、取り巻きの自衛官共に持ち上げられた楠木は完全に舞い上がっている。
「楠木一佐、それでは演説をお願い致します。」
自衛官共に言われるがまま楠木は瓦礫の山の中央に立ち、何ともやかましい演説を開始した。
「諸君刮目せよ!大和魂を持つ日本男児が集い本気を出した結果ゴジラに勝利した!この国を憂う国士達よ!我等と共に反日分子を抹殺し東亜新秩序実現に向けて邁進しようではないか!日本人として生まれた時点で諸君は勝者だ!あとは終わらせるだけだ!占領軍憲法が大和魂を踏みにじるこの屈辱の時代を!天皇陛下万歳!」
男尊女卑並びに反動主義全開のこの演説はネット上にて生配信されている。現在楠木の周囲には10式戦車、高機動車等陸自の車両がズラリと並び、上空には数多のF-2戦闘機が旋回し、イージス艦こんごう等海自の艦艇が大阪湾沿岸を埋め尽くす。周囲の戦車、軍用機、そして艦艇全てが自分の命令通り動く状況は否が応でも楠木を慢心させる。
いきなり空から大黒天の声がした。
「楠木武よ、随分調子に乗っているな。」
空に向かって以下の通り罵声を吐く楠木が浮かれていた気分を害され猛烈に不機嫌なのはわざわざ書くまでも無いか。
「しつこい魔物め!まだこの楠木を狙っているのか!だが残念だな!今の俺様は陸海空全ての自衛隊を率いていて先程ゴジラをブッ倒したばかりだ!さあさっさと姿を現せ!先程この楠木に恥をかかせた報いを受けさせてやる!」
すると大黒天はこう言った。
「楠木武よ、今貴様がいるのは
芹沢亀吉が2017年12月17日に初めて作った楠木武の物語の世界だ。先程吾が首を刎ねた際死亡した貴様を吾がその世界に転生させたのだよ。今まで芹沢亀吉が作った楠木武の物語は99話、となれば次は丁度100話目だ。」
「ならば芹沢亀吉に伝えておけ!100話目はこの楠木がゴジラ相手に大勝利し、見事大東亜共栄圏を再興し大団円を迎える展開にしろとな!」
実のところ大黒天の声は楠木以外には全く聞こえていない。そのため皇国義勇軍に加わった自衛官共は空に向かって怒鳴り始めた楠木を目にして啞然としている。そして生配信が継続中なのを踏まえると、空に向かって怒鳴る楠木の姿がネット上に配信され続けているのは想像に難くない。
「貴様は芹沢亀吉が初めて作った楠木武物語に登場する楠木武と全く同じ勘違いをしている。楠木武、貴様はゴジラを倒してなどいない。そしてもうすぐ死ぬ。そもそも芹沢亀吉が楠木武を考案したのは軍国主義の暴虐さを描くためだ。軍国主義は滅ぶべきというメッセージを発するため軍国主義の権化である楠木武が自業自得な末路を迎える展開が欠かせないのだよ。」
突然地面からゴジラの背びれが突き出てきた。何を隠そう楠木が演説するため立っていたのは生き埋めにされたゴジラの丁度真上だったのだ。地面から這い出たゴジラに代わり生き埋めになった楠木は当然帰らぬ人となる。臨戦態勢に入った皇国義勇軍ではあるものの、突然のゴジラ復活及び楠木即ち最高司令官の死により指揮系統が崩壊し同士討ちが多発。
執拗に砲撃され続けた挙句生き埋めにされ、ゴジラの怒りは頂点に達しつつある。背びれを烈火状に発光させた途端にゴジラは赤く燃え盛る烈火状の放射熱線を吐き、皇国義勇軍に参加した自衛隊の戦車部隊、戦闘機部隊は勿論大阪湾に展開している海自の艦隊も徹底的に破壊し尽くした。生き残った皇国義勇軍参加者共は皆放射熱線から拡散された高濃度の放射能を浴びているため程なくして全員被曝死することに。
芹沢が2017年12月17日に初めて作った楠木武の物語はこれにて終了。後に作られた完全版『破壊神の顕現』
①②③④では皇国義勇軍壊滅後もゴジラ打倒を諦めない日本政府がゴジラの更なる怒りを買い、結局日本政府も皇室も滅ぶ。
楠木がゆっくりと両目を開くと目の前に大黒天がいた。
「楠木武、ここは現世と冥界の境界だ。貴様はたった今二度目の死を迎えたのだよ。貴様が率いていた皇国義勇軍もゴジラにより徹底的に叩き潰された。芹沢亀吉が初めて作った楠木武の物語がそういう結末だからな。そうだ、貴様に是非とも見せておきたい映像がある。」
唖然とする楠木に大黒天が見せた映像は清仁と蓑田の密談である。
「あのようなやかましく粗暴な男は好かぬ。出来ることならゴジラと共倒れが望ましい。」
「殿下がそのように仰せられるのは重々承知しておりまして、皇国義勇軍に加わっている幹部自衛官達に楠木武を何時でも始末出来るよう準備しておけと命じてあります。」
映像を観た楠木は金魚のように口をパクパクさせている。最早精神が崩壊している楠木に対し大黒天が更なる追い打ちをかける。
「楠木武、貴様は配偶者や部下を死に追い込みながら罪悪感を抱くことなく平然としていた。そんな貴様に切り捨てられた側の無念の思いを味わわせるため一旦転生させやりたい放題させ二度目の死を迎えた後今の映像を見せることにしたのだ。勿論今の映像を見せたぐらいで貴様が改心などしないことは百も承知。転生した直後に皇国義勇軍の決起を止めるよう強く訴えていたなら貴様が改心したと認識し二度目の死を迎えた後ここにいる火車に喰われることは無いよう手配してやるつもりだったが、その必要は全く無いな。というわけで火車よ、待たせてすまなかった。楠木武の汚れきった魂を存分に味わってくれ。」
すると待っていましたと言わんばかりに火車が出現し、あっという間に楠木の魂を飲み込んだ。
「悪行を重ねれば重ねるほど魂は汚れる。その汚れた魂こそ吾輩の大好物。今頂いた楠木の魂はいつもにも増して美味だ。転生前の楠木の魂はここまで美味では無かった筈。一旦転生し転生前以上の悪行を重ねたのが大きいな。大黒天、貴公のお陰で特上の魂を味わうことが出来た。礼を言う。」
冥府へと戻る火車を見送った大黒天は元居た世界に戻り、芹沢に一部始終を伝えた。
「大黒天様、ありがとうございます。お陰様で100話目に相応しい内容に出来ますよ。」
「礼には及ばぬ。吾は破壊神として悪しき楠木武に神罰を下したまでのこと。ところで芹沢亀吉よ、この100話目をもって楠木武の物語を作るのはお終いなのか?」
「いえいえ、これからも書き続けますよ。私以外にも楠木武の物語を書いてくれている方がいる以上、私1人が止めるわけにはいきません。」
程なくして芹沢が書き上げた物語こそ今現在皆さんが読んでいるこの『100話目』である。(終)