太陽の光が届かない、暗い深い森の奥深く。じっとりとした重い空気を吸いながら、青年は果実を採取している。熟れた小さなベリーを摘み、潰さぬよう丁寧に袋へ入れていく。日当たりの悪い場所でも育つ貴重な食料を集め、青年は一つ背を大きく伸ばす。
そうして、気が付く。木々の隙間から僅かに見える青空、鮮やかな蒼と白い雲が浮かぶその場所。そこを、暗い色がゆるやかに過ぎ去っていった。流れ星にしては黒く、鳥にしては妙に大きい。青年の知識にはない、不思議な現象である。興味をそそられた青年は、袋を肩掛け鞄に閉まってから過ぎ去った方へ向かう。草木を掻き分け、慣れ親しんだ森を歩く。
時間にして、五分と少し。進み続けた青年の前に、見たことのないものが一つ。折れた枝と潰れた草花、その中央に倒れ伏す存在。羽根を散らす焼け爛れた皮膚を持つ天使が、目を閉じ横たわっていた。木々の間から差し込む光が照らすその存在はとても神聖なるモノに見えて、思わず青年は駆け寄ってしまう。呼吸と心音を確かめて、それが生きていることを確認する。
青年はしばらく迷ってから、目覚めない天使を背負い一旦自宅まで連れ帰ることを決める。ここに訪れる人間は少ないし、悪魔に食われでもしたら一大事だ。何より青年は、この美しく可憐な天使を放っておけなかった。
鬱蒼とした森に、青年と天使は消えていく。残ったのは、黒い黒い、堕天使の証だけだった。
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