Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
yossy
2024-08-10 17:18:12
1863文字
Public
自創作
Clear cache
年輪を刻む
野佐和大樹の「同窓会」後の話
ネタバレを含む為現行未通過は不可
家族の過去の話についてはこちら
「菜の花の花言葉」
https://privatter.me/page/665deace09099
上司に退職願を提出する。
封筒を眺めてから、頷き、デスクの上に手を組んでにこやかに微笑まれる。
「詳しく聞いてもいいかな?」
面接の時のことを思い出す。
物腰柔らかな初老の上司。
最終面接の時、うんうんと頷きながら、
その場で採用を貰ったことをよく覚えている。
優しいが、物事を捉える視点は鋭く、
丁寧に人を深掘りするのが得意な人だ。
だから昼休憩のタイミングで時間をいただき、簡潔に説明する。
とあるきっかけがあって、諦めていた野球選手の夢を再び叶えようとしている事を。
引き留められるのだろうかと緊張するも、優しい笑顔を向けられ、
「いいねぇ、若いうちに沢山挑戦しなくちゃ。応援しているからね。」
と今後の話をして開放された。
ただ、引き継ぎだったり私物の撤収だったりで1ヶ月ほど時間を貰うこととなった。
あの一件で入院した時も、良くしてもらったなと感謝しながら今後の計画を立てる。
部署の同僚たちに残念がられながら送り出して貰い、送別会では浴びるように飲まされた。
鳩羽さんの取材の情報をくれた方に個人的にお礼を言うと、肩を組まれ号泣された。
「まさかお前が野球選手を目指すとわな〜。
夢が叶ったら取材させてくれよ?」
「勿論です!いつになるかは分かりませんが
…
」
「お前なら大丈夫だってー!」
背中をバシバシ叩かれ、叱咤激励を受ける。
そして会社を辞めるギリギリに使えるコネクションを用いる。
準備を整えてから、お願いされていた合コンの件を円居さんに連絡をする。
時間と場所、費用は俺持ちの事、参加人数と女性側は円居さんの方から集めて欲しいと連絡しつつ、男性参加者の説明をする。
取材する中で意気投合し、恋人がいないスポーツ選手限定で集まってもらった。
野佐和くんは来ないの?と聞かれるが、用事があるからと嘘をつき、楽しんで!と返信する。
残っていた有給休暇を消化しつつ、引越しの準備を進めていく。
またコーチを探して本格的な練習メニューを組んでもらいこなしていく。
その合間を縫ってあの日の事を客観的にまとめる。
同窓会の招待状が届いた日、当日のこと、目を覚ましてからのこと、化け物と
…
奥山のこと。
感情は無視して丁寧に書いていく。
最後に付箋で自分の思った事、感情を連ねていく。
何度読み直しても"何か"が足りない、欠陥の記録。
ため息を吐いて、ノートを閉じる。
諸々の準備が落ち着いた頃、母に連絡を取る。
話がしたいから都合のいい日はある?と送ると、暫くしてから日時とURLが返事の代わりに送られてくる。
開けば高級ホテルのディナーを予約した事を読み取り、了承の返事をする。
約束の日、当日。
正装は
…
例の件でボロボロになったから下ろし立てのスーツを身に纏う。
向かえば既に母が待っていた。
テーブルに向かい合って座る。
重苦しい空気が流れる、苦手な時間。
食事をしながら、ゆっくりと、自分の言葉で近況報告をする。
仕事を辞めたこと、夢を諦めきれないこと、自分の人生を変える出会いがあったこと。
母は話を遮ったりせず、相槌もなく静かに聞いていた。
俺の話が終わると、母はぽつりぽつりと話始めた。いつも毅然とした姿を見ていたから、少し俯いた姿を見るのは初めてだった。
「私のせいで、不自由な思いだけじゃなく不自由な気持ちまで強制させてしまって、ごめんなさい。」
「貴方のお父さんを失ってから
…
貴方も失ってしまうかもしれないと思って、怖かった。」
「私にできる事なら何だって協力するわ。今更母親面をされても嫌かもしれないけれど。」
段々と涙ぐむ母に、
「そんな事ないよ。母さんのおかげで、
ここまで大きく育ったんだから。」
強く、そう返せたのは、あの目まぐるしい出来事のおかげだと思った。
少し鼻をすする母にハンカチを渡す。
「そういえば、一つ聞きたいんだけど。」
涙を拭いながら母に問いかけられる。
「大樹の人生を変えるようなその人ってどんな方なの?」
唸り声を出しながらどう説明しようかと考える。
「貴方のお父さんと私はね、それはそれは情熱的な恋愛を経て結婚したから。大樹もそうなのかと思って。」
「そ、そういうのじゃないから!」
みっともなく大声を出してしまい、誤魔化すように咳払いをする。
「多分、驚かせると思うから、俺がその人に相応しい人間になったら紹介させてね。」
「約束よ。」
「うん、約束する。」
止まった時が動き出したような、そんな気がした。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内