Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
えりゅの本屋・べったー+支店
Public
こりゅさにBL
Clear cache
小竜景光が主を見つけるまでの100日間
あと100日
とある本丸に顕現した小竜景光と、存在感の希薄な男審神者の話。
1
2
■□■
「さ、小竜景光くん。こっちだよ」
ジャージ姿の燭台切光忠に促されて、顕現されたばかりの太刀、小竜景光は鍛刀部屋を出た。
四部屋程木戸の扉が続いた先は、庭先に続く縁側廊下となっていた。その先に、別棟へと続く渡し廊下がある。
「俺が顕現した部屋がある館は、本殿ではないんだね?」
渡り廊下に差し掛かったとき、背後を振り返りながら小竜景光が問いかけた。先を歩いていた光忠も、同様に振り返りながら答える。
「ああ。あの棟は鍛刀や手入れ部屋のある屋形さ。あと、主の仮の執務室もある」
「仮?」
「手入れや鍛刀の記録や報告とかの事務作業をする部屋だよ。本来、主の執務室は本殿の奥にあるからね。ここのは仮と僕らは呼んでる」
「へえ」
そんなやり取りをしていると、自分たちが歩いていた廊下を三日月宗近がしずしずと歩いてくる。こちらへは近づくことなく、彼は廊下の角を曲がって屋形の奥の方へ進んでいった。
近侍と名乗っていたから、主が仮の執務室とやらにいるのだろうか。
顕現したら、まず新しい主と会えるものだとばかり思っていたのに、その姿は見えない。他の刀剣男士はそのうち会えると言っていたが、本当に会えるのだろうか。
そもそも、新しい主というのは存在しているのだろうか。
らしくない不安が、小竜景光の胸の裡に過る。それをふっと一笑して消し飛ばした。
──どうやら、まだ刀だった頃の記憶が、強いかな。
そう思った瞬間、小竜景光の耳元に微かな声が届いた。
『がんばってね』
男性とも女性とも判断しづらい声音だったが、柔らかく耳あたりの良い声が確かに聞こえた。
あたりをきょろきょろ見回すが、案内役の燭台切光忠以外は誰もいない。先程見かけた三日月宗近の姿も、もう見当たらない。
「どうかしたのかい?」
小竜の様子に気づいて、光忠が声をかける。
「さっき、声が
……
」
「さっき?」
「ああ、いや
……
いい庭だね」
ごまかすように小竜はそう言ったのだが、確かに改めて見れば、手入れは行き届いていて、庭木の趣味も配置もいい。
小竜のセリフに、光忠は微笑んだ。
「増えてきた仲間と一緒に、造りあげてきたんだ
……
」
「そうかい」
渡り廊下の先も、先ほどまでいた屋形と大して変わらない規模の大きさだった。庭先から奥を見渡すと、似たような屋形がいくつか連なった奥に、大きな屋形らしき屋根が見える。
──あれが、本殿だろうか。
そう考えていると、光忠が穏やかな口調で案内する。
「この屋形と隣が僕らの個室がある棟さ」
「なるほどね」
「個室とはいっても、昔のよしみで何人かで相部屋になっている場合も多いよ。僕は、伽羅くんや貞ちゃん──太鼓鐘貞宗っていうんだけどね、彼らと三人部屋さ」
「さっき、一緒だった鶴丸国永
……
彼は一緒の部屋じゃないのか?」
「鶴さん? 彼とも馴染みだけど、彼は僕らよりも先に顕現していたし、その頃から彼は自分の個室があったから」
じゃあ、新しく顕現した自分は誰かと相部屋になるのだろうかと、小竜の考えを読んでいたかのように、光忠が続けた。
「基本的には、刀剣男士一人ひとりに個室は分け与えられるんだ。さっきも言ったけど、昔のよしみとか、兄弟刀で部屋を一緒にしたいというこちらの要望に、主が応えてくれているんだ」
「なあ、その主だけど
……
」
「さぁ、次は厨を案内しよう。キミも当番が回ってくるだろうからね、何人か仲間がいるだろうから、紹介するよ。あ、さっき言ってた伽羅ちゃんも紹介するよ」
この本丸の刀剣男士たちは、主のことを訊ねようとすると、それをはぐらかすような言動がちらほら見えるのは、気の所為だろうか。
『がんばってね』
先程聞こえたあの声は、誰だったのだろうか。
首を傾げることも多いが、ここが新しい居場所なのだ。慣れるしかないのだろうな、と半ば諦めにも似た心持ちで、小竜景光は光忠の説明を聞いていた。
小竜景光が主の存在に気づくまで、あと百日。
〈了〉
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内