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えりゅの本屋・べったー+支店
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こりゅさにBL
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小竜景光が主を見つけるまでの100日間
あと100日
とある本丸に顕現した小竜景光と、存在感の希薄な男審神者の話。
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2
「俺は小竜景光。主を探しさすらう流浪の旅人
……
。キミが、今度の主かな?」
眩しいほどの金髪を赤い紐で括り、見目麗しい容貌に笑みを浮かべて、眩しいほどの優男がマントをなびかせて立っていた。
容貌が美しいと、声までそうなのだろうか。顕現した声音は聞き心地がよく、ほんのりと甘ささえ帯びている。
顕現の口上を、こちらも負けず劣らずの美丈夫が麗しい笑顔で聞いていた。
「うむ。俺は、三日月宗近。天下五剣にして、この本丸の近侍だ。まぁ、よろしくたのむ」
「え、あれ?」
小竜景光は、肩透かしを受けたようなぽかんとした表情になる。そして、周囲をきょろきょろと見回した。
「いかがした?」
「え、いや
……
あの、俺を呼び出した主は?」
「ああ、主か。はっはっは
……
あい、すまぬ」
小竜景光の質問に、三日月は可笑しそうに高笑いするだけだった。小竜の柳眉が怪訝そうに寄る。
「主は
……
そうだな。そのうち会えるだろうよ」
「は? 答えになってないんじゃないか?」
「すまんな。今のおぬしには、それだけしか言えぬよ」
「帰ったぜー」
そこに、内番用の白い着物と袴姿の鶴丸国永と、紺色のジャージを身に着けた燭台切光忠が入ってきた。
「あれ? 新入りか」
小竜を見て、鶴丸がぱっと明るい表情を見せる。小竜は、二人に会釈して微笑んだ。
「小竜景光だ。よろしく」
「鶴丸国永だ。こっちは光坊だ」
「鶴さん、紹介が雑すぎ。──燭台切光忠です。その戦闘服、長船かい?」
光忠に言われて、小竜は己の服とマントへ目をやりながら、こくりと頷いた。
「ああ。主を転々としたけど、俺は長船派景光の作った太刀さ」
「へえ。僕も、長船派光忠作の太刀だよ、よろしく。ところで、キミの項に彫ってあるのは
……
その、もしかして?」
「ああ、これかい? 倶利伽羅竜だよ。だから、小竜の号が付いている」
「へえ、そうなんだ。いいなぁ。カッコいいね」
「倶利伽羅竜か! 伽羅坊と一緒じゃねーか!」
光忠と和やかに話していると、勢いよく鶴丸が割って入ってきた。
「きゃらぼう?」
小竜がきょとんとすると、光忠がにっこり笑って説明した。
「ああ、僕や鶴さんと同じく伊達家ゆかりの刀で、大倶利伽羅という子がいるんだよ。彼も、倶利伽羅竜が彫られているんだ」
「へえ。それは、会ってみたいな」
「すぐに、会えるよ。今日は洗濯当番で本丸にいるから、あとで紹介するよ」
「ところで、二振ふたりとも、畑当番はいかがしたのだ?」
三日月が訊ねると、鶴丸国永がいたずらっ子のような笑みで答えた。
「おっと、悪いな。収穫は上々さ。さっき、厨まで採れた野菜を運んだから報告に来たところさ。ところで、主は
……
っと、おやおや」
鶴丸は部屋中を見渡したあと、訳知り顔で頷いて、燭台切光忠へ視線を向ける。光忠も、肩をすくめて困ったような笑みを浮かべた。
「しょうがねーな。光坊、小竜景光を案内して、みんなに紹介してやりな。主へは俺から報告しとくから」
「そうかい? じゃあ、小竜くん。僕についてきてくれるかな?」
「いいけど、その前に主にまだ、挨拶が済んでないんだけど!」
光忠に手を引かれながらも、小竜が言い募ると、三人は互いに視線を合わせたあと、そろって同じセリフを口にした。
「そのうち会えるさ」
「そのうち会えるだろうよ」
「そのうち会えるであろう」
三人の言葉に、わかったようなわからないような複雑な表情で、小竜景光は光忠に連れられ、本丸の奥の方へと消えていった。
残ったのは、三日月宗近と、鶴丸国永の二振り。
いや、さらにもう一人。
鍛刀部屋の壁際に、端座する審神者がいた。
この本丸の正真正銘の主である。
「主よ」
「な、なに?」
三日月に声をかけられ、審神者の肩がびくりとする。
「せっかく顕現した太刀に、一言も声をかけぬのは、如何なものかと思うぞ?」
「わ、わかってるよ! こ、声をかけようとしたんだけど
……
」
「あんまりにもキラッキラしてたから、できなかったんだろ、な? 主」
揶揄するように、鶴丸が言った。
「てか、ひどくない? ボク、ずっと此処にいたんだけど!? 気づかないのが、おかしくないか?」
「仕方ないだろ、キミは黙ってると、存在感薄いから。いや、殆ど無いから」
「鶴丸!」
「うむ。それは俺も同意見だ」
「三日月まで! ひどいよ、もう
……
」
審神者は、ぷっとむくれて立てた両膝に顔を埋めた。
この本丸の審神者。
黙ってると、壁や景色に同化したのかと思えるほど、存在感がない。審神者自ら話しかけて、初めて認識できるくらいの希薄さだ。もはや、これは特殊能力といえるかもしれない。
この本丸で鍛刀された刀剣男士たちも、最初のうちは主がいないと大騒ぎになったが、審神者が話し出すと声だけは聞き取れるようになり、やがて練度を上げると、その姿を視認できるようになった。
つまり、刀剣男士は練度を上げないと、主の姿をずっと見られないままなのだ。
「はぁ
……
それにしても、綺麗な太刀だねぇ。彼」
「ん? 小竜景光か?」
三日月が聞くと、審神者はこっくりとうなずいた。
「へえ。俺よりもか?」
鶴丸が、審神者に顔を近づけて聞いてきた。
「鶴丸も綺麗だけど、彼はまた違う感じだから、さ」
「ほう。そんなに、興味あるなら、俺が近侍の任務を解かれる日も近いな」
今度は、三日月が胡乱けな眼差しを向けて言い出したので、審神者は慌てて否定するように両手を振った。
「あの、あの! ちがうから。三日月が近侍してくれないと、練度の低い子たちをまとめられないじゃん!」
実際に、三日月がこの本丸にやってきたのは、政府が大々的に新規審神者を募集した際に、立候補した時の特別支給だ。初期刀の加州清光とともに、存在感の希薄な主を補佐している古参刀だ。
鶴丸国永も、この審神者が自身で鍛刀して初めて顕現した太刀だ。三日月ほどではないが、彼もこの本丸では古参のうちに入る。
二振りとも、なぜか顕現してすぐに、この希薄な存在感の審神者を認知できた稀有な刀でもあった。この二振りが率先して、刀剣男士と主との連携をしてくれたので、この本丸は二振りと主を中心に、よくまとまっているのだ。
「さっきだって、いつもなら『主はここに』って教えてくれるのに、どうしてわざと教えなかったんだよ⁉」
審神者が問いかけると、三日月宗近「さて、そうであったか?」と空惚ける。
「鶴丸もだよ!」
「おいおい、そう目くじらを立てることかい?」
鶴丸の言葉に、審神者はますます頬をぷっとふくらませる。いい大人の年齢のはずなのに、そうする様は幼子のようで可愛らしいと、二振りの古参刀に思われてるなど、まったく自覚していない。
「どうせ、鶴丸は主が見えない小竜景光が、突然ボクが見えた時の驚いた顔が見たいだけだろ⁉」
「はっは、バレたか。でも、残念だな。半分正解で半分ハズレだ」
「えー? じゃ、なんで教えなかったんだよ? 君たちが紹介してくれたら、ボクも頑張って話しかけられたのに」
ブツブツ文句を言いながら、審神者はゆっくりと立ち上がった。その背後に、すっと三日月宗近が控える。
「どこへ行くのだ? 主よ」
「執務室。本部に今日の鍛刀の成果を報告しなくちゃ」
「あい、わかった。鶴よ。そろそろ、遠征隊が戻る時間だろう。小竜景光を皆に紹介する手筈を整えてくれ」
「了解。じゃ、主。あとでな」
そう言って、鶴丸は審神者の頭を優しく撫でる。
細身なのに、鶴丸は審神者の自分より頭一つ分だけ大きい。三日月も同様だ。普段は感じない身長へのコンプレックスを、こういうときに強く感じてしまって、情けない気分になった。
そういえば、先ほど顕現した小竜景光も大きかった。燭台切光忠とほぼ同じくらいの身長だったから、相当大きい。これは、背後や横を黙ってすり抜けても、存在感を抜きにしても気づかれにくいだろう。
「早く、気づいてくれるといいな
……
」
無自覚にぼそっとつぶやいた審神者の言葉に、三日月の美麗な眉と、鶴丸の白いそれがピクリと動いて、不穏な空気を醸し出したが、審神者は気づかずにのんびりとした足取りで執務室へと向かった。
「
……
鶴よ」
「ああ」
「加州に、報告せよ。小竜景光は要警戒対象だと」
存在感希薄な審神者は、気づいていない。
小竜景光が顕現した時、その美麗な姿と朗々と名乗りをあげたのを、審神者が頬を赤らめたのを見て、三日月宗近がわざと主が此処にいると教えなかったことを。
そして、自分を小竜に紹介してほしそうにうずうずしている審神者を見て、鶴丸もムッとして燭台切光忠に『主がここにいるのを言うんじゃねーぞ』という視線を送ったのも。
小竜景光が、この本丸の主の存在に気づくまでの道のりは、他の鍛刀された刀剣男士より遠くなりそうだ。
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