薙屋のと
2024-07-04 09:25:26
1232文字
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メリニ怪談◆メリニ王城七不思議

魂の存在が認められゴーストのいる世界の怪談って難しくないですか?

 メリニ王城七不思議、というものが存在するらしい。

 一つ目、夜中に動き回る甲冑
「動く鎧が混じっているとか?」
「城の中にまだ魔物がいるってヤバくないですか」
「迷宮に居た奴らがライオスから逃げ出すところだったとかじゃないか?」
「なるほど」
 二つ目、視線が動く歴代の王の肖像画
「ただの動く絵画ですね」
「もう悪さはしないみたいなんだけど、不気味だよね」
 三つ目、夜に響く男の人魚の歌
「これライオスだろ」
「妙に上手いのがムカつくなあ……
 四つ目、目の前から消える銀髪の女の幽霊
「えっ、これ知らない何それ怖い」
……あ! ミスルンさんの転移術じゃないですか?」
「なるほど、エルフの耳が見えないからトールマンの女性だと思われてるのか」
 五つ目、塔の窓を叩く白い女の手
「これファリンでしょ、もう! 危ないからやめなっていつも言ってるでしょ」
「あはは、ごめんね」
 六つ目、ひとり増えてる
「え、何それ」
「シェイプシフターの幻覚か、ドッペルゲンガーが混じっているのでは?」
「あ、なるほど」
 七つ目、
 カブルーが中央の燭台に火を灯し、部屋がぱっと明るくなる。
「あれ、これで終わり?」
「七不思議は最後の一つは誰も知らないものらしいよ」
 マルシルの言葉に、ライオスが答えた。えぇ〜、と残念そうな声を上げる彼女の横でチルチャックが温くなったエールをぐびりと呷り「思ったよりだいぶつまんなかったな」と毒吐いた。
「トールマンの学校では流行ってるって聞いたんだけどなぁ」
「まあ迷宮も無くて魔物や魔術の知識がない地域からすると、恐ろしい話なんだろう」
「ゴーストもゾンビも、迷宮にいましたからね」
 カブルーが苦笑する。それにしても内容のほとんどがここにいる人物とは、結局のところ生きている人間が一番恐ろしいというオチなのだろうか。
 一人一つずつ怪談を持ち寄り、七不思議を完成させようという遊び。とは言っても七つ目は存在しないらしいので、ここに居るのは六人だけだ。
 トールマンは真夏の夜には怖い話で涼をとるという話からはじまったものだが、これならば氷術で物理的に冷やした方が早かったように思う。なんとも不完全燃焼なオチだ。全員がやれやれ、と腰を上げ解散の雰囲気を漂わせる。カブルーは、ドアの側の壁に凭れ掛かり微動だにしないミスルンに声を掛けようとした。
…………『そこに居ないものが写る鏡』」
「えっ」
 低く掠れた声で、ミスルンがぽつりと呟いた。
「私が話そうと思っていたものだ」
 その場にいた六人、全員がお互いの顔を見た。
 一つ目はチルチャックが。
 二つ目はマルシルが。
 三つ目はファリンが。
 四つ目はライオスが。
 五つ目はカブルーが。
 六つ目は――「言おうとしたら、先に誰かが話した」

 私はずっとここに居たが、誰も、扉は通らなかった。

 ミスルンがそう言った瞬間、風もないのに燭台の火が大きく揺らいだ。