MN*B
2024-06-23 02:35:59
11551文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.27 福音⇄凶報

シリーズ中第44話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧、ブックマークやいいね、スタンプなど、いつもありがとうございます。お待たせしました。
 今回、夢っ気が強いです。一応ブロマンスとして書いてますが。
本来予定していた文章を次回に回したので、少し短くなりました。
 次回、ちょっと説明回気味になりそうです。
そして、投稿はいつもより長めに期間を取らせていただきます。年末年始なので…。
おそらく次に投稿するのは三週間後、来年ですかね。
追記:少し投稿遅れます。
一応言っておきますと、書き手は生きてます。年末年始が想定より忙しかったのと、話の構成をちょっと変えちゃって新年早々勝手に困ってるだけです!


【挨拶】
 今年もお世話になりました。沢山読んで頂けて嬉しかったです。ブックマークはもちろん、コメントやスタンプなどもして頂き、本当にありがとうございました。
 ここからが渋谷事変本番ってところで暫くお待たせします…。
 話の進み方も遅く、じれったいかもしれません。ですが地道に進めて参りますので、今しばらくお待ち頂けると嬉しいです。
 また来年、お会いできれば幸いです。よいお年を!
追記2023.12.22:皆様スタンプありがとうございます!
(コメント返信だと自分のコメントがめっちゃ増えてなんとなく嫌なので、ここでお礼を言わせていただきました。)

#夢術廻戦 #オリ主 #オリキャラ #五条悟 #真人(呪術廻戦)
2023年12月17日 06:42



 彼の動きが鈍くなり、刃は藻掻くのをやめた。制服越しの感触が、硬く歪なものから人の柔らかさへと戻っていく。
 張り詰めていた糸が緩んだように、彼の身体から力が抜けるのが分かった。

 ――そのとき、背後からの異質な気配を察知する。

「獄門疆、開門」

 僕の背中にはまだ刃が突き立ったままだったが、そんなことは言ってられない。
 そのまま衛を抱えて、この場から離脱を……しようとした僕の視界に、草履を履いた足が入りこんだ。

 眼に入ったのは見知った呪力で、自然と視線がその全容を確かめようと上を向く。
 彼を抱えた向こう側。そこには、

「や、悟。久しいね」

 “俺”が殺したはずの



   親友。




 ――偽物?

     ――変身の術式?

   違う

  本 物 !!


 瞬間、溢れ出す―― 三年間の青い春。




 刹那の内に流れゆく記憶の中、思考に掠めた、腕の中の記憶。彼が残したメッセージ。

『1031』 『 428 』 『 ∧5 』 『 GET 』

 ハロウィン、渋谷。僕の前に現れた――夏油傑 Geto 』。

そして、

  「に、っぇ…………
  「ごぇ……ぁ、な……

逃げろ五条さん  これはワナ

『 ^5 』 『 GET 』


 腕の中の存在を突き放す。敵のいない方向へ。――それを待っていたかのように、僕の身体に刺さっていく何か。
 背後からの奇襲、正面からの陽動。どちらの接近にも気づけなかった。衛と獣鉤手に気を取られている隙を突かれた。

 何をされたか不明だが、呪力を感じられない。身体に力も入らない。まんまと嵌められたようだ。
 手も足も出せず、相手のことを見上げる。

……僕を捕まえるための舞台ってわけか」

「やっぱり。逃げ出したときに、何か残しておいたようだね。今日はフリーだった呪術師や補助監督が多いみたいだし、この渋谷への招集もスムーズだった」

「僕の生徒は優秀だからね」

 そうしている内に、脇に投げ出された衛の意識もハッキリしたらしい。
 僕らのやり取りに彼が叫ぶ。

「五条さん! なんで来たんだ!!」

「罠だとしても来るしかないじゃん」

 僕の返事を聞いて、衛は歯を食いしばる。そして、諦めず相手に飛びかかった。

「おっと」

 衛は相手に掴みかかったものの、ヒラリと躱されている。
 獣鉤手から受けていたダメージが大きいのだろう。彼はフラつき、床にまた崩れ落ちた。

「君に触れられるのは御免だね」

 相手はそう言うと、僕のほうに向き直った。

「ダメじゃないか、悟。生徒に気を取られて、周囲への警戒を疎かにするなんて」

 わざとらしく取り繕われた夏油傑の姿。話し方も傑本人に似せられてはいる。だが、違和感しか湧かない――

「で、誰だよ」

「夏油傑さ。忘れてしまったのかい? 悲しいね」

「嘘を、つくなァッ……!!」

 立ち上がることもままならず、地面に突っ伏したままの衛が声を絞り出した。
 傑のフリをした何者かは衛のほうを流し見て、そちらに歩み寄る。傑の顔で微笑み、そして、衛の頭を蹴り飛ばした。

「うるさいよ。私と悟で話してるんだ。邪魔しないでくれるかい」

 その声色は、傑が真希のことを猿だと侮蔑したときに似ていた。

 衛はサッカーボールみたいに蹴り出され、無量空処で気絶している人たちを巻きこみながら、地面を転がった。双方怪我はないようだが……今の衛に“コイツ”の相手は厳しいだろう。

……確かに、六眼 この眼に写る情報はお前を夏油傑だと言っている」

 でも、六眼は完璧じゃない。騙されることがあるのを僕は知っている。

 衛に向けていた視線を前に戻し、傑を隠れ蓑にして潜む何者かを見据えた。
 僕の……“俺”の感覚は正しい。そのことはすでに肯定されている!

――だが、俺の魂が否定してんだよ!! さっさと答えろッ! お前は誰だ!!」

 ……額の縫い目から糸が引き抜かれ、水気が滴った。

「キッショ。なんで信じる わかるんだよ」

 頭蓋が開き、相手はその正体を現した。――口の付いた脳みそ。それがコイツの本体だ。


「そういう術式でね。脳を入れ替えれば肉体を転々とできるんだ」

 傑の ガワを被ったソイツはペラペラと喋った。
 僕を無力化できたのが、さぞ嬉しいらしい。僕が硝子に処理を頼まなかったおかげで楽だったとまで さえずる。

「でもガッカリだよ。封魔はともかく、五条悟にまでバレるとか」

 相手は脳を晒し、脳脊髄液らしき液体を滴らせているが、大したことではないらしい。
 どう考えてもお前のほうがキショいだろ。

「昔に比べれば、封魔にだってバレなくなったのに。封魔の力も代を重ねるほど衰えてきてね、彼のとき……そう、蒼祢……彼のときは、肉体の血の繋がりもあってか、完全に騙せたんだけど」

 ソイツは外した頭の上部を戻しながら、「そもそも彼は封魔の中でも鈍いタイプだったけれどね」と、昔の人物を小馬鹿にする。
 どんだけ昔の話をしてやがる、クソ呆け老人がよ。

「どうして分かるのか、ずっと不思議だったんだ。ここ最近でようやく理解できたよ」

 相手は僕から視線を外して、そこでやっと衛のほうにも目を向ける。息を乱し立ち上がれないままでいる衛のことを、相手は見下ろした。

 その態度は衛のことは気にかけていないというより、“気にしている態度を取りたくない”らしい。
 話の引き合いに出す割に、『封魔』のことを下に見ているのが見え見えだった。

「でもね、私の描く新しい世界に『封魔』は要らないの。自らを抑制し、人の枠に収まったまま退廃していくなんてナンセンスでしょ」

 相手は額の縫い目に糸を通しつつ、こちらに目線を戻した。

五条悟 は私の目的には邪魔なんだよね。……君さ、強すぎるんだよ。だから、こうするしかなくてね」

「忘れたのか? その身体が僕に殺される前、誰にボコられた」

「乙骨憂太か」

 傑の頭を戻し終わり、余った糸をプツリと抜き取った相手は、つまらなさそうに憂太に対する評価を語った。
 その総評は憂太のことを舐めているものだ。そして、的外れもいいところだった。

「心配しなくても、百年後か……いや、千年後かな。この封印も解くよ。運が良ければ君たちもまた会えるさ」

 ちっともそうは思っていなさそうな声色でそう言う。
 声は傑だけど、やはり全くの別人だ。

「おやすみ、五条悟。新しい世界でまた会おう」

「俺はな。お前はそろそろ起きろよ。――いつまでいいようにされてんだ、傑」

 俺の声に呼応したように、傑の肉体が動いた。

「なッ!?」

 予期しなかった動きに相手も愕然とし、自身が操っているはずの手に首を絞められている。

「衛、――

 その隙に僕が衛のほうを向けば、呼ばれた彼は驚いた表情をしたままこちらを見た。
 ……ごめん、今の僕にはこう言うことしかできない。

作戦 フォーメーション『いのちだいじに』!」

「こんッな、ときまで!!」

 衛は「バカじゃねぇの!?」というニュアンスで怒鳴った。想像通りの反応で、こんなときなのに笑ってしまう。
 さらに彼は何かを言い返そうと口を開いたが、何かに気づいたのかハッとした顔をする。他の方向を気にするように視線を動かしつつも、それでも尚、彼は僕のことを見た。

「五条さん、俺、」

「詳しい話はこの件が終わってからじっくり聞かせてもらうから。ハイ、迷わず駆け足~」

……わかった」

 衛は言いたいだろうことを全部飲みこんで、僕の言葉に頷いた。

 泣き言も弱音も質問も、敵も僕も……全て置き去りにして、彼は駆け出す。

 このまま戦い続ければ、衛は死んでしまう。無理を承知で戦わせていたのは僕だけど、こうなってしまっては彼一人じゃどうしようもない。――だけど、渋谷 ここに来てるのは僕だけじゃないから。


 事態は好転せず悪化するばかりだ。
 だけど……彼はちゃんと帰ってきた。それはこの状況において福音だった。