MN*B
2024-06-20 22:18:09
3726文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

屋根の上、しゃぼん玉

この小説は【蠱毒な夢術廻戦】シリーズの番外編です。

0巻以降のリカちゃんは…まぁつまりこんなことなんじゃないのかな、と解釈して書いてます。
里香ちゃん本人じゃなくて、乙骨憂太の中にある里香ちゃんのイメージ。そしてそれの具現化というか、自分の力を扱いやすい形にしたものかなと。
※別に、小説内にリカちゃんは出てこないです。

 
【時系列】
過去から順に、
この話:乙骨先輩とのやり取り(2P目)
E.5:虎杖との会話(15P目) https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15064522
E.8:虎杖の回想(10P目) https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15297026
E.5:虎杖との会話(16P目)
この話:虎杖とのやり取り(3P目)
…っていう時系列です。
書き手が言うのもなんですが、ややこしいですね。

 
このシリーズでの虎杖は、たぶん原作より隠匿生活を満喫してると思います。
しかし…青嶺は気にしますが、虎杖本人が気にしない部分は多そうですね。
青嶺は相手に対して気にしいなタイプで、虎杖は割と自身に無頓着(だと思ってます)なんで、地味に噛み合ってない二人だと考えてます。
あと、これで仲良くないって態度をとろうとする青嶺はアホの子です。

…ところで、パンダ先輩の数え方は一人、一匹、一頭…どれですか…。今回はわかりやすいように、一体としておきました。
書き手としては、一人扱いですかね。場合に寄りけり、わかりやすさ優先ですが。

 
表紙は、かんたん表紙メーカーさんからお借りしました。


#オリ主 #夢術廻戦 #乙骨憂太 #虎杖悠仁
2021年6月14日 19:17



 春の晴れた日。
手から下げたビニール袋が、ガサガサと音を立てる。
開けた場所を探して、俺は高専敷地内をうろついていた。

毎日、建物の配置が変わるって話は聞いてた。聞いてたけど、建物の内容までランダムじゃ、適した場所があるのかわかんねぇな
そう考えながら道を進んでいると肩を落としているように見える乙骨先輩が、前から歩いてくるのに気がついた。

「はぁー

俯きがちに、ため息をついている。
そしてそのまま、俺の横を通り過ぎていこうとしていた。

「乙骨先輩?」

「うっわぁ!!びっくりした!青嶺くんか」

あっ別に青嶺くんが悪いわけじゃなくて!と、あたふたし始める乙骨先輩。
やっぱ気がついてなかったのか。どんだけ考え事してたんだ、危ねぇぞ。

どうかしたんスか?」

「えっ?あーうん、その。ちょっとね」

歯切れの悪い返答だ。何か悩みでもあるのだろうか。
でも悩んでるとしたら、いきなり聞くのもあれだな
そう思った俺は一旦、話題を変えることにした。

高専で、開けた場所ってないっスか?」

「開けた場所?んーいつも変わるからね、今日だと……あ!」

乙骨先輩は何かを思いついたような声をあげる。

「それって、地面じゃなくてもいいかな?」



 高専敷地内に広がる寺社仏閣それの屋根の上に、俺と乙骨先輩は座っていた。

「驚いたなぁ青嶺くん、跳躍力あるね?」

隣に座っている彼は、すごいねと言わんばかりの表情をしていた。
アンタだって同じことしてるんだが。

「まぁってか、なかったらどうするつもりだったんスか?」

僕が抱えるしかなかったね!?」

焦ったように、空笑いをする乙骨先輩
この人、結構抜けてるな?
そんな俺の視線に気づいたのか、彼は恥ずかしそうに急いで話題を変える。

「そういえば、なんで開けた場所に用があったの?」

これです」

そう言いながら、俺は手にぶら下げていた袋からそれを取り出した。

「うわ~!懐かしい!シャボン玉だ」

蛍光色の小さいボトルを見て、彼はそう声を上げた。

「それなら確かに開けた場所じゃないと困るね。寮の近くだと洗濯物とかあるし僕も小さい頃やったなぁ」

懐かしそうに。そして少し寂しげに、乙骨先輩は笑った。

「仲の良かった子がいたんだけどねその子とやったことあるんだ」

……あの。駄々洩れなんだが」

「へ?何が?」

無自覚かよ。一種のテロだな。
俺は口の端を下に引き下げて、なんと言えばいいのか迷った。

「え!なに!?僕、なんか変なこと言ったかな!?」

乙骨先輩はまたアタフタとし始めて、正直に話してくれていいよ!?と俺に言う。
俺は口をもごつかせて結局、素直に言うことにした。

仲が良かった、どころじゃない。その上、ちょっと現在進行形だろ。でも、」

そこで俺は一旦言葉を区切って彼の様子を窺った。

「でも?」

彼は困ったように笑って、先を促した。
俺は、当てはまる言葉を探して、視線を揺らがせた。

「アンタの心の中に住んでる、過去のものとして。良い別れ方したんだろ」

破局したにしては惚気に近く、死別にしては晴れやかだ。
思い出として受け入れている感じ高校生にしてはすごい恋愛観だな。
心の整理がついている、と言ってもいい。

君って、初めて話したときもそうだったけどなんでそこまでわかるの?」

彼が不思議そうに尋ねてくる。

「見て聞けばわかる。言葉と態度に滲みでてる」

分かりやす過ぎなんだよと、俺は重いため息をついた。
それを見た彼は、そんなに分かりやすいかな?と申し訳なさそうだ。
別に彼が悪いわけではないのだが

 横目で彼のことを見れば、彼は視線を落とし、言葉をまとめるように手を組み合わせている。
そして、意を決したように口を開いた。

「その過呪怨霊って習ったかな?」

「かじゅ?仮想じゃなくて?」

「うん。特定の個人に対して、とり憑いた呪霊のことだよ」

ある意味、幽霊の定番っぽいタイプか
そう考えながら、彼の話に浅く頷きを返し、先を促した。

「少し前までの僕にも、里香ちゃんっていう子が憑いてたんだけど普通とは事情がちょっと違ってて

「僕はね死んだその子を呪ってたんだ。それでずっと縛って、そばにいてもらってた」

もう呪いは解呪して、その子は成仏しちゃったんだけどね。
乙骨先輩はそう言うと前を向いて、視線を遠くへやった。

「君の言う通りだ。彼女はいっちゃったけど今も僕のそばに居てくれてる」

そう語る彼の横顔を、俺は見つめていた。


どうぞ」

俺は彼へおもむろに道具を差し出す。
差し出された彼は困惑した様子で、それと俺の顔を見比べた。

「え、僕もやるの?」

「二つあるんで」

「そそっか。うん、僕もやろうかな」

戸惑いながらも彼は受け取り、小さいボトルの蓋を開ける。
それを見た俺も、同じように蓋を開け、ストローの先を漬けた。

 二人してシャボン玉を吹き始める。
空には、いくつもの虹色の玉が浮かび、風で流れていく。

歌を思い出すね。しゃーぼん玉飛んだーって

屋根まで飛んだーって

屋根から飛ばしてるんだが」

「あ!本当だ!」

彼は俺と顔を見合わせたあと、楽しげに笑った。






 少し離れた場所上のほうから笑い声が落ちてくる。
それを見上げる二人と一体がいた。

「何やってんだ、あの二人

怪訝そうに見上げる真希。
それと同じように、残りの一人と一体狗巻とパンダも、見上げながら喋る。

「しゃけしゃけ」

「シャボン玉飛ばしてるな」

それを聞いた真希は、小学生かよと皮肉めいた口調で呟く。


春の晴れ空に、上へ登っていく泡がきらめいていた。







ところで、何悩んでたんスか」

あんなデカいため息ついてと俺は、今なら聞けそうだと思って話を切り出した。
そもそも彼に話しかけた理由がそれだ。

乙骨先輩はシャボン玉を作る手を止めると、おずおずといった風に話し出す。

「えぇと悩んでたっていうか決まったことなんだけど僕、海外に行くことになってて」

「マジすか」

「ホント。みんなと離れるのヤだなぁって、ちょっと暗くなっちゃった」

海外に行くのが嫌なんじゃなくて、同級生と離れるのが嫌なのか
そんなことを思っているとこちらを向いて、控えめに笑いかけてくる乙骨先輩。

「でも、君と話したおかげでそうでもなくなったかも」

なんでだ。マジで話聞いただけな上に、むしろ突っ込んだこと言ったよな、俺
ちょっと困惑していれば、彼はさらに言葉を続けた。

「離れても、心はそばにあるからね」

うわ、マジでその手の攻撃やめてくれ
俺はとっさに顔を逸らし、彼から視線を外した。

「ど、どうかした?シャボン液、目に入った!?」

顔をしかめて目をつぶった俺に対し、彼はそう言って慌てる。
サングラスしてんだから、そう簡単に入んねぇよ……

深く息を吐いた俺は、手に持った蛍光色を軽く揺らす。それにはまだまだ中身が入っていた。

慣れねぇことはするもんじゃないな。