MN*B
2024-06-20 01:50:37
15296文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

人生一年生、入学。そして任務。

シリーズ中第14話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
 この小説、ひいてはシリーズの閲覧および、ブックマークやいいねなど、ありがとうございます。
このシリーズは、今回でまたもう一山越えることができました。
本当に、読んで頂けるだけで嬉しく、励みになっております。
 もちろん、まだまだ続きます。むしろこれから本番が始まります。
よろしければ、これからもこのシリーズにお付き合い頂けると幸いです。
 今回、『人生一年生、』バージョン最終回です。
任務回なので、ちょいキモ描写あります。言うほど細かく描写はしてないですけど。
制服についての描写がありますが、イメージしにくいという方はイラストもありますので、良かったらどうぞ→ illust/88073855
最後に、独り言的なあとがきがあります。これからの傾向(いわゆる救済をするか否か)なんかを書いてます。気が向かれたらどうぞ。
 次回は、一週間から二週間の間を空けて投稿すると思います。
話の流れがもう決まってるようなもんなので、今後は今までより楽に書けると思いますが、ちょっと休憩入ります。
というか、家から出れない呪術師として任務に参加してくるんで…。
わかりやすい攻撃する呪霊書いたら、これ某滅するやつの手の鬼っぽいな…ってなりました。
書き手のイメージとしては、手の塊とそれと繋がってる脂肪みたいな感じですけど。
あと、たんぽぽって言わせるだけで一人笑ってます。
書き手が言うのもなんですが、青嶺を立たせとくだけで、五条さんと伏黒がタンポポ言ってくれるの凄くないですか。
【バルカン人式挨拶 #とは】
伏黒の玉犬の手の形で、人差し指と中指、薬指と小指が引っ付いてるじゃないですか。
その状態での挨拶がありまして…っていうネタです。
書き手はそのネタが出てくるだけの別ドラマしか見たことありませんが。

#オリ主 #夢術廻戦 #伏黒恵 #五条悟
2021年2月28日 00:10



 俺たち三人が乗り物を乗り継いでやってきたのは、いかにも出ますといった風情の建物の前だった。
周りが林に囲まれていて、大きな駐車場まである。奥行きはわからないが、相当広い敷地だった。
その大きな建物を眺めていると、五条さんが説明を始めた。

「ここ、映画の撮影に使われたりした廃ホテルなんだけど出るようになっちゃってね」

「老朽化で取り壊そうって決まったんだけど、呪霊が邪魔して中止。そこから噂が広まって、そこそこな数が集まっちゃった」

つまり、課外授業とは。

「任務じゃないですか。これなら現地集合で良かったでしょう」

伏黒はそう言いながら、ジト目で五条さんのことを見た。
まぁ確かに、教室に居た意味全然なかったしなと、俺も思わず頷く。
そんな俺らに対して、当然のことを諭すように彼は言った。

「いや初日は学校スタートでしょ!」

言いたいことはわかるが、結局すぐ出て来てるじゃねぇか。
俺は伏黒に同意を求めるように、チラリと視線をやった。
彼は俺の意図を汲み取ったのか、呆れた様子で口を開いた。

「五条さ「先生!」先生って、こういうとこあるからな。時間通りに来ないし」

伏黒の言葉に横やりを入れてまで、先生呼びさせたぞこの人
俺もジト目で五条さんのことを見た。そんなんだから先生って呼んでくれる生徒が全然いないんだぞと、今まで会った先輩たちのことを思い返した。
いま口を開けば、俺も先生呼びを強要されそうなので、それは黙っておくことにする。


とりあえず、ここに呪霊がいるってことだよな?」

俺は話を逸らすことにして、そう言いながら目線を建物に戻した。
全然わかんねぇけど。お化け屋敷用の建物ですって言われたら、ちょっと納得できる見た目はしている。

「どれくらい中にいるんです?」

事前情報はあるんですか。と伏黒が尋ねている。
五条さんは思い出すように、んーっとと話し出す。

「3級多めで4級もそこそこ5体以上10体未満って感じ。中が広くてさ、いろんなとこに散らばってるみたい」

これ見取り図ね。と五条さんが渡してくる紙を、伏黒と二人で広げて見る。
見た目通り、中も広そうだ。

「電気は止めてあるし、古い建物だから足元に気をつけてね」

実戦経験ない人間を連れてくる場所じゃないですよ」

「そこは恵がカバーしてあげてよ。それに索敵って観点からすると、衛は足手まといにはならないんじゃないかな」

話を聞いた伏黒は、俺のほうを見てくる。
俺にもよくわかってねぇから見ないでくれ。

「あの建物からする気配衛はわかんないよね?」

五条さんが確認するように尋ねてくるので、俺は素直に頷いた。
それを見た伏黒が、こんだけ気配すんのにわかんねぇとかマジかと、呟いている。
音は?とさらに尋ねられたので、俺は少し耳を澄ませた

さすがにまだ距離があるから聞こえねぇ。けど、周りが静かすぎて変だな」

この春の陽気のなかで、鳥の鳴き声すらしない周りに木々が多いのもあって、それが不穏な感じだった。

「この通り、衛は呪霊の気配を察知するの苦手でね。その代わり耳がいいから、こういう辺鄙で広いとこを探すには向いてるんだ」

五条さんは、伏黒へそう説明するが彼は怪訝そうに言う。

「呪霊が音を立てますか?」

その質問に対し、五条さんは言い切った。

「立てなくても衛には聞こえてるんだよ、その呪霊の元になった負の感情がね」

このことに関して俺にはよくわかっていないがそういうことらしい。

普通は呪霊本体が何かを喋らないかぎり、声や言葉というものは発さないものだという。
なんで聞こえるのかという疑問も、体質かな?で終わりだった。


「そうそう衛って本当に呪術初心者だからさ、恵の術式見せてみてよ」

驚く顔見てみたい!とはしゃぐ五条さん。アンタ見たことあんだろ。
俺と伏黒は各々の理由で、冷たい目をして彼のことを見た。

伏黒は見取り図を懐に仕舞いながら、ため息をついた。
そして、結局出すのは変わんねぇだろうしなと呟き、両手を独特の形に構えた。

玉犬」

そう言った伏黒の影が蠢き、立体的に形作られていったかと思えばそこには二頭の大きな犬がいた。
片方が大きく遠吠えをする。
白と黒の二頭とも、額には変わった文様が描かれている。

「恵は式神使い。こうやって式神を呼び出して使役してるんだ」

なるほどまさしく呪術師って感じだ。よく小説とかで描かれているのは、こういうタイプだろう。
黙ったままそれを観察していた俺に、五条さんはガッカリしたように言った。

「なんであんまり驚かないの君、この間まで一般人だったよね?」

ぶっちゃけお手本みたいな呪術が見れて感動じみたことは感じる。が、驚くということに関してはすでに、五条さんのせいで出尽くしてるような気がするんだよな。
水の上歩いてるし、瞬間移動するし、空中に放り出されてるし

俺がそう思い返して黙っているうちに、五条さんはぐいぐい来る。

「なんか感想ないの?恵も待ってるよ」

「待ってません、要らねーからな」

五条さんへ否定しながら、俺へ念を押してくる伏黒。
そんな二人を見て、どう答えても面倒なことになると思った。
こういうときは、話をうやむやにしたほうがいいか。

記憶を漁ってみた俺は、考えた末に言った。

「伏黒って、バルカン人式の挨拶できそうだな」

それを聞いた二人はポカンとしてこちらを見た。
やっぱ通じねぇよな。と頷こうとしたら、五条さんの思考が復帰する。

「いや君、歳いくつ!?スポック知ってるとかマジで!?」

俺の実年齢知ってるだろアンタ
しかもネタ通じてるし。

「そういうアンタだってネタ通じてんじゃねーか。大体新しいシリーズ最近あってただろ」

それを見る予定だったやつはもういないが。

「アメリカでね!!わかりにく過ぎて恵がついていけてないよ!?」

そう言って五条さんの示す指の先では、話に乗り切れなかった伏黒が呆気にとられた顔をしている。
そりゃわからないの前提で話したからな伏黒は完全に巻き添えだが。
そんな伏黒に補足をいれる五条さんだった。

「彼が言ってるのはアメリカのSFドラマの話ね」

映画もあるぞ。と思ったが、それは黙っておいた。


 ちょっとだけ調子が崩れた様子の五条さんは、テキトーな態度で俺たちに告げる。

「念のために帳は下ろしとくけど、僕が殲滅を確認するまで解けないから。頑張ってね」

僕はここで待ってるから。その言葉を背にしながら、俺たちは建物に近づいていく。
途中で、思い出したかのように五条さんが声をあげた。

「あ、衛。呪法は使っちゃいけないし、袖からは呪具しか出しちゃダメだよ」

俺は振り返って、頷いてみせた。


 俺が出すことのできる黒い拳銃。
それは呪法というものらしいその名も祓禳(ふつじょう)呪法。
発動条件が不明であり、反動が大きいため、むやみ使おうとするなと夜蛾学長から教えてもらっていた。
許可制で、命に係わる状況でのみ自己判断で使用可とまで言われている。最終手段すぎる。
まぁそれこそ、そのとき出すことが出来るのかも怪しいんだが。

 そして、呪具 獣鉤手。それを隠すのが、俺が今着ている制服。
上着が俺の体格より大きめのオーバーサイズで、袖口が俺の手よりも長めに作ってある。
肩口が二の腕辺りにあり、そこから袖の着脱が可能になっている代物だ。一度外すとボタンを留め直すのが面倒だが、いざという時のために取り外しができるようになっている。
手や腕を隠せる代わりに、少し動きにくいことになっているから、それを解消するための造りだった。
高専は制服のカスタムが可能で、これについても夜蛾学長と家入さんと相談して決めた形だ。

 呪具の見た目が、正直グロいというかショッキングなんだよな
刃を出していない状態だと普通の腕なんだが、出すと皮膚から鋼が葉脈みたいに浮き出す。
拳から刃が生えるだけでもヤベーのに、腕もヤバくなるので、制服をこういった形にせざるを得なかったのだ。



 帳という結界術が下りていくと、周りは薄暗闇に包まれた。
俺たちは廃ホテルの入口に立って扉を確認する。チェーンがかかっている。
両開きのそれをガタガタと揺らしてみるが、扉自体にも鍵がかかっているようだ。

「鍵かかってんじゃねぇかったくあの人、伝達ミスも大概にしてくれ」

伏黒は面倒くさそうにため息をついた。
それを聞きながら、俺はその扉を観察していた。

材質は主にガラスあまり厚さもなく、ロックがかかっているのはおそらく上と下部分にある。
そこに嵌っているガラスは埃で曇り、向こう側を見透かすことはできない。
耳を当てて、音を聞く。たぶん奥に呪霊いるな。

「伏黒。これ、向こうに呪霊いるぞ」

それを聞いた伏黒は顔をしかめた。

「どっか別の入口探すか、近くの窓割って入るしかないな

その言葉で俺は五条さんの言っていたことを思い出し、少し考えて彼の思いつきそうなことに行き当たる。

怪訝そうにする伏黒を下がらせて、俺は扉の前に立った。
扉がデカいので、片足を引いて半身の構えをとる。

「マスターキーがあるからか」

そう言いながら、大きく腕を振った。

ヒュッと、刃が風と共に目の前を切り裂く。

ギッと短く甲高いガラスの悲鳴が鳴り、横に細断された扉は辺りに落ちて散らばる。

その向こうには薄暗い室内が広がっており遮る物がなくなったせいで、先ほどよりも大きく怨念の声が耳に入った。
相手は、すぐにはこちらに向かって来ないようだ。

呪霊、もう少し奥にいるみてぇだな」

そう言いながら俺は、伏黒のほうを振り返った。
彼は呆気にとられたような顔をしている。本日二度目。

入らないのかと俺が首を傾げると、彼は気を取り直すように喋った。

「玉犬 白と俺が先行する。何かあったら言えよ」

伏黒はそう言うと、割れたガラスを避けながら、白いほうの式神犬と共に中へ入っていった。
俺もそれに続いて入ると、その後ろから黒いほうの式神犬もついてくる。


 俺ら二人分の足音と、テチテチといった感じの犬の足音が反響する館内。
少し歩いただけで、式神犬たちはグルルルと唸り声をあげた。

開けた空間であるホールには、色褪せ壊れかかったソファーや、足の折れたローテーブルが転がっている。
中の家具を処理する時点で、呪霊が邪魔をしてきたようだった。

受付カウンターに遮られた向こう側、おそらくその台の下で恨み言を吐く呪霊が一体。
そのうえ、端の方にある公衆電話ブースでは、ジリリリリ!とけたたましく電話が鳴っている。
うるせぇ。

俺は顔をしかめながら、伏黒に尋ねた。

「どうする?」

彼は俺の問いに応えず、式神に命令を出す。

「やれ、玉犬」

二体の式神犬は、唸り声をあげて受付の向こうへ飛び込んでいった。
見えないそこで、グチャグチャと何かを噛み砕いてるような生々しい音がしている。
俺はそれに少し引いてから、相変わらずうるさく鳴っている方向を見た。

電話のほう確認してくる」

そう言って俺が歩き出すと、伏黒が軽く引き留めてくる。

「待て。俺も行く」

それに頷いて、二人で音の元へ向かう。

寂れた公衆電話ブースでは、一つだけ残った公衆電話が激しい自己主張を繰り返している。拡声器もかくやといった、割れて鈍く淀んだ音と化した声が甲高く響き、耳に悪い。
俺はそれから少し離れた位置で立ち止まり、伏黒のほうを窺った。

いいか?」

あんまりにもうるさいので、さっさと黙らせたかった。
彼は訝しげに俺のほうを見たあと、頷いてくれる。

俺は相手が動き出す前に一気に近づき、公衆電話とその一帯をなで斬りにする。
念のため周りごとやったが、ちょっと力入れすぎたなと、壁にまで傷が入ったのを見て反省する。
しかし、音が止んだことで耳へのストレスが減った。電話線が生きてるとは思えねぇ場所で擬態するなよ。

辺りを見回すようにして、周りからの音を確認していく。
このホールにはもういないが、少し進むだけでまた出くわしそうだ。

「さっさと先行くぞ」

そう急かされるままに、俺は足を進めた。