MN*B
2024-06-20 01:19:15
8574文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

人生一年生、学長と面談する。

シリーズ中第7話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
 お久しぶりです。
今回は今までに比べると短いです…半分くらいですかね。
これから何話かは、タイトルに「人生一年生、」がつく閑話のような話が続く予定です。
原作(アニメ)軸にたどり着いたら、またタイトルの雰囲気変えます。
 このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね。いつもありがとうございます。
シリーズ累計のブックマークといいねが100を超えました。
嬉しい…嬉しい…(拝み)。ありがとうございます。
あ、でも、しおり替わりにブクマして頂いても大丈夫です。お好きに付けたり外したり、お構いなくどうぞ。
 原作0巻だけ読みました。
あっぶね~~~!!時系列ニアミスしてましたね。
現状被ってはいなさそうなので、このままいきます。
この話を書いたあとに0巻を読んだので、ちょっと内容考えました…。
乙骨憂太と理由が被ってないかと思いましたが、厳密には違うと判断してます。
というかこの小説の主人公は、あえてどのキャラとも被る部分があるように作ってるので…。 
 構図としては以下。
 虎杖は、半分呪いであり、ある意味二つの人格が一つの身体を共有してます。
それに対し、青嶺も呪いになりかけで、複数ある人格のうちの一つでした…虎杖とは逆に人格が減ったという違いがあります。
 釘崎はド田舎出身で、酷い人間が多い描写、雪が積もる地域に住んでいました。
青嶺も同じように田舎出身ですが、そこに住む人の人間性は歪んでおらず、雪は殆ど降らない地域です。 
そういった違いを出しているつもり…です。
あとサングラスなのは、一年に眼鏡キャラいないからですね。
普通の眼鏡でもいいかと思いましたが、戦うときに不利だな…と思いまして。
五条先生との違いは、オシャレ用じゃなくて実用性のあるスポーツサングラスって点ですかね。

#オリ主 #夢術廻戦 #家入硝子 #夜蛾正道
2021年2月6日 14:53



 家入さんに連れられて、俺はお寺のお堂のような場所へたどり着く。
中は蝋燭で照らされているだけの、いくつもの柱がある広い空間だ。
その正面奥に、ぬいぐるみで囲まれた厳ついオッサンがいた。
その彼の手にも、作っている途中らしきぬいぐるみがある。

「夜蛾学長、連れてきました」

家入さんは何事もないように、その人へ話しかけた。
が、学長だった最近流行りの手芸男子ってやつだろうか。
なんでこんなところでやってるのか、という疑問は消えないが

「早かったな、家入。彼が目覚めてから異常は?」

「ありません。意思疎通も問題ありませんでした少し従順すぎるくらいです」

本人がいる前で言うのやめてくんねぇかな。
大人しくついてきたの、なんか変だったか?
自分の行動を振り返って、内心首を傾げた。


 家入さんは話し終わると、数歩後ろに下がった。そして、学長と呼ばれていた人が、こちらを無言で見つめてくる。
こっちの発言を待ってるってことでいいよな。

俺は一歩前に出て、少し頭を下げた。

「青嶺衛です」

「君は何しにここへ来た」

面談、と聞いているし、何か試されているのだろう。
抽象的な物言いだが、彼の本意は何だろうか
黙ったままの俺を見て、彼はさらに話を続けた。

「呪術高専は、呪いやそれを祓う術を学ぶ場所だ。だが、それで終わりではないその先がある」

「呪術師になれば、呪いや血反吐、死を数多く見ることになる。普通とはほど遠い世界だ」

確かに。今までの常識が崩れるような、そんな場所だろう。
俺はあの夜のことを思い出して、唇を引き結んだ。

「まともな神経では生き抜くことなどできない。呪いとの戦いへ身を投じ続けるその覚悟や動機が、君にあるのか?」

呪霊は、恐ろしくて醜くて人の命を奪える存在。それと戦うのが呪術師。
学校は過程でしかなく、その先も呪いとの闘いが続く。  
呪術師になるということはきっと生涯、呪いと関わり続けなければならなくなる。
生半可な気持ちで、この世界には居ることなどできないだから、それができるだけの理由を聞いている。ということなのだろう。


 なぜ俺はここにいるのか、どうして呪術師になるのか。
それは、『呪術師』と『死』という二択を差し出されて、片方を選んだだけ。
それだけでは、理由として不十分な気がした。
そこに俺の意思は、関与しているとは思えなかったから。


 黙ったままの俺を見続けていた学長だったが、しびれを切らしたかのように立ち上がった。

「君は考えなければ、すぐには答えを出せないようだなその程度の心構えなら、入学を許可することはできないぞ」

そう言いながら構えた手の下で、ユラリと立ち上がるぬいぐるみ!?
彼の周りにあったうちの一つペンギンの形をしたぬいぐるみが、ブルブルと身震いをした。

「呪骸これには私の呪いがこめられている。それによって自立し攻撃を行うことができる

言うが早いかそのペンギンは氷の上を滑るように、物凄いスピードで床を移動してこちらへ向かってくる
俺が咄嗟に横へズレると、ぬいぐるみは今まで俺がいた場所を猛スピードで滑り抜けて行った。
そして壁にぶつかる前に急カーブを行い、方向転換をしてまた俺の方へ向かって来ている!

これ攻撃って……俺を、だよな!?
俺はこの状況に混乱しつつ、避けられるように構えた。
ペンギンのぬいぐるみに轢かれそうとか意味不明すぎる!!

滑り飛んでくるぬいぐるみを避けていく俺だったがそんな最中にも、学長の言葉は続く。

「君は呪霊のことを神として見ていたらしいな。田舎や非呪術師としてはありがちな思想だ。しかしそれは、呪術師としては命取りだ」

「呪いは人を襲うこれは変えられない現実だ。君の故郷にいた呪霊が特殊だっただけだと思え」

同じ呪霊でも、水神様は守ってくれた側だったが、本当は牛鬼のような存在ばかりなのが当然
ヒイラギさんから最初、見逃されたのだって偶々偶然の重なりばかりだったというわけか。
そう考えた俺の顔の横を、ペンギンのヒレが風を切って通った

「ほかにもそんな呪霊がいるかもしれない、とは考えるな。その判断を下す時間で、一体どれだけの犠牲が出ると思う」

考えれば行動が遅れるわかっているのに、考えずにはいられなかった。
今のこれが本当の戦い、呪霊が相手だったら。

「君が死ぬだけならマシだ。だが周りの人間が、その一瞬の間で呪いに殺されるそういう世界だ」

俺は避けるばかりで、攻撃にまで手が回らない。
迷いがあって、考えを巡らせていて動きが鈍るから。

その思考を遮るように、対峙しているぬいぐるみの目が光った。
今までとは桁の違う速さで向かってくるそれに、俺は反応できない。


「死と隣り合わせの私たち呪術師には、悔いのない死などない」


その言葉が耳に入ったとき、

  「悔いを残して死にたい」

誰かの記憶が聞こえた。


タオル生地の頭が、鈍器のように俺の腹へ突き刺さる。
その衝撃で息が止まり、そのまま後ろへ投げ出された。

「君は何を求め、何をしに、ここへやってきた」

その声が遠くに聞こえた。


記憶_人は死んだらどうなるの?
 幼いころ。
お母さんが仏壇に手を合わせていた。それを見て、そう尋ねた。
お母さんはこちらを見て、困ったように笑った。
「悔いのないように生きなさい」
そう言われて、不満を感じた。
結果を聞いたのに、過程を答えられたから。
そして理解した。
大人はなんでも知っているわけじゃないってことを。


 ふっと記憶から目の前へ意識を戻せば、暗い天井が見えた。
背中から倒れこんでいた俺は、拳を握りしめながら立ち上がる。

悔いって、なんだよ」

俺の周りを遊泳するように、ぐるぐると滑り続けるぬいぐるみ。
それを無視して、俺は学長を見つめた。

「死ぬときに後悔するってことか?やり残したことがあるってことか?それって悪いことなのか?」

詰め寄るように、一歩前へ出た。
俺は彼へ質問をしているようで、でも答えは求めてはいなかった。

「悔いって、良いものか悪いものか、それ以外か俺にはまだわからない」

前にこの身体で生きていた誰かには、それがわかっていて。でも俺にはまだ理解できないことだった。
俺が話すのを、相手はただ黙って聞いていた。

「俺ってたぶん、呪術師になりにきたんじゃないんだ。なるにはなるけど、呪術師になるのは手段でしかないっていうか

呪術師になるそれ以前の話な気がしていた。
俺には、もっと必要としているものがある。

「ちょっとだけ俺は俺として生きてみるのも許されるんじゃないかって、そう思ったんだ

きっと彼に二択を突き付けられたときの頃なら俺は、死の一択しかなければ、抗う気もなかった。
身体は生かさなければいけないと思うけれど、俺自身はどうなったっていいとも思っていたから。
どうしようもなければ、足掻く気もなかった。

そこから少しだけ、俺は変わったんだと思う。


今、『ここ』には俺しかいないから。
俺として、この身体を使ってもいいんじゃないかってもうここにいない、誰かは許してくれると願って。

一人の人間として、生きてみる時間が欲しかった。


でも俺はまだ、死から逃れられないってわかればそれをあっさり受け入れてしまうんじゃないかとも思う。
生きるということに積極的というには半端で、消極的というには意地汚い。

それでも、

「俺は、生きてみたい」



 学長は、俺の視線を真っ直ぐに受けていた。俺の言葉も、そうやって聞いてくれていた。

彼は、ゆっくりと口を開いた。

「君を生かすには、君自身が有用であることを示すしかない」

死刑になったって、おかしくない状態の俺。
俺を殺すには惜しいと思わせるほど未完成の呪物であるという要素に目をつぶらせるほど、役に立つ存在にならなくてならない。
それには

「君は、呪術師として戦えるか」  

俺の周りで滑っていたぬいぐるみは、そのスピードを上げることで、この空間を縦横無尽に動き回る。
そのぬいぐるみは学長のものだが、今は俺を狙っている呪いだ。

俺は改めて、動き回るペンギンをその目で捉えた。
まだまだスピードを上げるつもりらしいソレを見つめながら、俺は答えを出す。

「呪霊が敵か味方か、確かに考えてしまう部分はある。でも」

今祓う相手が、良い存在である可能性それがチラついてしまうだろう。戦うときにそう考えてしまうのは、犠牲を増やすだけなのもわかる。
でもそれは今だけのことだと、断言できた。

「俺は、知った人が増えるほど、迷えなくなる。相手をしている呪霊が良いか悪いかなんて、考える余裕もなくなる

牛鬼が五条さんに攻撃したとき、俺は思わず声をあげた。
彼とまともに話したのだって一日二日程度。ファーストコンタクトだって最悪だ腹パンされてるし、目隠しだし。
その程度だったのに。

「知った人が傷つくのは、見たくないってのを知ったから」  

あの時は咄嗟だったけどだからこそ、心配したのは俺の中で本当だった。

「だから俺は、戦うことへの迷いは振り切れる。そう断言できる」

最高速度になったのだろうペンギンが、俺目掛けてミサイルのように飛んでくる。
俺はそれをギリギリで避け、そのガラ空きの腹へ拳を打ち上げた。

お返しだッ!!

そう思いながら繰り出したアッパーで、ぬいぐるみはジャギィッと破けるような音を立てながら、上へ吹っ飛んだ。
見上げた天井から、切り裂かれた生地と綿が雪のように降ってくる。

俺の振り上げた拳からは、蝋燭の炎を反射する鈍色の刃が生えていた。


は?」

俺は自分の手を見上げたまま、その動きを止める拳を下ろすことも、やっていいのか迷う。
今まで静観していた家入さんが、後ろで息を呑んだのがわかった。

「呪具!?」

その言葉に続けるように、学長は口を開いた。

獣鉤手 じゅうこて

これが何か、教えてもらえるだろうか。
俺が困惑していると、全員の視線の先にある四枚の刃は、スッと俺の手の甲に滑り入って消えた。
えっめっちゃ怖いんだが。


 しばらくの間、誰も動かなかった。
しかし、止まった時を動かすように、学長は話を始めた。

「家入、呪具の資料は用意する。彼の身体検査を行え明日からで構わない。あとは予定通りだ」

はい」

そのやり取りを聞いて、俺は恐る恐る手を下ろした。
切れ目も入ってないし、金属が中にあるようには思えない。
自分の手を確かめるも、骨と肉しかない平べったいものだ。
そんな俺にも、学長は声をかける。

「青嶺衛、君は来年度からの入学だ。今年度はもう終わるし、君には基礎知識もないからな」

その言葉に、俺は顔を上げた。
彼は俺を歓迎するように、手を広げる。

「合格だ。入学までの間、君は聴講生扱いになる。ようこそ、呪術高専へ」

あれで良かったのか?
というかあの刃のせいで、素直に喜べないんだが
もしかして、呪術師にはよくあることなの、か?それはそれで不安だ。

黙ったままの俺を見ながら、彼は付け加えて言った。

それに君には、呪術より先に学ぶべきことがあるようだ」