【劫火と狩人】1

一ページ目必読
※MHパロ2nd


ミラボレアス狩猟作戦の決行日まで、ついに一ヶ月も無くなった頃。物資補給の依頼をこなしつつ、G級ハンターであり狩猟実行部隊のメルは決戦の地になる場所シュレイド王国跡地にて指示を行うリーダーを、高台から眺めていた。

狩猟の邪魔にならないよう考えて設置されていく物資や砲台、強力なブレスを防ぐための防護壁や障害物の確認、狩りの中でも対話できる脳波伝達機能チャットの調整。やれることに限りはあるが、やれることを全力で行う仲間たち。そんな中でメルは、自分の所持している武器一覧の紙を片手にしている。


「メル殿、武器は決まったかい?」


背後から声をかけられて、メルはゆるゆると振り返った。ライトボウガンを抱えたロルが、弾薬の確認をしながら近づいてくる。彼は普段から、ボウガン系列を好んで扱う。ミラボレアス狩猟作戦で使うモノの調整と、狩り場の下見に来たのだろう。


「まだ悩んでいるよ、ロルくん」

「珍しいね。キミがそんなに迷うなんて」

「今回は特例も特例だし

「あはは、確かに」


クスクス笑いながら、ロルはメルの隣に座る。高台からは、決戦の地が一望できる。資料や状況を見て数多の指示を出すアル、弾薬や物資を運びいれるエル、支援部隊用の通路を整備するゼフス……他にも何人もの仲間たちが忙しなく動いている。メルは自身の武器を一つ一つ思い描き、決戦を行う未来を予想する。


彼は今、とても悩んでいた。

エルは大剣使いである。その武器種以外も使えるが、専門武器の練度は大陸全体で見ても極めて素晴らしいもの。納刀して回避しつつ、獲物の隙を見て強烈な溜め斬りを叩き込むスタイルが主だ。

アルはその逆の双剣使いで、手数で圧倒し獲物を追い詰めていく。限りなく瞬間的な隙を突き、敵の間近でヘイトを稼ぐ危険な役。エルとは対照的だが、それ故に互いの弱点を補える名コンビだ。

ロルはボウガン使いであり、他の武器種もある程度扱える。罠を使うことにも長けており、モンスターを状態異常にするのも得意。自分で火力を出すと言うよりは、味方が火力を出せるように調整する支援役だ。


そんな彼らとチームを組んでいるメルは、武器種に拘りのないハンターだ。強いて言うのであれば、ロルと同じく自分で火力を出す役割にはあまり立たない程度。モンスターに対応した武器、もしくはその時の気分でコロコロと戦闘スタイルを変更する気分屋。

だが、今回は気分がどうこう言っている暇はない。古龍ミラボレアスを相手に、そんな生易しいことを言っていられるとは微塵も考えていない。だからと言って、あのミラボレアス相手に有用な武器など誰にも分からないのだ。何を使っても困難な狩猟になるのは間違いないし、無事に終えられるとは誰一人思っていない。

故に、メルは悩んでいる。彼には『最も手に馴染む装備』がないのだ。


……惰性で選びたくはないんだよなぁ」


ため息と共に、決戦の地を眺める。頬杖をついて、あの場で古龍と舞う仲間たちを夢想してみる。


ミラボレアスの動きを事前に知るには、古い文献を参考にする他ない。炎のブレスが主な攻撃手段のようで、中でも国一つを滅ぼした強力な咆哮があるとされている。生身は勿論、装備による防護も無意味。唯一の自衛手段として、瓦礫や防護壁の使い捨てが想定されている。

後はぶっつけ本番、リハーサルや練習などは不可能。だからこそメルは、あらゆるシミュレーションを行う。範囲、速度、威力、形式、細かな可能性を文献から読み解き盤面を組み立てていく。


思考を巡らせるメルを横目に、ロルはどうしたものかと内心で息を吐く。彼の武器が決まらないと、狩猟実行の具体的な作戦が練られない。反面、急かして焦らせても良いことはない。ミラボレアスとの決戦は、限りなく完璧な状態で迎える必要がある。


二人のハンターは決戦の地を眼前に、未だ悩みを抱いていた。