ぎん
2024-06-13 16:17:08
2289文字
Public うちの子話
 

呪われたエレゼンの青年と妖精の旅②




彼の身体は呪いに蝕まれている

自分はいつ死ぬかもわからない呪いにかかっている

『その呪いが全身を蝕んで死ぬ』

身体には呪いが全身を這うように模様が刻まれていく
この模様が左胸に到達した時に、自分は死ぬのだ
呪いに蝕まれている彼の名はロジェ・ルロワ
シャーレアンの大罪人を捕まえる為に、そしてこのかけられた呪いを解く為に旅をしている

朝、目が覚め起きると同時に全身に痛みが走り、心臓が握り潰されるかのような圧迫感に襲われる

「ゔ……

整えられた寝台のシーツを握り締め、痛みに耐える。これが毎日のように繰り返され、じわじわと侵蝕する呪いに苛立ちを覚えたことが幾度もある

11年。彼にとっては長い年限だ

痛みに耐えながら、机に置いてある学者本に手を置いて、詠唱する
キラキラと輝くエーテルと共に現れる
自分の半身とも言える彼女

「おはよう、今日も外はいい天気だよ」

妖精にそう話しかけると、ロジェの周りを飛び回り、ロジェの鼻におでこをつけて朝の挨拶を交わす
妖精がそばにいる時は、少しだけ痛みが和らぐ
彼女がそうしてくれているのだろう

「ごめんね、今日もよろしくね」
いつもの服に着替え、彼女の頭を撫でてから部屋を出る
今日もまた、長い1日が始まるのだ

「朝ごはん、出来てるよ」

そう言って、給仕が笑顔で話しかけくれる
ラノシアントーストと紅茶を出され、人の流れる様を横目に朝ごはんを食べる
今日はグリダニアのカーラインカフェにて冒険者から話を聞いたりして情報収集からしないといけないなと思いつつ食事を終える ふぅっと一息ついてから立ち上がると、またあの痛みが襲ってくる
「っ……!」
歯を食い縛って耐える。ここで倒れてしまえば迷惑をかけてしまう なんとか持ち堪えて、宿を出た

外に出れば太陽の光が眩しい 空を見上げ、目を細める 今日はどんな日になるんだろう?
そんなことを思いながら、彼は歩き始めた
昼過ぎ、太陽が真上に差し掛かる頃、ロジェはグリダニアの冒険者ギルドにいた依頼受付カウンターの前に立ち、冒険者に話を聞いていた
「シャーレアンからへえ……金髪の男そういや俺達は直接見たわけじゃないんだけどさぁ……
そう言いながら似顔絵を見て話してくれた冒険者は困ったような顔をしていた
「金髪のヒューランをここで見たんですか?」
「いやー……なんつーかさぁ……似たような顔ならあちこちにいるからなぁ。これだけじゃどうも
「そうですよね

ロジェは落胆する。当たり前だ。これで見つかったのなら11年も探しているはずがないのだから

「あとグリダニアは突然と行方不明になることがあるからなお前も気をつけろよ!」
「わかりました。ありがとうございます」
「おう!」

そう言って、冒険者と別れた後、ロジェは考え込んだ

(この近くにいると思っていたけど、全然違う場所なのか?)

今までの情報だと、大罪人はエオルゼアの地にたどり着いていて、グリダニアで目撃情報があったところで足取りが途絶えている
冒険者の言っていた通り、本当に忽然と姿を消したのだろうか? それとも誰かが匿っているとか……
そんなことを考えながら、情報を集める為に冒険者達の話を聞くことにした 夕方になり、夕陽が沈み始める頃 ロジェは再びカーラインカフェに来ていた
しかしそこにはもう冒険者はおらず、代わりにウェイトレスがいた

「あれ?あなたは確か……
「先程はどうも。私の名前はロジェ・ルロワと言います。あなたにお聞きしたいことがあるのですが」
「ルロワさんですね。はい、なんでも聞いてください」
「最近この街にこのような男を見かけませんでしたか?」
……いえ。来てませんね」

一瞬の間があった気がしたが、彼女は笑顔で答えてくれた

「そうですか。ありがとうございました」

ロジェは礼を言うとその場を去った
夜、ロジェは再び宿の部屋へと戻ってきて、机の上に座り込んでいる妖精と向かい合っていた

「う~ん……やっぱりここにはいないみたいだね」

「どこに行っちゃったんだろうね」

「それは嫌だな」

彼女を手のひらに乗せ、楽しそうに会話する
妖精は喋らない。でもなんとなく何を言いたいのかはわかる
ロジェは少し悲しそうな表情をして、妖精に笑いかけた

「俺が死んだら悲しい?」

「俺はね、君がいてよかったと思ってるんだ」

「一人ぼっちで死んじゃうんだろうなって思ってたから」

妖精は何も言わずにロジェを見つめていた
この身体は刻々と死に迫っている。限られた時間の中でどうにか呪いを解く方法と、大罪人をみつけなければいけないのだから

「呪いに侵されて死ぬなんて、誰にも知られたくない死に方だしね。それに、誰も僕のことをわかってくれないだろうって諦めてもいた」

「でも君はずっと一緒に居てくれる。それがどれだけ心強いことかわかったよ」

「だから大丈夫だよ。明日は占い師さんのところにいって俺の身体をみてもらおうか」

ロジェは元気よく妖精に声をかけると、妖精はスッと姿を消す

俺は今日も生きている。明日も、これからも。また生きることはあきらめない
そう思い、心に強く刻む
今日のやることを終えて本を閉じ、ロジェは寝台へ潜り込み眠りについた