23/9/4 海も枯れるまで

卓感想 あまおと




手紙を読んでいるあなたへ


ボトルメールの体ですから、宛名はこんな風でどうかしら。
何を書きましょうか、何処まで書きましょうか、悩ましいのですけれど…………上手く纏められるか分かりませんが、綴らせていただきます。


まず、砂浜に打ち上げられていた私を助け、右も左も分からない私に島中の案内までしていただき感謝致しますわ。こんなにのどかな地域を、ゆっくりと歩いて回るなんて初めての体験でしたの。夕暮れの海岸での、グリーンフラッシュのことも知識として知ってはいましたが、実際に見ることができたのは初めてですの。とっても美しかったですわね。
穏やかに過ぎていく時間を過ごすのは、本当に久しぶりのことでした。

案内中に出会った方々も、皆様とっても優しくしていただいて…………ええ、私にきつく当たるあの方も含めて、皆様が優しいの。だって彼、船を出してくれるって言うのよ。もしも私が船乗りだったなら、嫌いな人を自分の船に乗せたいだなんて思いませんもの。あなたはどう思うかしら。


素敵な島ですわね、これ以上迷惑をかけるのが申し訳なく思うくらいに。
ごめんなさいね、私は島の外へ帰ろうと思います。私が社長令嬢であることはお伝えしましたわね?そんな立場の人間が易易と消えるのは、本当は良くないことなの。

それだけが理由ではないの。この島に永住するとしても、いつまでもあなたの家に間借りするわけにもいきませんし、お仕事だって、漁師の方はうちに来い、だなんて言ってくださいましたが私の体力では迷惑をかけるばかりで、とてもお力になれそうにありません。
伝承のような効果だって、私にあるとは思えませんわよね。だって私は、ただ見目が良いだけの人間ですもの。

役に立てなくてごめんなさい。
期待に応えられる私ではなくて、ごめんなさい。

あなたはどうか、これからもこのあたたかい島でお幸せに過ごして。
私のことなんか直ぐにでも忘れてしまって。


ありがとう。