戌丸アット
2022-05-29 23:41:05
4392文字
Public Fate
 

森の賢者【キャスニキ×ショタ弓】

槍弓



燃えているかのような身体の熱さと痛みに思わず目を見開いた。
見知らぬ木目の天井。
いつもの硬い床ではない、ふかふかの清潔感のある白いベッド。
何よりも物心ついた頃から染み付いてるかのような埃っぽい空気ではなく、神聖さを感じる澄み切った空気が少年を戸惑わせた。

「目が覚めたか、ガキ」

荒々しい言葉の筈なのに、品格を感じさせる声色で話しかけられて自分の事なのだと思い、声の方を向いた。
そこには頬杖で少年を見つめる赤目があった。
威圧感は無かったが神秘的な瞳に人外的な美しさと居心地の悪さに、少年は見起こす。

「アンタは誰だ?それにオ、私はそもそも此処は何処なんだ?」
「俺はまぁ、森の管理人みたいなもんだな。此処は俺の管理する屋敷、んでお前の事は動物たちがぐずるんで俺が助ける羽目になった。」
「動物たちが、ぐずる?」
「お前、無礼者どもから動物たちを助けてくれたんだろ?聞いたぜ」
「っ!」

赤い瞳が三日月のように綺麗な弧を描きながら、鮮やかで青空を思わせるブルーの長髪をサラリと揺らして美しい男は近づいて来る。
そんな事よりも聞いた、の一言で少年の瞼に気を失う前の記憶がフラッシュバックした。

少年の名はエミヤシェロと言い、育ての親との別れを機に、傭兵まがいな事をしながら旅をしていた。
今回も近くの村へ行き、何か依頼を貰えないかと思いながら神聖さを感じさせる森を抜けようとした時だった。
何やら3人の男が神秘的な森には似合わない銃を構えていたのだ。
男たちの下品な会話の中で猟、と言う言葉を聞いた瞬間、シェロは愛用の片方の刀剣を生成した。
2人目までは、いつも通りに始末出来た。
しかし最後だと思って対峙した時だ。
肩に痛みを覚え、銃声のした後ろを見ると怯えた男が歪んだ笑みを見せていた。
密猟者は、4人だったのだ。

だが問題はないと思った。
否、思っていた。
双子の剣を揃えようと魔力を通した時に骨が軋むような錯覚をする程に痛みが走った。
一瞬の隙だが立場が逆転するには充分すぎた。

あっという間に2人の男に捕まえられた後は拳の雨だった。
どれほど殴られたか分からなかったが、意識が飛びかけた時だ。
何やら男たちが興奮した様子で話しかけてきたかと思うと、服を破かれた。
男たちが何をしようとしていたのかは察する事が出来たがアーチャーは意識が朦朧としていたので、抵抗できそうにないと諦めた時。
狼の遠吠えと共に青空が夕暮れとなったのを見た。
アーチャーは場違いにも不思議に思ったがあまりの赤さに目を閉じずにはいられず、抱き締められるような感覚の中で意識を飛ばしたのだ。

「思い出したようだな。で、名前は?」
アーチャー」
「ほぉ、いっちょ前に偽名か。ふむその心意気に免じてお前をアーチャーと呼んでやる。俺はそうだな、お前風に言えばランサーと言った所だな」
「む子供騙しのつもりか?」
「これは自画自賛になるが、この界隈だと有名人だから隠す意味が無い、しかしお前も真名を言わないんだからフェアじゃねぇ。だから俺はランサーと名乗る事にしたんだよ。ほれ、食えるか?」
頂こう」

ランサーと言うには、あまりにも動きづらそうな、どちらかというと魔術師をイメージさせたが呼び名が無いのは呼びづらい。
何よりも自分もアーチャーと名乗ったのだ。
相手の名乗った通りに呼ぶのが通りだろうと考え直す。
そんな一通り確認を終えて、アーチャーは背中にクッションを挟まられながらお盆を目の前の布団へと差し出される。
温かそうな湯気と熱気を出す粥は、なんの変哲もない白さだったのでアーチャーは力の入らない腕に鞭をふるって食べ始めた。
ちょっとだけ粥には塩が入っているのだろう。
ほのかな塩気に食欲を沸かせながら、ゆっくりと胃袋へ粥を入れていく。
その間、ランサーと名乗った男はアーチャーが目覚めて落としたタオルと水が入っていた桶、片手に出て行ったかと思うと同じ姿で戻って来た。

「完食したか」
「あぁ、感謝する」
「はいはい、どういたしましてーあ!そうそう、忘れる所だったぜ」
「え?っんん!?」

忘れる所だったと言うのでアーチャーは、薬でも持ってきたのかと油断していた。
もとい看病してくれた相手だった為に気も緩んでいたのかもしれない。
まさかランサーに口付けをされるとは思わなかったのだ。
ぺろりと舐められたかと思ったら、唇の隙間からぬるり、と中へと入ってくる。
咄嗟に身を引く勢いで暴れたが、体格的もあり対して効果はなく。
舌だけでも逃げようと奥に引っ込めたが限界があり、あっという間にランサーの舌に捕まると生々しい感覚と共に舌を撫でられる。

「んっむぅう!!!」
「ん、我慢しろ」

嫌だと言う意思表示で暴れてみるものの、不思議と身体に力が上手く入らず、身体はガッチリと囚われる。
その間も口付けは好き放題で下唇を甘噛みをされ、小さな舌はじゅるりと音を立てて吸われる度に細いが鍛えられた肩はピクリと跳ねる。
あまりに聞き慣れない水音に顔どころか耳にかけて熱を帯びるのを感じながら、アーチャーは暴れる事を忘れない。
だがそんなものは微塵も効果はなく、ランサーのされるがままに愛玩を受けて、肩や腰を跳ねさせながら、刺激に耐える。
どれほど弄られたか分からなかったが、ゴクリとアーチャーの喉が音を立てると、ランサーはあっさりと唇を離した。
火照る身体を冷ますように開きっぱなしのアーチャーの口の端から流れる滴が、喉元を濡らし、それをランサーが舐めとってきた事で、アーチャーは固めた拳を綺麗な顔に向かって全力で放つ。

「んぁこの!」
「っいてて、照れるからって暴れんなよ」
「黙れ!変態!弁明など聞かないぞ!」
「誰が変態だコラ!お前には魔術の行使を阻害する弾が打ち込まれてた取り除いて治癒の為の魔力まで流してやったんだろーが!」

色んな意味で興奮冷めやらぬアーチャーの傷口に口論の間もランサーは癒しの魔術なのだろう。
何やら記号を包帯に描いていき、その後から続々と傷が閉じていくのを感じながら、アーチャーは魔術回路に魔力が通っていく感覚に襲われた。
納得しきれないが先程の口付けで不覚にも飲み込んだ男の唾液は、不思議と嫌な気分ではなく。
むしろ身体は歓喜するかのように魔術回路は正常に動き出していた。
魔術師や魔力を帯びる者は、血や肉を筆頭に身体に流れる物に魔力が交じる。
そして魔力とは密度の濃さや質で、どれ程の魔術師か、魔力の大きさか、を表す事がある。
だからこそ目の前の美しい男が改めて、そして何よりも確実に次元の違う魔術師なのだと知らしめていた。

そしてランサーの言葉により密猟者に打たれた後の愛刀の生成が上手くいかない説明となり、納得した。

「っあの時の原因は魔弾か!」
「お、心当たりがあるみたいだな」
………チッ、アナタの言う通りだ、ある」
「あぁーお前なぁ、肯定するにしても可愛げなさすぎだろ」
「そんな物は故郷へ置いてきた」
「置いてきたって、お前何処から来たんだよまぁ、ともかく傷が癒えるまでゆっくりしてけや」
「え?その追い出さないのか?」
「癒しのルーンは施したが結局は自己回復になる。俺は追い出しても良いが外の来客たちが許してくれそうにないからなぁ」
「来客?」

誰の事だろうかと不思議そうにランサーを見つめていると。
ほれ、とランサーがベッドの側の窓を開けた瞬間、鹿やリス、小鳥などが溢れんばかりに入ってきた。
あっという間に森のような有様に呆然としていると、今度はカリカリと扉から音がすると思った時には扉をランサーが開けており、次の瞬間には狼や兎などがベッドへと集まって来て、しまいにはベッドへと上がり込んで来ていた。

「え?ちょっ、わっぷ!」
「見回りをしているとはいえ、俺だけでは助けられない奴らも居る。ま、外の者に助けられてコイツらも嬉しいらしい」
「いや!見てないで、うわっ!助けっ、こら!」
「おーおーこれは随分と熱烈だな」
「いいから助けろ!ランサー!!!」

我先にとばかりに懐いてくる動物たちに埋もれるようにベッドで溺れるアーチャーに、何処か他人事のように椅子に座って傍観しているランサーに怒りをぶつける。
そんな甲斐性無しめ!と内心でなじった男に、自分が弟子入りするとはアーチャーも夢にも思わなかった。



END





ーーあとがきーー
私の中でランサーが坊主と呼ぶのは"衛宮士郎"なので、ショタ弓でも弓なので名前を変えてアーチャー呼びにしました。
てか完成して思いましたが、兄貴これ完全にアウトですねww
ごめんよ兄貴、悪気はなかったんだ( ˇωˇ )
分かりづらいですが、青空が夕暮れになった、というのはアンサズの炎の光です。

続きあるけど、誰か書いてくれ下さいorz





以下、どうでもいいプロット&裏設定↓

無くしたと思われていたアヴァロンを身に宿し、母を亡くしながらも士郎が産まれる。
父に大切に密かに育てられたが封印指定の魔術師に見つかり、父は殺害されて士郎は攫われる。
魔術師は士郎をベースにホムンクルスのシェロことアーチャーを生み出す。
その頃くらいにアイリや舞弥を失い、イリヤを奪われた切嗣に偶然、助けられた後は魔術を磨いていたが、切嗣と士郎と3人で住んでいた島が火災で燃え、そのまま離れ離れ(切嗣は死んでいない)になり、ショタ弓は士郎を連れて切嗣を探す旅をする。

アルトリアにアヴァロンを返還済で、この時に返還の条件でオリジナルの士郎も預ける。
アルトリアからは、いつでも自分の国一緒に暮らそうと誘われているが断り、旅立つ。
ある森で密猟をしようとしていた一団を止めようとして逆に殺され恥辱されかける所を兄貴に救われる。
その後、紆余曲折あって弓が兄貴になついて弟子入り。

兄貴は、キャスター姿が私服、ランサー姿が戦闘服イメージ。
なのでこの兄貴はゲイボルグ持ち。
ショタ弓の真名はエミヤシェロ、10歳から12歳くらい。