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戌丸アット
2022-05-29 23:28:10
10445文字
Public
戦国basara
桃の約束
三家(戦国basara)
1
2
「家康様、失礼致します」
「
…
どうしたんだ?何かあったか?」
「竹中半兵衛様より使者が参られております」
「分かった、通してくれ」
丁度、今くらいの夏に出会っていたので政務の最中にも関わらず珍しく思いふけってしまった
その事実に目を閉じ、今は政務に集中するべきだと己を戒めた後、尋ねてきた従者の話を聞き早々に支度を整えて半兵衛の使者と言う者と会いに行く
なんの連絡も半兵衛からは貰っていない
つまり急用なのだ
しかし半兵衛が慌てるように使者を飛ばしてくると言うのは珍しい為、無意識に家康は表情を固くしながら使者が待つ部屋へと入ると二重の驚きが待っていた
「待たせてすまない
………
ぇ」
「いえ
…
お初目にかかります、竹中半兵衛様より使者としてはせ参じた石田三成と申す、此度の文は早急に返事を願いたい」
「
…
」
「
…
徳川殿?」
まず最初に驚いたのは、待っていた使者は家康が大切な記憶として思い出していた少年が成長したような見た目であった事
二つ目は、今や秀吉の左腕と名高い石田三成が使者として現れた事であった
あまりの事態に流石の家康も絶句してしまった
もしこれが半兵衛の思惑通りならば見事に策に嵌ったと言う事だろう
しかし三成が目を鋭くし、特徴的な前髪で見えていないがきっと眉間にも皺を寄せているだろう雰囲気で、三河の国主として我に返る
「あ、失礼!早急にだな?すぐに拝見しよう」
「
…
えぇ」
家臣ごしに渡された手紙を受け取りながら、こっそりと見た三成は険しい表情ではあったが自分があくまでも使者だと言う事を弁えているらしく
短く返事をして、家康を見つめてきていた
ともかく早々に返事を出してしまおうと開いた手紙を読んで、今度は困惑してしまった
何度か読み返したが、そこにはやはり目を疑いたくなるような事が書かれていた
ともかく手紙の中にも書かれている本人に確認を取ろうと、戸惑った思考のまま出された茶にも手を付けぬ三成に話しかけた
「あー
…
これは
…
その石田殿は手紙を拝見なさったのだろうか?」
「
…
?いいえ、そのような無礼は致しておりません」
「やっぱり
…
見てないか」
「
…
何か?」
確認してみれば案の定、三成は手紙の内容を知らなかった
それはそうだろう
使者が手紙を書いた本人に内容を教えて貰わない限り、手紙の内容を把握する事など出来ない
だが手紙には三成の事が書かれている
ならば本人に読んでもらうのが一番早いと考えて、これまた家臣を通して三成に手紙を渡す
「ワシが言うよりも読んだ方が早いだろう、これを彼に」
「はっ!」
「
…
拝見致します」
近くに控えていた家臣は家康の言葉と共に動くと静かだが素早く移動すると、三成に手紙を手渡す
手渡された三成は心なしか緊張した面持ちで手紙を開いた
そして内容は簡略化して以下の通りである
現在、豊臣は度重なる戦で猫の手も借りたい状況である
そこで本多忠勝殿他今すぐに動ける兵士を出来るだけと資金300貫程、援軍・貸して頂きたい
勿論、こちらも人材を派遣する
それは今、手紙を運ばせている石田三成である
政もこなせるので申し分無い人材を選んである
資金はひと月あれば返金出来るし
また援軍も今の戦が終わり次第、撤退してくれて構わない
より良い返事を早急に待っている
以上の事が書かれていた
「こ、れは
…
」
「援軍も貸すのも問題は無い、しかし石田殿自身が知らないのは宜しくないので読んでもらったが
…
大丈夫だろうか?」
「
…
半兵衛様がご判断された事に異議はありません」
家康が尋ねると、そう言い切った三成の顔にもう困惑や戸惑いはなく、涼しげな表情をしていた
どうやら決意は決まったらしい
その表情を確かめた家康は、深く頷くと次々と話をまとめて本多忠勝を呼び寄せる
「そうか、なら忠勝に今から準備をさせよう
…
資金と返事は別の者に運ばせておこう、進軍のついでと言う訳にもいかんだろうからな
…
忠勝!」
「
………
!!」
「話は聞いていたな?準備を済ませたら早急に援軍として出発してくれ」
「
………
!!」
どうやら家康の忠臣である忠勝は念の為にと戸の向こう側で控えて居たらしく、家康の一声で戸を開いて現れる
話も聞いていたようで家康に返事をしたかと思えば、家康と三成に一礼をして立ち去って行った
その素早い一連の流れをみせたかと思うと家康は、そのまま三成に話しかけた
全てとまでは行かなくとも、多少は今後の生活に関して話しておかなければならないと思ったが故だ
「よろしく頼むぞ!
…
あ、そうだ!石田殿、貴方はひと月は居るのだろ?部屋も用意せねばな、何か必要な物はあるだろうか?」
「
………
いえ、仕事の出来る部屋があれば特にはありませぬ」
「なら部屋の準備が出来たら今日はゆっくり休んでくれ、明日から仕事が出来るようにしておこう」
「
…
承知、致しました」
簡単にだが三成からの要望がない事を確かめた家康は、政務と共に後の事は自分が決めておくからと席を立った
話を終えれば、また政務に勤しまなければならない
何より明日からは三成にも働いてもらうのだ
内部の事はあまり任せられないので、そのさじ加減も家康が取り決めた方が良いだろうと、考えながら自室へと急いだ
そして自室に戻ってすぐ家康は、へたり込む様に腰を降ろして、深いため息をつく
三成と離れたので緊張から解放されたのだ
「
………
はぁーっ!石田三成って佐吉の事だったのか、半兵衛殿には毎度驚かされる
…
いや、あの人の事だから、あえてと言う事もあるな、しかし佐吉
…
いや、今は三成か?ふふ、やはり美しく成長していたなぁ
………
」
自室と言う事もあり、思わず独り言を呟きながら嬉しそうに微笑む
再会出来た事も嬉しいが、美しく育った佐吉もとい三成を見る事が出来た事へも嬉しさを噛み締めていた
物の怪かと思わせる程の美しさだと感じていたのは、やはり間違いなく
成長した三成は、美しく凛々しかった
その美しさは自分には程遠い物であったので余計に家康は、もっと見納めておけば良かったと思っている程であった
しかし再び目を開いた家康は、そっと想いを胸に納めて政務に戻ろうとした
しかし背中を預けていた後ろの戸が開き、家康は体勢を整える間もなく後ろに倒れ込んだ
「失礼します」
「わあぁっ!!!」
「っ!!?」
戸を開いたのは三成であった
しかも情けない事に倒れ込んだ為に三成に抱き留められる形で、再び顔を合わせる形となった
これには流石の家康も平常を保てない
「い、いい石田、殿!?ど、どうかされだだろうか?」
「あ、いや
…
話をしたかったのだが
………
邪魔だったろうか」
「ふぅ
…
いや、情けない所を見せてすまない、それで話とは?何か足りなかっただろうか?」
慌てた家康に三成も多少、焦り顔で家康を支える
その支えと三成の反応に冷静をすぐに取り戻した家康は、身なりを整えてひと呼吸したかと思うと先程とは違い、凛として三成に尋ねた
その変わり様に一瞬、三成は驚いたように目を見開いたが表情はすぐに表情は戻り、後ろから風呂敷に包んだ物を取り出して家康に見せる
「
……………
これを」
「ん?
…
桃?」
「
…
徳川殿は桃がお好きか?」
「え、まぁ、嫌いではないが
………
えっと、食べるならば切らせようか?」
二、三個ほど包まれた桃が現れ、三成の質問に献上品を渡し忘れたのかと思った家康は、キョトンとしながらも受け取る
しかし、三成からすれば的外れな事を言う家康に対して、相手は国主だと言う事を気にせずに目を鋭くさせ、一つ短くため息をつく
すると、桃を受け取る家康の手首を掴むと思い切り自分の方へと引き寄せて、真っ直ぐに家康の目を見つめながら尋ねた
「やはり遠回しは性に合わん!徳川殿、いや
…
家康、私の目の色に見覚えはないか?」
「え」
「どうなんだ、はっきりしろ!」
突然の事で目を見開き固まる家康に焦れったくなったのか、三成は思い切り胸倉を掴むと、前後に容赦なく激しく揺さぶる
そこに相手が国主だと言う気遣いは一切ない
揺さぶられた家康は、揺さぶられながら何とか言葉を繋げたが限界が来て、胸倉を掴む三成の手を叩く
三成と言えば返事が聞けて満足したのか、すんなりと手を離した
「わっ!あ、ある!あるから、首元、掴まな、でくっ!苦しっ!」
「
…
ふん」
「こほっ!ごほっ!っはぁー
………
石田殿」
「
…
さっきのように三成で良い」
「えっ!?聞いてたのか?あー
…
三成は、いや、三成も
…
覚えていて、くれたのか?」
「当然だ」
息を整えて終えた家康に聞いていた事を知ると頬を染め、少し後退る
しかし距離を離す事が気に食わないらしく再び三成は家康の手首を掴む
まさか掴まれるとは思っていなかった家康は、ほんのり戸惑いの表情をした
しかし、すぐに当然と言う三成に再び目を見開いた後、頬を染めたまま家康は心底嬉しそうに微笑んで、自分の手首を掴む三成の手を包むように添えた
「そうか
…
!ははは、嬉しいよ!まさか、またこうして会えるなんて思ってもみなかったから」
「
……………
半兵衛様に」
「半兵衛殿?」
「半兵衛様にご相談したのだ
…
貴様に会う為にどうすれば良いか」
「え
…
」
まさか三成があの日からずっと自分に会いたがっていた程とは思わず、目を見開いて驚いた
これだけ何度も驚かされては流石の家康もいつもの様な落ち着きは出せなかった
会いたいと思っていたのは、自分一人ではなかった事が嬉しいかったのだ
しかし三成がそんな家康の様子に気付く事は無く、至って真剣に続ける
ちゃっかりと家康の手首は握ったままで
「貴様
…
お前は、またなと言ったが
…
あの日以来会えなかった」
「そうだな
…
あれ以来、大阪へ行く事はあったがお前に会う間もなく三河に帰っていたんだ」
「それは私も知っている
…
いや、半兵衛様も気にかけて下さっていた」
会えなかった理由を俯き、寂しそうに呟く家康に三成は何を思ったのか、確かめるように掴んでいない方の手で家康の頬を撫でる
家康も嫌がる事はなく、ただその三成の言葉に半兵衛の意図をようやく理解でき、顔を上げた後に三成に苦笑いを向けた
「あー
…
だから今回の事に繋がる訳か」
「手紙は私も驚いたが今、思えば送り出して頂いた時にゆっくりしておいで
…
と、言われたな」
「はぁ
…
半兵衛殿
…
全くあの方には、いつも驚かされるよ」
「半兵衛様のなさる事に間違った事は無い
…
お前との再会も私にとって必要だと判断なさったからだろう」
「
…
そうだな、でも!それでも嬉しいのは変わらないよ、三成」
「ふん
………
そういえば、貴様に会ったのも今頃だったな」
「うん、あ、あの時の桃は美味しかったろう?」
「あぁ、美味かったのを覚えている」
相手に嬉しい事が伝われば良いと思いながら微笑んでいると、小さくだが僅かに表情を柔らかくしながら三成が同意してきた事に家康は驚いた
秀吉と半兵衛、豊臣が全ての三成は渡した桃を一個だったとはいえ、献上でもしただろうと高を括っていただけに意外な答えだったのだ
驚く家康に、分かりづらいが不思議そうな顔をしている三成に対して、再び赤らんだ頬を冷まそうと顔を俯きながら呟くように確認をとる
「っ!まさか本当に食べてくれていたのか
…
」
「?私に渡したのは貴様だろ?」
「いや、石田三成と言えば今や、秀吉殿の左腕と言われて下手な事を言えば斬られるとまで言われていたからなぁ、てっきり秀吉殿か半兵衛殿に献上してしまったかと思ったよ」
「ふん、あれは私が貰ったからな、お二人の許可を頂き私が食した」
「そうだったのか
…
」
渡した桃を三成が食べていてくれたと言う事実は本人が思っているよりも家康を喜ばせた
そしてほんの少しの優越感を感じながら自分の頬を撫でる手に、ジワジワと上がる顔の温度を感じる
流石に手を添えていて更に手の体温が低い三成は、家康の顔が熱い事に気付いたらしく不思議そうにしながら家康の顔を確認しようとした
その気配に気付いた家康は慌てて顔を上げると畳の上に投げ出されていた桃を一個、拾い上げると自分と三成の間に来るように持ち上げて、無理矢理に話題を変える
「家康?」
「っこの桃!折角だから一緒に食べないか?」
「それは別に構わないが
…
」
「良かったぁ、ありがとう」
「礼など不要だ
…
あの時から変わらず、お前は不思議な奴だ」
「ん?そうか?」
「あぁ」
なんとか話を変える事が出来て内心、ホッとしていると、三成は少し微笑んだ
もう家康は三成の微笑みで慌てるような事はなかったが、やはり三成の微笑みを見られて嬉しいく思ったがこのままずっと見つめ合う訳にもいかない
それは三成も分かったのか、そっとどちらともなく互いに手を離すと、すぐに家康は家臣を呼んで桃を切らせた
そして家臣は井戸水に容器を浮かべて桃を冷やすように持ってくると家臣を下がらせて、二人っきりで仲良く食べ始めた
「
………
なぁ、三成」
「なんだ」
「またこうして
…
桃が無くても共に過ごしてくれるか?」
「ならば、この時期が良い」
「え
………
あぁ!そうだな!ワシもお前と出会えたこの時期にお前と共に過ごしたい、構わないか?」
「
…
ふん、いちいち当然の事を聞くな」
「ははは
…
うん、そうだな!すまん!」
家康が心なしか声を震わせながら尋ねてくると三成は気付いていないのか、桃を食べながら部屋の外を見つつ話す
何度も確認を重ねてくる家康に少し呆れ顔をしながら返事をする
そんな三成に何処か楽しいそうに家康は笑っていると、ふっと見上げた部屋の窓から差す陽射しは、もう夏独特の暑さを帯びていた
END
ーーーーー
桃、戦国時代ではあまり食べられてないらしいんですけどね←
でも桃の旬は大体の種類が夏らしいので選んでみました
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