SS

レインコード二次創作SS


雨と、雨具と、雨音と、

 どうやら雨は止まないらしい。
 だがカナイ区が鎖国したという事実に比べれば些細な変化だ。安いビニール傘を、先日発売された最新のドローン傘に買い替えよう。そんな判断をする者が少なくなく、浮遊する傘が急速に街に増えた。
 セスは雨は好きだ。雨が自分の存在を少しだけ薄くしてくれる。視認性を下げ、音を遮ってくれる。心の奥底に染みついている「居てはいけない」という感覚を、少しだけ和らげてくれる。「居ること」を許された気がする。
 傘に当たる雨の音が、心地良い。
 その心地良さをかき消すドローン傘の駆動音が、セスは嫌いだった。静穏を謡う宣伝文句は嘘ではない。アマテラス社の技術は馬鹿にできない。それでも頭上で僅かに聞こえるモーターの音が、美しい雨音を不協和音にし、セスを苛立たせた。

 この街に雨が降り始めた頃を思い出し、セスは自分の頭上に浮かぶ傘に目をやった。いつの間に慣れてしまったのか。両手の空く便利さに負けた自分が忌々しい。プライベートの雨具もレインコートにすべきか。そんなことを考えるのも、もう何度目だろう。