【ダン飯】みんな寄っておいで

悪食王とその妹君、そして元迷宮の主達がわちゃってしているお話。雰囲気でどうぞ。
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黄金郷として栄えた威光が再び地上に姿を現して幾年月。
一応外見だけであれば王の風格が仄かに漂うっているかなあ、などと彼の事をよく知っている者達がギリギリ及第点を付ける悪食王ライオスが長い歴史のある玉座に腰を下ろした瞬間、小柄な体系を活かしてライオスの開いた股の間にちょこんと座るシスルに垂れ目のライオスの目がぱちくりする。
ヤアド達の献身的な世話が功を奏したのか、自分の意思で動けるようになった日を境に狂乱の魔術師から再び宮廷道化師の役職に戻ったシスルは度々ライオスを追い掛け回した。
シスル曰く。

悪魔の欲望を喰らったお前の傍にいると、ほんの僅かだが喰われた欲望の欠片が戻って来る

らしいが、それを確かめる術を知らないライオスは「そんなものなのか」なんて兎角気にせず好きにさせていた。
傍に控えるヤアドが「王に対してその態度はよろしくない」と窘めるが、シスルが「僕はこいつを王と認めていない」とツーンと顔を背ける癖に小さな手はしっかりライオスの手を掴んで離さない。
そんな二人のやり取りを見てもライオスは強く注意しないので、シスルはこれまた自分とヤアドのやり取りを温かな日差しのように微笑み眺めているファリンを手招き呼んだ。
兄も兄だが妹も妹で別段警戒心や疑問を抱かず、呼ばれたので来ましたという体で玉座に歩み寄ったファリンの手をグッと掴み引き寄せた。
「わあっ」
ほんわりしている目を少しばかり見開いたファリンの顔がライオスのちょっとばかり驚いた顔にぶつかりそうになる。それをした当人を兄妹揃って見下ろせば、悪戯に成功した子供染みた笑顔で二人の腕をぎゅうっと掴み笑っていた。
シスルの態度に何処か思うところがあったのか、ファリンが笑みを深めシスルを挟むようにライオスに抱き着く。出し抜けに抱き着かれライオスの目が益々見開かれるが、妹の楽しそうな笑い声につられ笑う。
仲睦まじい兄妹に挟まれたシスルのアザミ色の瞳が、無意識に杖を強く握り顔を顰めているマルシルを視界に捉えた。
あからさまに顔から隠す気なんてないだろと思えるくらい滲み出ている羨ましい感情。
マルシルの態度を見たシスルは何故我慢するのか全然分からなかったので、さっさと素直になれ半分煽ってからかいたい半分で──、フッと鼻で笑いライオスとファリンの腰を届かないなりに抱き寄せた。

刹那、謁見の間に響き渡る言葉なのか絶叫なのか分からないマルシルの声。
ただ全力で羨ましい感情は分かる、とライオスは彼女が駆け寄り自分とファリンごと抱き寄せた途端表情が変わっていく光景を眺めていた。
苛立ちと不快感で彩られていたマルシルの俯いた顔が見上げるシスルのニヒルに笑う顔とかち合い照れ臭そうに目を逸らし頬を染める彼女をファリンが優しく笑いその背中に腕を回す。
そして、ライオスもまた空いている方の手でマルシルを抱き寄せようとした矢先、伸ばし始めた手の動きが自分の意思に関係なく止まった。
琥珀色の瞳と意識を止まった手の方に向ければ、いつの間にかミスルンがライオスの手を緩く掴んでいた。
表情乏しいミスルンとやや困惑気味のライオスが無言のまま見詰め合い、やおら手を離されたのでそのまま「来ますか?」の意味合いで片腕を広げれば、誘蛾灯に誘われるよろしくミスルンも目出度くぎゅむぎゅむ団子の仲間入りを果たした。



「なんだアレ」
よく分からない光景をジト目で見るチルチャックはぼそり呟き。
「くわぁ~」
然程興味がないイヅツミは大口を開け欠伸をし。
「あの~
シスル以外も引っ付いている様に慌て始めたヤアドは右往左往するばかり。
「仕事しろ」
そして、終始ライオスの玉座横に佇んでいたカブルーは青筋を立て低い声で唸ったのだった。