ななき
2022-12-18 20:12:05
5684文字
Public 吸死
 

うそつきのためのワイン

付き合ってないドラロナ。酔ったドラルクに激しめのスキンシップされるやつ。書いてる人比ではいかがわしいですが、年齢制限はつくようなことまではしてない。(23/2/16 修正)


 ◇

「最近、酒飲まなくなったな」
「ブラッドワイン? 保管しておける量になったからな」

 あと三本だよ、と冷蔵庫パズル真っ最中のドラ公が言う。 
 三本。じゃあ、もうコイツが酔っ払うことはないんだろう。錆の香りと、低い体温の記憶がちらついた。最後はいつだったか。
 迷惑かけられなくなってせいせいする、と言うべきだ。普通の、日常の俺なら。でも、舌が貼りついて言葉が出てこない。

「へぇ、そっか」

 それがやっと。普通の声を出せただろうか。動揺や落胆が出てしまっていなければいい。
 作り置きの器が入れ替えられる、コトンコトンカツンという音が響く。

「ところでさ」

 冷蔵庫を向いたまま、ドラルクが何かに我慢しきれなくなったように口を開く。当然、俺からは表情が見えない。

「私、酔って記憶無くしたことは一回もないって言ったらどうする?」

 沈黙。

……最初っから知ってるって言ったらお前はどうするんだよ」

 また、沈黙。

「薔薇の花束でも用意して、君に好きだって言う、とか」

 何でもないように。まだ、冗談にして引き返せるように。でも、その指先が震えているのを見てしまった。あれだけしておいて、ここでビビるのか。
 馬鹿なやつ。そう思ったら、腹が決まってしまった。

「いらねぇよ」

 びくりと揺れる肩。砂にならないだけ、上等。
 嘘のためのワインはもうないのだ。
 積み木を、積んでみようじゃないか。

「花束はいらねぇから、後半だけよこせ」

 情けなくも真っ赤な顔を突き合わせる俺達の間に、新しい名前をつけるまであと少し。