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夜明 奈央
2024-05-06 08:58:19
2791文字
Public
中太SS
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ワンライ「同棲」
全然1時間で書き終えられなかった初ワンライ参加作品
2022年3月12日初出
1
2
同棲 中也ver.
太宰と同棲を始めた。
そういうと新生活が始まったようにも取れるかもしれないが、実際のところ「ここに住め」とはっきり言葉にして、太宰の了承を得ただけだ。太宰はそれまでだってしょっちゅう俺の家に入り浸っていたし、俺が引っ越したわけでも太宰が社員寮を引き払ったわけでもない。ただ、少しだけ俺の家にいる時間が長くなる。それだけだと思っていたし、それだけで十分だと思っていた。だが、結果的にその考えは間違っていて、それは俺にとって嬉しい誤算だった。
まず1つ目が、俺がいない間にも俺の家に出入りしている形跡が残るようになった。家に帰れば太宰がいなくても、脱ぎっぱなしの服の位置が変わっていたりだとか、冷蔵庫の中身が増えたり減ったりしているだとか、そういう同居人の影を感じるようになった。本人がいなくても、気配を感じられるだけでなんとなく心が安らぐ。
あいつは一緒に住む前だって勝手にやってきて高い葡萄酒を何本も開けているような奴だったが、俺が帰ってこないとわかっている時に来ることはついぞなかったのだ。冷暖房完備で快適だとか、美味しい葡萄酒があるだとか、なんのかんのと俺の部屋にくる素直じゃない理由を述べていたので、本人は絶対に認めないだろうが、あいつは俺に会いにきていたのだ。
これに気付いた時の俺の顔は、ちょっと人に見せられないものだった自覚がある。
2つ目は、体調が悪くても、家にいるようになったことだった。どうやら低気圧に弱いらしく、そういう日は寝台で丸1日寝ている。今までそんな姿を見たことがなくて驚いたのだが、マフィアにいた頃はそこまで酷くなかったらしい。年々酷くなっているというその姿を、それでも俺は今まで見たことがなかった。社員寮で1人耐えていたのだろう。確かに俺に会いにきていたのなら、体調が悪い時に無理にくる必要はないのかもしれない。どうせまともに話もできやしないし、してやれることも何もない。ただ悪化させないように静かに過ごして、時折手を握ってやるだけだ。それでも、今は俺の家で過ごすようになった。頼ってくれているようでもあったし、こういう何でもない時間を一緒に過ごすのが、一緒に住むということなんだろうとも思った。
3つ目が、セックスしないでも泊まっていくようになったことだ。今は一緒に住んでいるので泊まるという表現はおかしいかもしれないが、何もせずに抱きしめあって同じ寝台で眠るようになった。一緒に住むようになる前は、なんだかんだと理由を付けて帰ろうとしていた。俺は少しでも一緒にいたくて引き留めようとするのだが、セックスに誘う以外で引き留めるのに成功したことがなくて、最近はちょっと諦めていた。セックスした後は疲れているからか余程の用がなければ泊まっていくが、なんだかなあと遣る瀬無い気持ちになっていたのだ。だって俺はただ朝までここにいてほしいだけなのに、「今日は気分じゃない」と言われればそれまでなのだ。
それが今は素直に自分で寝台に行くし、なんなら「まだ寝ないの?」なんて声を掛けてくる。不眠が標準装備みたいな奴なので、寝るのはいつも俺が先だし、夜中に目を覚ませば隣がもぬけの殻なんてことも珍しくないが、自分から俺の腕の中に入ってくるあいつはちょっと言葉に表せないぐらい可愛い。こういうのを幸せっていうんだろうなとしみじみ思ってしまうぐらいには。
惚気じゃないかって?惚気だよ、悪いか。
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