【カミ東】どうかとらわれて

原作者様のもじもじカミキリ様と東雲さんのやり取りに我慢できず何か色々出力されたものです。相変わらず脳焼かれています。🔪🍮のお話。後半匂わせありご注意。







長さの違う指を絡ませ、胸がいっぱいいっぱいな目と目が合い、大事に育てていた純真無垢な想いをカミキリが告げる。
眩暈がするくらい真直ぐ過ぎる好意の感情を普段の東雲であれば無碍にはせずとものらりくらり躱していた。躱せる筈だったが今回ばかりは如何にも出来なかった。
想定外の事が立て続けに起き混乱していたのもあった。未だ自身の抱いた感情と向かい切れていない狼狽えている東雲が伸ばそうか伸ばさまいか迷う彼女の手をカミキリは強引に掴み引き寄せた。
本気を出した神に多寡だか言霊を使える人間が勝てる道理もなく──、抵抗すらままならず溺れまいと必死に岸に向かう東雲をカミキリが彼女より小さき身体で彼女の身と心、魂の全てを引き摺り込み沈ませる。
深く深く二度と水面に戻りたいなんて考えを起こさぬよう東雲を抱き寄せるカミキリの かいなは恐ろしいくらい優しく振り解く事は叶わなかった。

「(違うか)」

夜の底で輝く白色。優しく抱き寄せている癖に宿る想いは何処までも幼くて、親から逸れようやく再会した子がしがみ付くのに酷く似ていて、心が痛くなるくらい悲しくて切なくて、寂しくて、離れたくないと慟哭していて、……

「来な」

東雲はカミキリの自分より小柄な身体に押し込まれた冷たい涙色を自分の内に招き入れた。
泡の行方を追わなければ上が何処かも分からない深い深い夜の底。見えない空へ向かって伸ばしていた腕をカミキリの後頭部と背中に回す。カミキリが目を瞠り息を飲む気配に東雲の目が慈しむように細められ、指通りの良い白髪の癖っ毛を手櫛で梳き撫でた。
知らぬ間に解けた東雲の夜明けを告げる髪が二人を包み込むようにふわり舞い、仄かに輝く白色と絡み合って暗がりを押し退ける。
東雲を優しく抱き寄せているカミキリの腕が恐々力を強めた。怒られないか嫌われないか、そんな様子を窺う仕草にただ一言。

「大丈夫」

殊更柔らかな声音で答えた東雲の言葉は泡となり水面に浮かび上がる事無く重ねたカミキリの口の中で木霊する。



「(──僕ノ気持ち伝染 うつってクレた)」
意識を静かな闇に沈めている東雲の頭を腕の中に閉じ込め髪に顔を埋め鼻腔に匂いを焼き付ける。
シャンプーの香りに混ざる汗ばんだ匂い。黒髪と金髪の境目を鼻先で混ぜ、薄い唇を押し付け頬擦りし続けた。カミキリの脳裏に過る甘美で艶やかな東雲とのひと時に満ち足りた吐息が東雲の髪の毛を撫ぜる。
新たに東雲の中に盈され増えたカミキリの髪色と同じ神気。触り心地の良い滑らかな東雲の柔肌に咲き乱れた赤い花々。自分の領域に漂い始めるまだ僅かで色濃い東雲の香りがカミキリの目尻を幸福色に染め上げ緩やかに宵闇色の瞳を瞼裏に隠した。
「大家サん、僕の大事デ大切な愛おしいヒト」
優しく背中に回された東雲の腕の熱に浸りカミキリもまた意識を静かな闇に沈めたのだった。