はとこ
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ネモフィラと恋人たち

ショウリ×ミカル 『海に浮かんだ鳥籠』(https://privatter.me/page/65ec60eca7709) 
の設定と同じ、海街で偽りの恋人関係として暮らす二人。
#翔藍春待ちチャレンジ

 その青い花を見つけたのは、海岸の散策を終え、家へ戻る途中のこと。
 小さな花屋の店先に並ぶ編みかご。そのうちの一つに、その青い花は収まっていた。花の名前は『ネモフィラ』。ボクは花に詳しくはないけど、何となく聞いたことのある名前だった。
 しばらく眺めた後、ボクはその花のブーケを買った。贈り物ではなく、家に飾る用だから装飾はいらないと言ったけど、渡されたブーケはネモフィラの青を際立たせるような淡い水色の包み紙と紺色のリボンで彩られていた。

 家に持ち帰ると、ボクは早速古びた硝子のフラワーベースにネモフィラを飾った。それをダイニングテーブルの中央に吸えるだけで、一ヶ月限定の仮住まいのため最低限の家具しか置かれていない空間が一気に華やいだ気がした。
 夜、帰ってきたボクの恋人『ショウ』も、ボクにただいまのハグをし終えると、すぐにネモフィラの存在に気づいた。
「どうしたんだ、これ」
「散策中に見つけた花屋で買ったんだ」
 ボクがそう告げると、ショウは目を丸くしてマジマジとネモフィラを見つめた。
……『ミカ』は花が好きなのか?」
「嫌いではないけど、特別好きというわけでもないよ。その花の名前も、店先で見るまでは分からなかったし」
「じゃあ、何で買ったんだ?」
……君の目の色と同じ色をしているから、かな」
 少し躊躇ったけど、思い切って正直に口にすれば、ショウはさらに目を見開いてボクとネモフィラを見比べた。
 最初は驚いていたけど、次第にその眉間にシワが寄っていく。うっすらと開いていた唇もきゅっと閉じられてしまったのを見て、ボクはわずかに後悔の念に囚われて、思わず口を開いた。
「だめ、だったかな」
……いや、そんなことはない」
「本当に?」
「ああ」
 ネモフィラから再びボクに視線を移したショウは、いつものように微笑んだ。

 翌日、ショウがブーケを買ってきた。
 それはボクが買ったものと同じ、ネモフィラのブーケだった。包み紙やリボンまで同じだ。
「どうしたの、これ」
「帰り道に通りかかったんだ。最初は違う花にしようかと思ったけど、やっぱりこいつがいいって思って」
 ショウはボクの腕にブーケを抱かせると、ネモフィラと同じ色の目を柔らかく細めた。
「お前は俺の目の色と同じって言ってたけど、俺にはお前に見えた。髪の色も目の色も、手の中に閉じ込めておきたくなるところも」
 ボクの髪を、目元を、腕の中のネモフィラの一輪を、ショウの指先がそっと撫でていく。
「昨日のと一緒に生けてくれるか? どうせ飾るなら、同じ花瓶がいい」
「うん、分かった」
 頷くと、ショウは嬉しそうに口元を綻ばせて、ゆっくりとボクを抱きしめた。

 ぎゅうぎゅうになってしまったけど、同じフラワーベースに生けたネモフィラを見て、ショウはすごく満足そうに笑っていた。その傍らで、ボクもわずかに口元を緩めた。