【東ツヅ】孟冬の温もり

東雲さんのお相手が女性の場合衣服絡みのお話と「元気が出る写真を送ってほしい」ネタの二本立て。🍮👓編。 ※この二人付き合ってないでーす。


【東ツヅ】最高のスパイス




ローテーブルの代わりに部屋の真ん中を陣取る炬燵。その文明の利器の有難さを東雲とツヅミは身を持って味わっていた。色違いの半纏を羽織り東雲を座椅子よろしく背中に背負うツヅミの頭の上に東雲が顎をのっすと乗せている。
一度入ったら出られない魔の温もり。炬燵を一歩出ただけで冬の寒さが襲い掛かり、有希は完全防御のかたちで顔だけ出した状態で炬燵の中に潜り込み寝息を立てている。
特に予定のない昼下がり。自堕落な暮らしを享受している東雲であったが、不意に虚空を見遣り抱きかかえているツヅミに呟いた。
「元気が出る写真送って欲し~」
何の脈略もない一言。
会話が途切れ降り立つ居心地の悪い沈黙を払うためではない。そもそも東雲はツヅミ、有希との暮らしでとかく彼女らと丸一日言葉を交わさなくとも居心地の悪さを一切感じない。自分以外の誰かがいる気配、傍に居てくれる距離の近さに東雲は屡々眩いものを見るように目を細めた。
そして、幸いなことにツヅミと有希も近しい感情を抱いているらしく沈黙を無理やり遠のかせることをしなかった。
微睡んでいた意識を浮上させたツヅミは半纏のポケットに入れていたスマホを取り出し操作する。
ツヅミのスマホ画面を覗くことは容易いが、東雲は見ないよう目を逸らし近くで寝ている有希の頬を突いた。
気持ちよく寝ていたのにちょっかいを出された有希が縫われた口で「イーッ」と威嚇し、今度は顔ごと炬燵の中に潜り込んでしまった。
ただでさえ小さい炬燵の中が有希が潜り込んだことで窮屈になり、足を延ばしていたツヅミと東雲は有希を避けるように足をズラした。
そんな二人がやり取りしている間にツヅミは画像ホルダに保存してある日々の料理の写真を東雲のスマホに送るべく吟味する。流石に全部を送るには数があるため、選りすぐりの美味く出来た料理たちを送った。どれもこれも料理の写真を見ただけでその日の出来事を思い出せる。
山菜の天ぷらを揚げた日は新しい住人を東雲がハントしてきたや、長ネギが安くて買った日はチヂミにしたがそれ以上に印象深く残る路地裏で掃除屋に捕食しかかった乙幡を東雲が勧誘後一緒に自転車に乗せられ爆走した事がそれはもう鮮やかにツヅミの脳内に映し出される。
とても穏やかな顔でスマホの画面に表示されている写真をスワイプさせ見ていたツヅミは「本当に色々あったなぁ」と独り言ちた。
そこそこあった写真を受信し終わったのか東雲の半纏のポケットから聞こえる着信音。もぞりと動きスマホの画面をスワイプした途端、だらけ間延びした声が東雲の口から漏れる。
どれもこれも美味しそうな料理ばかり。撮影技術も向上しているらしく後半の写真に置いては料理本に掲載されても違和感のない出来栄えだった。
口の中に溢れる涎を無意識にじゅるり啜り飲み込んだ。
「なんか腹減ってきたあ」
殆ど無かった隙間に手を入れた東雲が自分の腹を擦れば胃袋がそうだそうだと声を上げた。
背中から響く東雲の腹の虫にツヅミが、くすり笑い炬燵から抜け出し台所へ向かう。
「ご飯作りますね」
炬燵と東雲の温もりでぽかぽかなツヅミは寒さを覚えないが、そんなツヅミを追い掛け台所に付いて行く東雲は容赦なく襲い掛かる寒さに身を震わせ自身を掻き抱いたのだった。
「寒いのでしたら向こうで待ってて大丈夫ですよ?」
「いーの。味見係で此処にいんの」
ツヅミを後ろからすっぽり抱き着いた東雲。今度は顎を彼女の方の上に乗せ邪魔にならない程度に腰元に巻き付けた腕の力を強めた。
「なに作んのー」
「何にしましょうかね」
何てことのない日常のひと時。首だけ振り返ったツヅミと目と目が合うなり東雲がニカリと笑い、ツヅミもまた柔らかに微笑んだのだった。