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梓
2024-03-29 21:49:18
1732文字
Public
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あたたかな星光を
シャドウハートから問い掛けられる話。野営地の会話って素晴らしいシチュエーションだと思わない?
タヴに固有名がついています。
「The First Light」収録。
時系列としては反照を辿る(
https://privatter.me/page/65d9df054c785
)後、影の地からバルダーズ・ゲートにつくまでの間あたり。
「フィン、どう思ってるの」
「どうって
……
? ああ、ラファエルが言ってたことかな」
察しが悪いフィンの様子に、焚き火から少し離れた自身のテントで小難しい経営か何かの本を読んでいるエルフを視線で示してやれば、意図するところは伝わったようだった。エメラルドの森であった宴では盛り上がっていたようだが、その後の二人の距離は特に変わっていないように見えた。特別な肩入れをするほど仲ではないだろうな、とは思いつつ、いつか誰かがはっきり言わなければいけないと思っていたことを告げる。
「随分本人は乗り気だけど、ろくでもないのだけはわかるわ」
「まあ」
「お前、止めないの?」
問えば、曖昧に笑って視線を逸らす。これは態度の割に変える気がないときの仕草だと、察しがつくくらいの仲ではあった。たぶんフィンも、止めるべきだと伝えたくて話題に出したことはわかっているだろうに。
「二人してどうしたの?」
「向こうのヴァンパイアのことを話していたの」
ああ、なるほどね。なんて言いながら、フィンが場所を空けた焚き火前にカーラックが腰を下ろす。
「止めないよ」
「どうして?あいつらの契約が最悪なのはフィンだってわかっているでしょう」
「うん」
「ミゾーラの契約は破棄させたじゃない。同じことよ、フィン」
「
……
」
右から左から詰める形になってしまったが、それでも意見を変える気はないらしい。随分中身の減ったカップを両手で包みながら、フィンの視線は揺れる焚き火の火をじっと見ていた。
「昼間でも歩けるって、当たり前のことだと思ってた」
「
……
」
「川を跨ぐのだって、気にしたりしない。当然だけど。それをもう一度取り上げるってことになるんだよね」
カーラックと思わず目を合わせた。わかりきっていたけれど、幼生がなくなればアスタリオンはヴァンパイア・スポーンに戻る。それを思っていたよりフィンは気にしていたらしい。
「もし。もし、カーラックが地獄に行かずに済むなら」
一度青灰の瞳が閉じられて、開く。合わせられた視線は揺るがない。
「きっと止めない。誰かが犠牲になるんだとしても」
口を開きかけたカーラックを珍しく遮るようにして、フィンが続ける。
「カーラックはそんな道を選ばないかもしれないけど。私は、選んでもいいと思う」
「フィン
……
」
何がそうさせるのかはわからない。それでも、これが彼女の信念に基づくのであろうことは充分にわかる。納得したかはともかく理解は得られたと思ったのだろう。フィンの視線はまた焚き火へと戻っていった。
「褒められたことではないかもね。いいことでも、たぶん。知らされてないことがあったり、想像以上に問題が起こったりするかもしれない。
……
だけど」
止められないよ、やっと自由になれるんでしょ。そう言って気の抜けた笑い方で私たちを見るフィンは、聞かれる前から考え尽くしていたのだろう。言う機会を待っていたのは、案外フィンの方だったのかと思った。
「そう
……
。それなら、私も何も言わない」
「そうね。そんなお前のおかげでシャーと決別できたのだし」
「もしかして、割と不評?」
「当たり前でしょ」
「いざとなったら私たちで狩ろう、杭を投げてさ」
「あはは、数投げて心臓に当てるの?」
「絶対に一回で当ててみせる」
「陽光が効かなくなっても、ひたすら殴ればいつか倒せるでしょうしね」
「二人が手伝ってくれるなら心強いな」
三人で笑い合う。ほどほどにお互い酒も回っていたのだろう、それから他愛もない話で盛り上がって、寝るまでの時を過ごした。
「シャドウハート」
「何?」
「ありがとう」
寝る前に掛けられた言葉の意図は汲みきれなかったけれど、先ほどよりはどこか晴れやかな表情に見えた。
「礼を言われるようなことはしてないわ。これくらいならいつでも聞いてあげる、クレリックだもの」
「あ」
「どうして今更気付いたような顔をしているの」
「いや、こう、なんとなく?」
ばつが悪そうに視線を逸らすフィンを少しいじってからお互い床に就く。
輝く星は明るい。私たちの星が曇る日のないように、今まで憎んでいたはずのセルーネイに祈った。
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