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takisaka
2018-10-17 18:47:41
765文字
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一次創作
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口裂け男
一次創作(現代ホラー)
僕は、それをとても、見たくないのだ。
◇◇◇
ひどく厭な夢を見て目が覚めた後のような感覚に付き纏われ始めたのがいつだったか、沢辺悟には思い出せない。
だからこれは胡乱であてにならない、日付のない記憶だ。
下校中で、帰途であったとは思う。
そして、路上には注連縄が落ちている。立ち止まり、その瞬間にいきなり冷たい汗がどっと吹き出し、とっさにうしろめたくうつむいて視線を逸らした。それでも、それがなくなるわけではない。路上で轢かれた猫を見たときの気持ちを思い出す。痛ましく、あわれっぽく、それでいていまわしい、あの感じだ。なんの特別なこともない、ありふれた、それでいて誰もが注視しようとはしない
――
「趣味が悪い」
立ち止まっていたから、誰かに追い越されてもなんの不思議もないのである。薄手のパーカーのフードがこぼれ、伸びかけた艶のない髪が靡く。たぶん、自分とあまり変わりない年頃の少年だった。そいつはひとりごとのようにしてそう呟き、彼を追い越して、路上のそれを拾いあげた。切れた注連縄は年末年始に見馴れたものより幾分か細く、撚れた蛇のように見える。紙手はまだ新しかったが、土の粒がついて汚れていた。
「なあおい。今のをお前は何も見なかった。そうだろう」
ふいに振り返った少年は花粉症でするかのようなマスクをしていたのだが、その上からのぞくするどい目つきは、きっかりと悟のほうを見ていた。そうして話しかけるときだけ、マスクの白い紐を指でひっかけ、三日月のようににんまりと笑う口をあらわにした。
(気味が悪い)
――
ところでそのときの自分は逃げるように足早に立ち去ったのだったか、それとも魅入られたように一歩、二歩と踏み出したのだったか、どうしても思い出せない。
まだ悟が一年だった頃の話だ。
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